ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

2010年10月1日、桜新町駅

2019年12月18日 00時00分00秒 | まち歩き

 最初にお断りです。今回は、私の「川崎高津公法研究室」に掲載していた「待合室」の、次の記事の再掲載です。

 第385回:「東急田園都市線途中下車(4) 桜新町駅(その1)」(2010年10月21日〜28日掲載)

 第386回:「東急田園都市線途中下車(4) 桜新町駅(その2)」(2010年10月28日〜11月3日掲載)

 第387回:「東急田園都市線途中下車(4) 桜新町駅(その3)」(2010年11月3日〜10日掲載)

  いずれも、写真撮影日は2010年10月1日です。誤字脱字を除き、内容を修正しておりません。したがいまして、後の事情変更なども一切反映しておりません。御注意ください。

 

 「東急田園都市線途中下車」シリーズ第4弾は、或る意味において、田園都市線の全駅の中で日本一の知名度を誇る駅を取り上げます。

 このように記したところをお読みになられた方の多くは、おそらく「渋谷」とお思いになるでしょう。たしかに、渋谷は日本全国に知られています。いや、これほど知られた駅も、東急全線の中ではそれほど多くありません。自由が丘、田園調布、日吉、横浜といったところでしょうか。いずれも東横線の駅です。田園都市線の駅ですと三軒茶屋、駒沢大学、二子玉川が有名でしょうか。

 しかし、それでは渋谷を初めとして、上記の駅の辺りを舞台にした有名な漫画はどれだけあるでしょうか。私がこれから取り上げる駅は、日本全国に、まさに古典的アニメーション番組として、およびその原作として君臨する漫画の舞台です。駅の名前を知らなくとも、街の名前を知らなくとも、漫画の名前を知らない人はいないでしょう。その名は「サザエさん」、原作者は、1992年に亡くなった長谷川町子氏です。

 これでおわかりの方もおられるでしょう。「サザエさん」の舞台は、東急田園都市線桜新町駅周辺なのです。アニメの設定が中途半端に古く、東急玉川線が廃止された1969年と、東急新玉川線(現在の田園都市線の渋谷~二子玉川)が開通した1977年との間になっているために、桜新町であることがわかりにくくなっているのは残念です。長谷川町子氏は桜新町に住んでおり、アニメ番組に登場する店の多くは実際に存在する、あるいは存在した店です(代表は酒屋の三河屋さんです。現在はコンビニエンスストアになっていると記憶しています)。

 さて、桜新町へ行ってみることといたましょう。必ず各駅停車を利用してください。桜新町は急行通過駅です。なお、平日朝に上りのみ運転される準急は停車します(この準急の停車駅は、以前の快速とほとんど同じです。現在の準急と以前の快速との違いは、準急が平日の朝の上りのみに設定されているのに対し、快速は曜日と時間帯を問わず走っていたこと、快速はあざみ野を通過していたことです)。

 東急新玉川線として開業した渋谷~二子玉川のうち、地上駅である二子玉川を除く各駅には、駅独自の色が指定されています。渋谷駅は東京メトロの前身である帝都高速度交通営団が管理していたので、事情は異なりますが、田園都市線の他の駅と識別できるようになっている点には変わりがありません。

 ここで田園都市線の地下区間にある駅の色を紹介しますと、池尻大橋は柿色、三軒茶屋はレモン色、駒沢大学は若葉色、桜新町は桜色(上の写真でもおわかりかと思いますが、桜色というよりは赤に近い色です)、そして用賀は水色です(余談ですが、終点の中央林間も地下駅で、8種類のパステルカラーが使用されています)。

 今でこそ、地下駅でそれぞれ壁の色や絵で区別することが多くなっていますが、新玉川線はその最初の例です。東急では、やはり地下駅の多い目黒線で、駅毎にホームドアなどの色が指定されています。

 また、桜新町駅は、日本で初めて、急行用の通過線を設けた地下駅でもあります。このため、各駅停車がこの駅で急行の通過待ちをします。急行は壁の向こうにある通過線を走ります。ホームの中程に立っていると、音だけで急行が通過していくのがわかります(田園都市線の電車は地下区間であっても結構なスピードを出して走っています)。勿論、両端であれば急行が通過するのを見ることができます。

 改札口は地下1階にあり、下りの各駅停車が発着する1番線は地下2階に、上りの各駅停車と準急が発着する2番線は地下3階にあります。このような構造の駅は珍しくありませんが、東急では桜新町だけです。

 桜新町駅の改札口を出て、北口のほうへ向かうと、こんな柱があります。ちょっと野暮な感じもしますが、駅名にあやかったのでしょう。

 「サザエさん」の街にある駅ですが、駅のホームのどこにも「サザエさん」の雰囲気はありません。そもそも、どこにも登場人物などが描かれていません。これは開業時からのことです。これだけ有名な漫画の舞台ですから、他の鉄道会社であればすぐに漫画にあやかって、駅のホームに壁などに「サザエさん」の一家などの絵を描くことでしょう。それをやらないところと、「馬鹿メロ」としか言いようがない発車サイン音を使わないところが粋です。どちらかでもやったら野暮の一言です。

 とくに野暮なのは発車サイン音(発車メロディ)で、「いかにも」の野暮ったさに溢れています(関西発祥という話があるのですが本当でしょうか。そうであれば、十二分に納得できます)。うるさいだけですし、駅ごとに、番線毎に違っていたのでは、慣れないとわかりにくいことこの上ありません。こんなものをサービスだと思っている会社の気が知れません。山手線の高田馬場駅や恵比寿駅は野暮の極地ですし、少々異なる意味ですが東京メトロ副都心線各駅の発車サイン音も派手なだけで野暮の極地です。粋とはまるで逆であり、いかにも鉄道ファンが好みそうな感覚です。

 もっとも、東急は何回か「サザエさん」の登場人物を使用したことがあります。私が大学院生の頃のマナー広告では一家が登場していましたし、世田谷線の300系が登場した時、301Fは長らく「サザエさん」のヘッドマークが付けられていました。しかし、現在はどちらもありません。権利関係の問題があるのでしょう。301Fはかつての東急玉川線時代に近い緑の濃淡の塗色に変更されています。

 桜新町駅の改札口は1箇所だけですが、出入口は3箇所あります。北口と南口はどちらも駒沢大学側にあり、西口は用賀側にあります。桜新町の商店街をくまなく歩くには西口から歩き始めるほうがよいでしょう。

 私は田園都市線をよく利用してきましたし、今年の4月からは通勤のために利用していますが、桜新町駅を利用するのはおよそ15年ぶりです(記憶が曖昧ですが)。かなり大きな変化があったような気がしました。駅の真上にある道路の両側には歩道があり、商店が並んでいますが、上の写真で言えば左側の歩道には、今ほど多くの商店が並んでいなかったような記憶があります。もっとも、現在の国道246号線および首都高速3号線から少し離れた所にあるこの駅の周辺に漂う一種の静けさには変わりがありません。

 漫画版のほうに登場するかどうかは知らないのですが、アニメ版にはよく登場する、不動産屋の花沢さん一家です。いかにもという感じでわかりやすいですね。

 「サザエさん」は、元々が福岡市に本社を置いていた夕刊フクニチに連載された漫画です。そのため、舞台は福岡市内でした(岩田屋らしいデパートも登場します)。長谷川町子氏は現在の早良区西新6丁目、つまり、私が集中講義を行う西南学院大学のすぐ近くに住んでいたということです。昭和20年代の後半からは朝日新聞に移り(その少し前に現在の世田谷区桜新町が舞台となっています)、昭和49年まで続きました。この漫画作品は、プロの女性漫画家として初の作品であるばかりでなく、女性の漫画家による作品としては最長の連載期間を誇っています。

 フジテレビ系列のアニメ番組は1969年から放映されていますが、漫画とは設定がかなり異なります。4コマ漫画をドラマ風に編みなおしているので(というより、原作はほんの一部分しか使われていません)、主な登場人物だけを借りてきた新作、あるいはアニメ番組独自の作品と評価すべきでしょう。漫画に登場しないキャラクターも少なくありませんし、漫画に登場するキャラクターでも、例えばワカメちゃんの性格は漫画とアニメとで別人と捉えてよいほどに異なります。

 西口から用賀方面に歩いてすぐの所にある交差点には、長谷川町子美術館への案内板があります。まだ一度も入ったことがないのですが、長谷川町子氏の姉妹が収集した美術品を展示しているとのことです。また、この美術館が「サザエさん」などの版権を所有しています。かつて、「サザエさん」などの作品の単行本は姉妹社から出版されていたのですが、姉妹社は既に解散しています。そのため、現在、「サザエさん」の単行本(全68巻)などは全て絶版になっています。

 駅西口付近の交差点のところに三井住友銀行桜新町支店があります。そこから首都高速道路3号渋谷線のほうへ向かう道路が「サザエさん通り」です。それほど活気のある商店街ではないのですが、時間帯によるのかもしれません。大型店舗もそれほど多くありません。

 サザエさんとワカメちゃんの絵があります。漫画とアニメとでは若干、顔つきなどが違いますが、桜新町の商店街に掲げられている絵は漫画のほうであることが多いようです。

 

 桜新町駅の付近を歩いています。東急田園都市線は国道246号線および首都高速3号渋谷線・東名高速道路と並行する路線であり、とくに新玉川線として開業した渋谷~二子玉川の多くの部分は国道246号線および首都高速3号渋谷線のほぼ真下を通る路線となっていますが、桜新町駅は両方の道路から外れているため、静かです。

 この道路の下を田園都市線が通っていますが、昭和44年5月までは、この道路の上を東急玉川線の電車が走っていました。今となっては正確な位置がわかりませんが、桜新町電停もありました。この道路が旧道ということになるのでしょうか。田園都市線は、基本的に玉川線の跡を忠実にたどっているので、桜新町駅と用賀駅は国道246号線から外れています。しかし、用賀駅は、国道246号線から離れているものの、首都高速3号渋谷線に近いので、桜新町駅ほどの静けさはありません。

 新玉川線として開業した渋谷~二子玉川ですが、玉川線の電停に対応していない駅もあります。「東急田園都市線途中下車」の第3弾として紹介した池尻大橋駅がその代表で、玉川線には大橋電停と池尻電停がありました。両電停の中間に池尻大橋駅ができた訳です。また、駒沢大学駅の場合は玉川線の駒沢電停ではなく、真中電停の場所にあります。

 玉川線は、ここから少し先、道路の上ではなく、専用軌道で用賀へ向かっていました。田園都市線もその下を走っていますが、現在は都道になっています。

 同じ道路ですが、今度は新町一丁目のほうを向きます。この道路を真直ぐ進むと新町一丁目交差点で、国道246号線に出ることになります。駒沢大学から田園都市線に乗ると右へ大きくカーブし始める場所です。

 ここで新町という地名を出しましたが、元々、桜新町はこの新町の一部でした。1960年代に、住居表示の設定の際に現在の桜新町が生まれたという訳ですが、東急玉川線の電停としては桜新町の名称が用いられていました。そして、桜新町と駒沢の間に新町電停があったとのことです。

 桜新町駅の改札口は1箇所だけですが、出口は3箇所あります。北口と南口はどちらも駒沢大学側にあり、用賀側にあるのが西口です。桜新町の商店街をくまなく歩くには西口のほうがよいでしょう。交差点のすぐそばに三井住友銀行桜新町支店があり、ここにもサザエさんが登場します。

 この絵は漫画版のほうでしょう。国道246号線に向かう道路の途中、所々にこのような絵が飾られています。この先、アニメ版にはよく登場するのでおなじみの三河屋さんのモデルとなった店があります(現在はコンビニエンスストアです)。

  何故か波平さんとフネさんが登場しないのですが、一家の絵です。左のタラちゃんがアニメ版と全く違うのがおわかりでしょうか。新聞連載版とアニメ版とを比較して、最も違いが表れているのがタラちゃんなのです。また、ワカメちゃんもそうで、アニメ版ではしっかり者のような性格ですが、新聞連載版では全く違います。右の猫はタマでしょうか。

 このような商店街です。金曜日の昼のためなのか、あまり人が歩いていませんが、ここは元々、それほど大きな商店街ではありません。奥のほうに首都高速3号渋谷線らしい構築物が見えます。長谷川町子美術館へ行くには、この通りをさらに歩いていくことになります。

 

 桜新町は「サザエさん」の町です。著者の長谷川町子氏が、福岡から東京へ転居してから亡くなるまで住んでいましたし、朝日新聞に連載していたころの舞台も、そしてアニメ版の舞台もこの桜新町に設定されています。漫画連載時は東急玉川線が営業していましたが、1977年4月に東急新玉川線が開業しています(2000年8月6日、新玉川線は田園都市線に統合されます)。アニメ版の設定が変わっていないのが惜しいのですが、仕方のないことでしょうか。

 交差点のすぐそばにこの看板があります。アニメ版ではなく、新聞連載版の絵であることがわかります。実は、この日、時間の関係で長谷川町子美術館には入っていません。通勤のために田園都市線を利用していますので、いつでも寄ろうと思えば途中下車をして寄ることができます。年内に入ってみたいと思っています。

 新聞連載版のほうは、長谷川氏の生前に姉妹社から単行本として刊行されていました。全ての漫画が掲載されている訳ではないのですが、68巻が発売されました。溝口を本拠とする文教堂書店などでよく見かけましたが、何しろ68巻を揃えるのが大変ですので、買ったことはありません。また、朝日新聞社からも文庫本が発売されたことがありますが、こちらも絶版になっているようです。

 桜新町駅の南側にある通風口です。この下に田園都市線が走っている訳です。起点の渋谷から6555メートルほどです。右下にわずかに写っているのが、私の足です。この上に立つと、電車が通過する時に風があたります。また、音も聞こえてきます。

 渋谷から桜新町までの営業キロは6.3となっています。従って、運賃は150円です。急行は止まりませんので、各駅停車の多くはこの駅で急行の通過待ちをします。地下駅ですが、急行通過線と退避線があり、急行に乗っていると桜新町を通過したことがわからないようなこともあります(ポイントを通過する音でわかりますが)。

 桜新町は「サザエさん」の街、というイメージばかりが先行し、長谷川町子氏の他の漫画作品はともあれ、他の漫画家のことはあまり話題になりません。そのため、上の写真にあるやくみつる氏の漫画には驚かされました。勿論、私がよく知らなかっただけのことです。やくみつる氏は桜新町に生まれ育った漫画家なのでした。横浜ベイスターズファンとしても有名です。

 サザエさん通りから再び桜新町駅前の通りに出て、今はその通りを歩いています。上のサザエさん母子の絵を御覧になってお気づきの方もおられるでしょうか。今回の最初の写真にあるように、サザエさん通りでの絵は基本的に漫画連載時のもの(長谷川町子氏自身が描いたもの)です。これに対し、上の写真と下の写真に登場するのはアニメ番組版の絵です。

 最初の写真に登場する絵と比べてみてください。同じサザエさん一家でも、新聞連載版とアニメ版とでは違うことがわかります。この絵も、駅からすぐの所に貼られています。

 桜新町駅前の通りです。車道の中央部の辺りを東急玉川線の電車が行き交っていたのですが、その面影はありません。歩道が広いので歩きやすく、散歩にはもってこいの道路です。また、ゆっくり歩いてみたいと思っています。


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