高齢化社会は止まることなくどんどん進行し、介護の問題が大きくのしかかってきている。介護保険制度は確かに必要な制度ではあったが、十分な検討がなされないままに、唐突に決められ実行に移された感が否めない。そのため、介護保険制度が始まると、それに伴う巨額の利権が生じ、それに目敏い者が目をつけ、就職難を背景に、低賃金で職員を雇い入れ、暴利を貪り、巨額の利益を得た。それを傍目で見て、これは儲かると目を付けた後発の者たちは、箱物を建て、事業を開始したが、経済状況が改善に向かう中、介護を担う人材を確保できず、どこも採算割れを起し、事業の継続が危ぶまれる事態に陥ったという。これは、当然といえば当然の話で、少し慎重に物事を考えることができる者ならば、予想できた事態なのだ。
もともと介護などという事業は、儲かるはずのものではない。先が見えない状況の中、小金を蓄えている老人たちに目を付け、介護住宅を建て、老後の介護は面倒を見るを歌い文句に入居者を募集し巨額の資金を集め、暴利を得、そして形勢が悪くなると、無責任に介護住宅を第三者に売却してしまう。全て欲が為せる技と言えよう。そこで一番犠牲になるのは、小金をこつこつと蓄え、詐欺まがいの介護付き住宅を購入した利用者たちだ。介護は受けられなくなる、そして、貯金も使い果たし、途方に暮れ、行き場所もままならない利用者たちなのだ。そして、第二の被害者は、そういう利用者たちをたくさん抱え、その対応に追われることになった地方自治体ということになるだろう。
一方、介護保険が始まった当初は介護のことを他人に任せることに躊躇していた人たちも、介護保険を使えば家族が楽になるとどんどん介護保険を使うようになった。確かに、家族にとって介護は大変な負担である。そして、また、そうした介護をやっているだけの経済的な余裕も、今の現代には、残されていない。かつて、亭主一人の稼ぎで、家族が暮らせていたが、今は、夫婦揃って働いて維持しているのが現状である。そこに、両親の介護をする余裕なんてない。また、介護を受ける側も、子どもに負担を強いることを嫌い、介護保険を使ってサービスを受けることを選ぶようになった。これは当然の流れと言える。介護の需要は増える。そして、財源となる介護保険収入の総額は変わらない。勢い、介護事業者に支払われる介護報酬は引き下げられる。介護職員の報酬は低額のまま据え置かれる。介護現場から離れる人が増加する。そして、介護事業が継続できずに、廃業に追い込まれる。当然の流れなのだ。