ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

小中学校で使用されるタブレットPCの更新はどうするか

2023年08月13日 07時00分00秒 | 国際・政治

 2016年5月16日に二子玉川の蔦屋家電でiPadAir 2を購入して以来、私も講義の場などにおいてタブレットPCを使用しています。特に、2020年度のオンライン講義では、自宅のMacBook Proに、2018年5月12日に二子玉川の蔦屋家電で購入した第6世代iPadをつなげ、第6世代iPadにApple Pencilを組み合わせる形で黒板またはホワイトボードの代わりとして使ったこともあります(この方法ではMacBook Proに高い負担をかけることになりますが)。そして、2022年1月28日に渋谷のアップルストアで第9世代iPadを購入し(その前の月に予約をしています)、現在も講義の場などにおいて使用しています。

 私自身のことはどうでもよいので、今回は栃木県での話を取り上げることとします。

 おそらく、朝日新聞朝刊栃木版に掲載された記事ではないかと思われますが、昨日(2023年8月12日)の10時45分付で「小中学校で使うタブレット端末の更新費用をどうする 首長らが議論」という記事(https://www.asahi.com/articles/ASR8C72X1R87UUHB002.html)が朝日新聞社のサイトに掲載されており、かなり気になる内容でしたので、今回はこれを取り上げておきます。

 タブレット、ラップトップ、デスクトップのいずれを問わず、PCを何年も使用していれば、更新、買い換えが不可欠となります。オンライン授業の機会が増えたことなどによって、小学校や中学校でもタブレットPCの使用機会も増えました。私は小学校や中学校の現場を見たことがある訳ではないので、どのようなタブレットPCが使われているのかわかりませんが、性能が低い機器であれば更新時期は早まるでしょう(いっそう使い物にならなくなるのは明らかですから)。アプリも更新し続ける必要が出てきますし、場合によっては新たなアプリを入れなければなりませんから、性能の如何を問わず、更新はしなければならない訳です。

 そうは言っても、無料でできるはずがなく、それなりの費用がかかります。上記朝日新聞記事によると、足利市の小学校および中学校で用意されたのは10468台で(何年のことかは書かれていません)、学校での無線LANの整備にかかった費用も含めるとおよそ6億3888万円に上ったとのことです。また、小山市の小学校および中学校で用意されたのは11500台で、2020年のことでした。同市は整備費としておよそ8億8280円を用意したのですが、これでは足りなかったということで国からの補助金である3億6257万円が加えられています。

 使用頻度や個体差にもよるとは思いますが、2020年に購入されたということであれば、機器として使用に耐えうるのは長くとも6年か7年というところでしょう。足利市の場合、2025年度か2026年度が更新時期であるようです。そうすると、2025年度か2026年度の予算に機器の更新により発生する費用を計上しなければなりませんし、機器の選定なども行わなければなりません。従って、2024年度中には準備を行わなければならなくなります。

 足利市や小山市がタブレットPCの更新費用を口にしたのは、7月に行われた地区ブロック市町村長会議です。これは、栃木県知事が、1年に1回、県内各地をまわって市町村長の要望を聞くものであるとのことで、7月に行われたのは足利市、佐野市、栃木市、小山市および野木町という県南地区の会議でした。その場でタブレットPCの更新費用についてかなり白熱した議論が行われたとのことです。

 それはそうでしょう。1万台以上の機器を一斉に更新するのですから。実際にどのような機器が使われているのかを知らないのですが、例えば、私が使用している第9世代iPadであれば税込みで49800円(ストレージが64GBでWi-fiモデルの場合)、第10世代iPadであれば税込みで68800円(ストレージが64GBでWi-fiモデルの場合)です。アップル社の製品は高額ですし、実際にはリース契約で、学校であれば何らかの割引があるはずですが、いずれにしても1万台以上を更新するとなれば億単位の費用が必要となります。

 地区ブロック市町村長会議において口火を切った足利市長は、機器の更新のための費用が最初の整備費と同程度になるとしつつ、現在は国にも県にも補助制度がないと述べています。同市は、2025年度以降の更新において「端末やネットワーク機器の単価は、当初の導入時と同額として約5億5千万円かかると推計している」ようです。こうなると補助制度の要望がなされるということになります。

 また、小山市長は、このところの物価上昇を引き合いに出して「『次の更新時期にはソフトや設定費用を合わせると、1台約20万円程度になると想定している』といい、『市費で整備するのは非常に困難』と説明した」とのことです。先に私がiPadの値段を記しましたが、これは最低仕様の本体価格であり、アプリ、周辺機器などは一切含めていません。そのため、本体の仕様や周辺機器によってはかなりの高額になる可能性もあります。教育現場の声を聞いて仕様を決める必要があることは言うまでもありません。

 以上のような足利市長および小山市長の発言に対し、栃木県知事は、国に対して補助を要望する旨を述べました。ここで知事は電子黒板に言及しています。何時のことかはわからないのですが、小学校および中学校において電子黒板が導入された時には国から補助金が出されたそうです。しかし、電子黒板も電子機器ですから、当然、更新を迎えるはずです。そこで実際に更新の時期となったら、導入時と異なって国からの補助金はなかったとのことです。これでは、少なくとも2019年以前において諸外国よりも格段に電子黒板の普及率が低かったこともよく理解できるというものです。

 これから本格的に検討されるのかどうかわかりませんが、教育現場で使用されるタブレットPCの更新時期と費用の問題は、別に栃木県だけの話であるはずがなく、全国の問題であります。そのため、何らかの補助金制度によるのか、それとも交付金とするのかなどの検討を進め、早いうちに各地方公共団体へ方針を示す必要があります。

 考えてみれば、GIGAスクール構想が打ち出されてから数年が経過しますが、機器の更新、OSの更新、アプリの更新などは、費用面を含めて十分に考えられたのでしょうか。そもそも、2019年12月19日付の「GIGAスクール構想の実現パッケージ〜令和の時代のスタンダードな学校へ〜」(https://www.mext.go.jp/content/20200219-mxt_jogai02-000003278_401.pdf)という文書に示された「学習者用端末の標準仕様」は、時期を考慮するとしても果たして学習者のためになるのかどうかわからないというような性能(つまりは低い性能)で満足するようなものであり、実際には使い物にならないそうです。文部科学省が「標準仕様」を更新したのかどうかは不明ですが、教育現場に直接関係する市町村に機器の更新を行わせるよりも前に行わなければならない重要な作業は「標準仕様」の更新であるはずです。


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