あちこちで共謀罪が批判されているけど、私はこれは、日本ガラパゴス化完遂法案だな、と思ってみています。要するに、刑事警察ではなく公安警察的な組織の捜査権限の拡大を狙っている人たちがいて、さらに、それができると何かと都合がいいなと思う人たちがそのまま通している、という感じじゃないですかね。パレルモ条約なんてただの言い訳。おーし、これで押せるとかいうネタにすぎない。
だからこの話の日本版かな、と。
要するにNATOと情報機関
その意味で、多くの人が指摘するように、昔の治安維持法の復活だというのは本当だと思う。
そして、日本の場合こういう漠然とした捜査権限の拡大を許容する法案が通ることの余波、結果は、英米(というより米と英連邦、一部西欧州あたり)より深刻だという点が本当は実に実に問題だ。
ざっと思いつくままにその理由を書くと、
1 司法コミュニティーというのが統治権力機構と近すぎってか、それそのもの。
2 それに対して個人の人権に対する配慮から異論を唱える人々の人数がとても少ない。
3 そもそも人権など左翼の戯言といった感覚が日本では当然に存在している。
といった状況だから、そこであんな法案を通したら、統治権力機構が流す見解に反対する人はすべからく「一般人」でない、監視対象だ、を許すことになるでしょう。しかも回復措置も担保されてない、ってなる可能性は高い。諸々の冤罪事件を見てりゃわかるという話。取り調べの可視化だけでも足りない問題が現に存在する。
ということで、まぁ1910年代から20年代の日本のようだな、って感じなわけですが、当時と違うのは、日本が単独で外征に勢を出すとかいう事案はかかってないという点か。
当時の流れでは、日露戦争をきっかけに国内に非戦派ができていったあたりから、急激に国家権力っつーか明治朝日本の統治機構ってかの方が、国民を黙らせることに勢を出した、ってところがポイントでしょうね。大逆事件はそのピークの事件でしょう。あんなやり方をする必要性はなかったと私は思いますが、統治機構的には、大勝利の感覚でそのまま突き進んだ、と。
で、現在は、自衛隊が米軍の二軍になるのはもはや規定事項だとはいえ、日本は大陸に利権ないですし、朝鮮やら満洲を切り取れる状況はないし、北方領土を巡ってロシアと戦う気もないようだし、尖閣は実は結構安定した体制になってるようだし、ってんで周辺との関係を陸軍に預けてるような状況にはない、ってのは安心してみていられる。
しかし、では、なぜ統治機構側はこうまでして国民を黙らせようとする必要があるのか。
種子法の廃止、水道の民営化、等々を先頭にした日本の「グローバル化」をやりやすくするため、じゃないですかね。いずれの時にかまたTPPみたいなフレームワークも来るでしょう。あと鳩山政権の成り行きを見てもわかる通り、基地も重要なテーマでしょう。私たちったら東京上空が日本の管理下じゃない、東京湾は外国の艦隊基地でっせというのを国内で相応に議題とされることなく暮らしているわけで、これって異常だと思う。話題にする人は反米であり反日だというマーキングを許しているのは私たちですからね。[捕捉:原発ももちろんそうでしょう。]
まぁなんてか、第三の開国だとかほざいていた旧民主党の首相がいましたが、まさにそれが現在追及されている趣旨なのでは?
別の言い方をすれば、日本の統治機構は日本のnationを考える人たちをどうにかして根絶やしにするためにこそ全力を尽くしております、ってことだと思う。そして、伝家の宝刀「立場主義」を覆せない日本でございますので、たとえ間違っている、このままじゃいかんと思ったとしても嘘を嫌悪する習慣は下位に追いやられる。
で、だからこそ、一方で、大日本帝国は立派だった、日本はこのままでいい、このままで世界から信頼され、尊敬され、みんな日本になりたいのだ、こんな日本が誇らしい、南京事件は捏造だ、朝鮮人虐殺はなかった、ノモンハンは勝っていた、世界最強の陸軍、海軍、神国日本は本当だ、等々といったトークがこれでもかと溢れかえっているということじゃなかろうか。1930年代の自画自賛の系譜というのは歴史資料にあるのに、多くの人は気づかない。
これらに釣られている限り、現実に何が起きてるかを認識するそれそのものが何か「反日」だったりあってはならない考え方だ、自虐史観だという認識に押し込まれていく。なんかカルトメンタリティー養成コース一直線なわけで、これもまた戦時中にやったはずなんですが、気付いている人はあんまり多くない。
早川タダノリ×青木 理「『日本スゴイ』ブームの実態とはなんなのか?」2017.01.13
『主婦の友』が「アメリカ人をぶち殺せ!」―大日本帝国の過激で珍妙な「戦争プロパガンダ」~現在に至る自画自賛の系譜を岩上安身が『神国日本のトンデモ決戦生活』著者・早川タダノリ氏に訊く! 前編161018
皮肉だが、日本を操ろうとする人々はどうやったら日本人が「落ちる」のか歴史を勉強しているが、操られる側はまったく勉強していなかった、という感じかしら。
これは、ディープステート(世界の大資本家)は団結するが、労働者はまったく団結しない、とかいう最近何度かネット上で見たジョークともどこか似てて興味深い。
「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜 | |
早川 タダノリ | |
青弓社 |
神国日本のトンデモ決戦生活 (ちくま文庫) | |
早川 タダノリ | |
筑摩書房 |
その意味で、G7の他の6か国とは明白に異なる社会機構を有している。
また、意外なほど農民の啓蒙に熱心だった人を出した幕藩体制さえすっ飛ばしてるという意味で日本の社会発展史からも飛びぬけている。
これを日本といわれてもわたしゃ知らんって感じ。
結局、突如振ってわいた「観念」による統治なんだろうと思う。