単身赴任、最初のうちは寂しかったり、物足りなかったりで、嫌なことが多かったが、それに慣れてしまうと、自分なりの生活パターンが出来上がり、それ程苦にならなくなってくる。これは夫ばかりではなく、妻にしても言えること。亭主は元気で留守が良いとは良く言ったものだ。亭主がいないことが普通になり、いると色々と気を遣い、疲れることも多くなるようだ。そして、お互いに自分の生活パターンが出来上がる。慣れればこれほど快適な物はない。しかし、その単身赴任生活も永遠に続くわけではない。退職とともに、家庭の現実に引き戻されることになるものだ。
私も、定年退職した時期が近づくに連れ、今後の成り行きを頭の中でシミュレーションしたものだった。どうやって老後の夫婦関係を維持して行くか?個々の生活パターンをどうやって調整して一家としてのパターンを作り上げていくか?そいて、家の中で自分の居場所、自分の生活パターンを作り上げていこうかと思い描いていた。かなりシビアな戦争が起こることも覚悟していた。
ところが、妻が病気になったことで、そんなものはいっきに消し飛んだ。再雇用で延長して働いていたものを辞めて、家に戻ることになったからだ。もともと今住んでいるマンションには一緒に済んだことがなかった。単身赴任になると同時に、家族がマンションに移り住んだからだ。それは取りも直さず、私の居場所が確保されていないし、全てが妻によって色づけられた空間なのだ。そして、退職前にシミュレートしていたことは全くできないまま、同居の生活が始まってしまったわけだ。10年以上離れていた二人が、一緒に生活ことになったわけだから、一緒にいること自体が、互いのストレスになるわけだ。例えば、食器の置き場所も、何もかもが妻によって決められ、それを覚えることから始まる。加えて、私は凄く記憶力が悪くなり、新しいことが覚えられなくなってきている。心の中で、何で、どこにしまおうが大したことじゃないさと思うが、相手にはそれがなかなかそれが通じない。互いに苛立ち衝突が起こる。まあ、衝突が起こることは覚悟していたわけだが、妻が病気になっているということから、最終的には、やはり私が引かざるを得ないわけだ。そのころ、家事ハラスメントという言葉が出回り始めていたが、まさにそのものずばりといったところだった。
まあ、そんなこんなで、まる2年過ぎて、3年に近づいてきている。慣れたといえば慣れた。慣らされたといった方が正確かもしれない。だめな亭主のぼやきでした。