ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

今月で引退! 東急8090系(先頭車のクハ8090形)

2013年05月19日 20時39分05秒 | 写真

 いよいよ、今月で東急から8090系が引退します。正確に記すと、先頭が8590系の編成の中間車はまだしばらく運用されるでしょうが、正面非貫通車であるクハ8090形を先頭車とする編成は東急線から離れることとなります。現在、大井町線でヘッドマークをつけた編成が走っていますが、もしかしたら長津田車両工場へ行っても見られるかもしれないと思い、新しい愛車のポロを運転して、こどもの国線恩田駅のそばまで走り、撮影してきました。

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 クハ8082が、他の車両から切り離されています。最初は見慣れないデザインだったのですが、不思議に溶け込んできました。

 8090系がデビューしたのは1980年のことです。量産型としては日本で最初の軽量ステンレスカーで、最初は東横線で7両編成として登場し、すぐに8両編成化され、主に急行として運用されました。正面は、5200系(1958年登場)以来の非貫通です。

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 それまでの8000系や8500系などとは全く印象の異なる斬新なデザインで、東急では初めて、側面にも赤い帯を巻き、見る者に強い印象を与えました。また、車内からでもわかりますが、裾を絞ったような形状となっており、天井のほうもわずかながら絞られています。

 しかし、8090系、とくにクハ8090形が東横線で活躍した時期は短いものでした。1980年代に、横浜高速鉄道みなとみらい線との直通運転が決まりました。実はかなりの紆余曲折を経たようで、当初、みなとみらい線の直通の相手は国鉄(JR)横浜線だったようです。ともあれ、地下鉄との乗り入れが決まったことで、正面非貫通車では問題が生じます。そこで、1988年に正面に貫通扉を設けた8590系(デハ8590形およびデハ8690形)を製造し、中間車を組み替えて東横線に登場させるとともに、先頭車がクハ8090形の編成は全て5両編成化して大井町線に転用することとしました。これにより、8090系は大井町線の主力として活躍することとなります。

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 大井町線に移籍してから、急行などとして走ることはなくなりました。しかし、8090系が同線を走るようになってから、20メートル4扉車にまとめられるようになり、それとともに、まさに大井町線の顔として活躍を続けてきました。

 しかし、同線に急行が走るようになり、また、東横線と副都心線との直通運転が決定されたことから、8090系の運命は再び大きく変えられることとなりました。

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 こちらは8090系の大井町線移籍と入れ替わるように東横線に登場した8590系のデハ8593です。正面の方向幕は、営業用の黒地ではなく白地で、赤く「訓練車」と書かれています。

 既に記したように先頭車両のみの形式で、中間車は全て8090系のデハ8190形、デハ8200形およびサハ8300形となっています(デハ8400形は使用されていません)。8090系では5M3Tであったのに対し、8590系の編成は6M2Tとなりました。みなとみらい線直通運転のために製造され、やはり東横線の急行として運用されました。その後、1997年に8694Fと8695Fが田園都市線に移籍し、2001年には8693Fも田園都市線に転籍しています。2002年に5000系が登場したことにより、2003年には8590系の全編成が再度東横線に揃いました。

 しかし、2004年2月1日のみなとみらい線開業以降、実際に8590系が同線および東横線で用いられたのはわずか2年程度でした。既に東横線と副都心線との相互直通運転が決まっていたことから、その対応のために5050系がデビューします。これは、東横線の在籍車両を大幅に入れ替えることを意味しました。副都心線のATO、ワンマン運転、ホームドアに対応する必要があり、さらに東武東上線、西武有楽町線・池袋線に直通運転することから、東横線の車両は基本的に5050系(8両編成)、5050系4000番台(10両編成)および横浜高速鉄道のY500系(8両編成)に統一されることとなり(他に5000系の8両編成4本が在籍しています)、8000系が完全に引退したのを始め、8590系および9000系も東横線を離れることとなりました。そのために玉突き現象が起こり、とくに9000系が大井町線に移籍して主力となり、8090系が大井町線を去ることとなったのです。

 8590系について記すならば、2005年に8691Fが5両化されて大井町線に移籍し、2006年には8692Fおよび8693Fが大井町線に移籍します。また、8694Fと8695Fは2006年に再び10両化されて田園都市線に移籍しました。2012年に8692Fが営業運転から離脱しており、8693Fも営業運転から離脱しています。「訓練車」という幕の表示が、現在の位置を示しているようです(何の訓練なのかはわかりませんが)。

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クハ8082にヘッドマークが付けられていることがわかります。本当は正面から撮影したかったところですが、位置の関係で仕方がありません。

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 再び8590系のデハ8593です。後にも8090系の中間車が止まっていました。8590系も、この先の活躍期間は長くないかもしれません。田園都市線の2編成も、東武伊勢崎線・日光線に乗り入れることができないため、運用時間帯などは限られており、平日のラッシュ時でなければ見るチャンスはほとんどありません。8500系よりも早く消滅する可能性もあります。

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 8090系、8590系のどちらも、広い意味では8000系に入ります。8090系の最初の編成である8091Fで8000系の第12次車となります。界滋チョッパ制御、中空軸平行カルダンタワミ板継手式の駆動装置など、8000系の基本構造は受け継がれています。勿論、多くの機器に改良が加えられています。

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 手前が8090系のクハ8082、その後が8590系のデハ8593です。8090系、8590系のどちらも、大井町線で運用される時間は、もうあまり長く残されていないのかもしれません。そして、東急線内で他に移動できる路線はないので、他社へ譲渡されるか、解体されるかのどちらかとなります。既に8090系の一部は秩父鉄道に譲渡されています。

 撮影するなら今のうちです。

 日本最初の量産軽量ステンレスカーの功績は、これからも長く語られることでしょう。8090系の登場がなければ、JR各社を中心とした軽量ステンレスカーの普及はなかったのですから。


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1 コメント

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現在のところ、8590系の8691Fは大井町線で運用され... (川崎高津公法研究室長)
2013-06-14 20:14:44
現在のところ、8590系の8691Fは大井町線で運用されています〔今日(6月14日)、二子玉川駅で見ました〕。
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