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pride and vainglory -澪標のpostmortem(ブリッジ用語です)-

初歩の文書分析と論理学モドキ(メモ)

アポカリプス 第十章 旅の仲間⓭

2021-09-25 08:08:53 | ψευδεπιγραφία
 ドアをノックする音に目覚める。吐く息が白い。気がつくを暖炉の火がかすかな残り火だけになっている。ベッドの前では着替えを済ませたホアンが装飾屋を待っている。慌てて飛び起き手早く上着をつけると、ホアンとともに食堂へと急いだ。
 ジェネリックとジョアンナそれにガブリエルは既にテーブルに座っていた。テーブルには卵料理とソーセージの載った皿と果物・ジュースが用意されていた。昨夜ガブリエルとジョアンナはこれで手を打ったらしい。ジョアンナの自慢げな表情に、それが伺える。
 手早く食事を済ますと、5人は前室に向かいコートを身につけ、板を用意した。日が上がるまでは翼で飛ぶには寒すぎるらしい。
 ドアを開けて外に出ると凍てつく空気と満天の星空。思わず息をのむ装飾屋にガブリエルが話しかけた。
 「さあ参りましょう。今日はもっと美しいものが見られると思いますよ。」
 始めて板を履くジョアンナの悪戦苦闘をからかっていられたのも半刻ほどの事、すぐに装飾屋よりうまく板を使うようになった。よほど運動神経が発達しているらしい。
 ガイドポストの周りの草原のキシキシ音を立てる雪を押さえながらすべり終わると、鬱蒼とした針葉樹林帯にはいった。森の中の小道を通り小さな広場にある哨戒所に入ったのは暁の上刻の終わり。 板を脱ぎ、用意されたお茶で体を温めると、もう暁の下刻だった。
 「さあ参りましょう。」ガブリエルの声に促されて小屋の前の広場に出るとあたりは白々と空け染めていた。
 一瞬霧かと思ったが違っていた。空気中の水分が凍って微細な結晶と化しているのだ。
 やがて朝日がさし始めるとこれらの結晶が朝日を反射してきらめき始める。ダイアモンドダストだ。
 確かに息を呑む風景だ。
 ジェネリックがささやいた。「来ます。」確かに急激に小屋の西側の空間がよじれ始めた。
 突然現れたのは、ガーゴイルより一回り大きく純白の翼を持ったエンジェルとそれに抱えられた老修道士。一瞬ホアンによく似た老騎士のようにも見えたのだが目の錯覚だろう。
 優雅に羽ばたきしながらジェネリック達の前に舞い降りると、老修道士は地面に降り立ち深々と一礼をした。
 「ホアキンと申します。此方はエレン。ジェネリック様とお見受けいたします。ソフィアよりお連れするようにと命じられております。しかし約定では4名のはず1名多いような。」
 ガブリエルが苦笑いして答えた。
 「ホアキン殿お久しぶり。私は見送りだ。」 そう言うとガブリエルは後ろに下がった
 「そうですか。それでは参りましょう。6人は聊かしんどいですが。」
 装飾屋達をとてつもない力が包み空間は暗転した。

 暗い回廊の中を運ばれながら、昨夜床に入った直後二段ベッドの上から降って来た声の事を思い起こしていた。

 「この体に感謝しているよ。装飾屋。とても体が軽いし感覚もとても鋭敏だ。眠る必要もないから不意を衝かれる事もない。この先どうなる事か分からないが、もしオリジナルと戦う事となったら楽しみな事だ。」
 「ジェネリックに礼を言ってくれ。」
 「もう言ったよ。お休みなさい。装飾屋。明日は渡りだ。十分休みを取っておくが良い。」

 「お休みなさい。 ホアン。」

 ジェネリックが施した細工にホアンは気づいているのだろうか。いやジェネリックの事だから開けっぴろげに話しているかもしれない。いや絶対そうに違いない。あいつはカードをさらしてから手品を始めるタイプだから。
 しかしソフィアから使わされた使者を改造し何の為に使おうとしているのだろうか、「オリジナルと戦う」、ジェネリックはソフィアと対決する自体も想定して何かホアンに任務を与えているのだろうか、考えれば考えるほどジェネリックの手品に嵌る事となる。ホアンが装飾屋に喋る事も考慮の上での事だろうから。

 なるようになるさ。そう空転する頭を振り切って、装飾屋はこの暗い回廊と言うかトンネルを運ばれる自分の周りを眺めなおした。
 まるでエアパイプで運ばれるように装飾屋の体は宙に浮いて流されて行く。ジョアンナ・ホアン・ジェネリックそして先程会ったホアキンと言う老人の姿もエレンと呼ばれた天使の姿も見えない。装飾屋の使う力と原理は同じものだろうが、力は桁違いだ。そう思った時、ふと気がついた。
 先程老人と天使が中空に出現した事を思い起こした。向うでも中空に出る事となるのだろうか。 
 そう思った瞬間に突然ジェネリックの思念が頭の中に響いた。

 「こけおどしよ。というかあの老人はエンジェルを随伴する時の飛翔を再現したに過ぎない。それが期せずしてあなたにはこけおどしになっただけ。心配する事は無いわ。
 それより思念が漏れっぱなし。あなたの力は想像以上に急速に成長している。まるで放送局みたい。私がジャミング掛けているから良いようなもののこれじゃ問題ね。早く気がついて怪我の功名。
 私の言う通りになさい。頭の中にスイッチを思い浮かべるの。そしてそれを切る。」
 ジェネリックの言う通りやって見た。
 「そうそれで良い。そうそうあなたの任務は向うに着いてから知らせるわ。なんせ、種を見せてから手品を始めるタイプだから。」
 ジェネリックのくすくす笑いだけが、暗闇の回廊の中に残った
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