黒い瞳のジプシー生活

生来のさすらい者と思われた私もまさかの定住。。。

生き残る家とは

2016-02-15 00:04:57 | 思索系
大河ドラマ「真田丸」。このたびの話題は、織田家の
重臣として関東を支配していた滝川一益などもいよいよ
(北条などの)火事場泥棒によって立場が危うくなるが、
真田家はむしろその状況を逆手にとって大大名からの
自立を模索し始めるといった内容。
時代は、北条軍が滝川領の上野(倉賀野)に侵攻し始めた
時点で1582年6月16日、幸村16歳、信之17歳である。
なお、ドラマではとりあげられなかったがこのとき
北条軍の先陣を務めたのが(現・埼玉県大里郡寄居町の)
鉢形城主で北条氏政の弟・氏邦。昌幸と同じく安房守を
名乗っていた彼は、それこそ「めぐりあわせ」ゆえに
今後も沼田の支配をめぐって昌幸と鎬を削り続けることに
なる。そんな北条氏邦のお膝元であった鉢形城の歴史館で
この大河ドラマに関係のありそうな企画展が――
約7年前に催されたのみである。

ところで、この「真田丸」で北条氏政を演じるのが高嶋
政伸さん。「戦国の梟雄」っぽい役を彼が演じるのは最初
意外な気もしたが、思えば1991年の大河ドラマ「太平記」
では足利尊氏の右腕から反逆者へと変貌する弟・直義を
演じて私にインパクトを与えたものだった。今回はまた
小日向文世さんの秀吉が初登場したが、小日向秀吉とは
果たしてどんな感じになるのだろうか。

――そんなふうに思うのは、歴代大河ドラマの徳川家康が
(私が覚えてるだけでも)実に多彩であるように感じるから
である。あいにく滝田栄さんの家康は観たことはないが、
「デキる大先輩」の家康(「独眼竜政宗」)、ヒヨコだけど
見どころもある男(「武田信玄」)、腹に一物あるタヌキ親父
(「秀吉」など)、さらには血の気の多い家康(「葵・徳川
三代」)、ゴッドファーザー家康(「江」)、そして、
今年の家康はまた違って「単なる小度胸な凡人」。内容は
すっかり忘れてしまったが、私はかつて何かの番組で
家康を「凡人」として取り上げているのを記憶しているし、
歴史本ではないが家康を「臆病者」と評しているものも
知っているから、まぁ今年の家康像も一理あるものかも
しれない。だが私としては、これだけ多彩に描かれる
ぐらいだから、家康はむしろ凡庸だったというより
性質が多面的であったと考えるべきであるように思える。
そして想像するに、(家康ほどではないにしろ)秀吉も
天下人になれるくらいであるから実際は一般的なイメージ
よりも多面的な人物であったかもしれない。


昔話が続くが、山本勘助を主人公にした大河ドラマ「風林
火山」では、真田昌幸の父・幸隆夫妻が一家の危機を
脱した後、珍しく勘助の目の前でノロケてみせて勘助を
たじろがせるシーンがあったかと思う。――このように、
「大きくないにもかかわらず乱世を生き残った家」から
想像される一族のあり方として考えられるのは、ただ単に
クレヴァーで、ピンチをチャンスととらえられるポジ
ティヴさがあるというだけではなく、一族が協力的で仲は
悪くないということであろう。一族が協力し合えばそのぶん
生き残りやすくなるが、そのためには少なくとも仲が
悪くては拙かろう。この「真田丸」では、図らずも昌幸を
迷いから救った幸村の「才」もさることながら、実は
一見時代錯誤の信之の誠実さも、必ずしも一族にとって
ムダとは限らない。その理由は、忍者の師匠の出浦がシブく
語ったように「油断も隙もならぬ乱世の時代だからこそ
信用が大事になってくる」からである。
かつて、小山田信茂が織田家によってすぐに誅されたのは
その裏切り方ゆえに信じるに足る男ではないと判断された
からである。ドラマの昌幸も、おそらくそれを知るがゆえ、
一応、信之の話にも耳を傾けるのであろう。

ちなみに、ドラマでは幸村の姉・松が安土から脱出して
九死に一生を得ていたが、実は彼女についても、史実では
安土に送られていなかった可能性が指摘されている。
『真田昌幸』(著:黒田基樹 小学館 2015)によると、
かつて番組の最後で紹介された紀行にあるように、たしかに
『加沢記』なる書物には安土に送られたと記されているが
「国衆からの人質が安土城に送られた例はないので、誤伝
とみられる」という。――このように異論を述べているのが
この「真田丸」の時代考証担当者の一人なのだと思うと、
何とも言えない気持ちになるのである。


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