明日へのヒント by シキシマ博士

ご訪問くださりありがとうございます。あまり頻繁には更新できませんが、どうぞよろしくお願い致します。

横山秀夫・著「陰の季節」 自分と違う視点で

2005年12月16日 21時35分07秒 | 明日のための漫画・小説
いつも車で通り過ぎる風景を、何かの拍子に歩いてみると、新しい発見がありますね。
見慣れたつもりの景色が、違う顔を覗かせて驚かされたりします。
歩く人、自転車に乗る人、車を運転する人、バスを利用する人…。
同じ風景を見ているようでも、それぞれに見え方は違っているんですね。
そして、私たちは普段、そのうちのどれかひとつの見方しか出来ていないんです。

映画「半落ち」(監督・佐々部清)の作者、横山秀夫氏の小説「陰の季節」を文庫本(文春文庫)で読みました
〝まったく新しい警察小説〟と賞賛され、第5回松本清張賞を受賞した表題作を含む短編4作品が1冊に収められています。
殺人などの刑事事件はほとんど登場せず、警察内部・管理部門の人たちの心の動きを追う心理ミステリーです。
表題作「陰の季節」の主人公は人事担当者。大物OBがなぜ天下りポストに固執し、後任に譲らないのか、それを探っていくという、一見地味な話です。
最初は主人公と同じ視点で読み進んでいくのですが、やがて、同じ事を脇役側(実はこちらがその顛末の中心人物)の視点から見るとまったく違って見えるという事実に行き当たってしまいます。
さらに、他の3作品を読んでみると、別の視点が現れてきます。
それぞれの作品の主人公は別々の人物なのですが、脇役として他の作品の主人公も登場して来るんです。
しかし、それぞれが迎合することはありません。むしろ互いを、警戒すべき人物として一目置いていたりもするのです。

4作品すべてを読み終わって振り返ると、〝それぞれの主人公が生きる4つの世界を、我々読者はその外側から見ている〟という形になります。
こんな風に、物事を客観視する機会は滅多にないけれど、横山氏の作品に触れる度、いつもそれを味わわせてもらいます。
こんな視点で常に物事が見えるなら、生きていく上で重要な判断も、間違わずに出来るんでしょうけどね。

横山秀夫氏をはじめ、ミステリー作家の人の頭の中ってどうなっているのでしょうね? 
凄いです。

あっ、そういえば、横山氏の小説「クライマーズ・ハイ」がNHKでドラマ化され、先週土曜に、前編が放送されたハズ。
う~、すっかり忘れてた~。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿