ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

やはり気になる、JR西日本のローカル線の動向

2021年02月19日 10時35分00秒 | 社会・経済

 昨日(2021年2月18日)付で毎日新聞社や共同通信社が報じていますが、「やはり」という印象を持ちました。

 具体的な内容はないのですが、共同通信社の「低収益ローカル線の在り方議論へ JR西日本社長、構造改革一環」(2月18日19時55分付)という記事によると、昨日の定例記者会見で、JR西日本の社長が「低収益のローカル線について廃止も含めて今後の在り方を見直し、地元と議論を進めていく考えを明らかにした」ということです。

 これを受けて、Yahoo! Japan Newsの掲示板では具体的な線名・区間をあげるコメントもありましたが、ここで推測などは避けておきます。ただ、少しばかりのことは記しておきましょう。

 JR西日本が発表している「区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2018年度)」によると、平均通過人員(人/日)の数値が低い路線・区間があります。ここで平均通過人員は、次の数式で算出するという説明がなされています。

 「【平均通過人員】=【各路線の年度内の旅客輸送人キロ】÷【当該路線の年度内営業キロ】÷【年度内営業日数】」(JR西日本の「区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2018年度)」によります。)

 最も高いのは東海道線の大阪〜神戸で389,365、次いで同じく東海道線の京都〜大阪で355,068となっています。路線全体ということであれば大阪環状線〔世の常識などと異なり、天王寺〜新今宮(京橋、大阪、西九条経由)〕が最も高く、262,354です。

 これに対し、最も低いのは芸備線の東城〜備後落合で9、次いで同じ芸備線の備中神代〜東城で73となっています。一方で同じ芸備線の狩留家〜広島では8,052となっており、2020年5月に北海道医療大学〜新十津川が廃止された札沼線ほどではないとしても同一路線内で極端な格差が見られる例でもあります。この他、1,000を下回る路線・区間もいくつかありますし、4,000を下回る路線・区間となると多くなります。ここで4,000という数字を出したのは、1980年代に輸送密度(旅客の輸送密度を平均通過人員というようです)が4,000未満であれば(貨物の輸送密度が高い場合を除いて)特定地方交通線に指定されていたという事実に基づいています。

 山陽新幹線や京阪神地区の路線の利益で赤字をカヴァーしてきたということであれば、COVID-19のせいでこうした構造を維持することが難しくなったと言えるでしょう。鉄道事業であげる収益の9割を東海道新幹線で得るという話があるJR東海は極端な例でしょうが、JR西日本やJR東日本などでも同様の構造が見られます。

 JR西日本がいかなる基準で線引きをするかは不明ですが、平均通過人員で一定の数値を下回った場合を想定することはまず間違いのないところでしょう。そうなると、北陸地方や中国地方でいくつかの路線がバスに転換される可能性は高いと言えます。しかし、これまで沿線地方公共団体や地域住民が鉄道路線をどこまで支えようとしていたのか、という視点も重要でしょう。平均通過人員が低いということは、利用客(とくに地元住民の)が少ないということです。沿線の人口が減少してきたことは大きな理由ですが、それだけではありません。少々厳しい表現ですが「地域が鉄道路線を捨てた」とも考えられるのです。


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