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コミック化希望小説◇恩田陸『夜のピクニック』

2006-11-25 09:47:48 | 本・コミック・かってに配役
東京国際女子マラソンのことやら(どのマスコミもQちゃんのことばっか),沖縄知事選のことやら(反日活動家の候補が当選しなくてまずは一安心。かといって好き勝手している米にべったりというのもアレですから,最終的には基地移設容認するにしても政府に言いたいことは言うくらいの知事でちょうどいいでしょう)いろいろ書くことはあった週末でしたがとてもとても手が回らず,まして『東京タワー』SPドラマの感想もまだ積み残しだってのに盗作ブログ発見で無駄な時間を費やしてしまってアホアホな状態の私。
とりあえず,先週半ばまでに読み終わった本,次の本を読むための区切りの意味でも感想をあげておきます。駆け足~!!!

って,ほぼ1週間かかっちまった・・・_| ̄|○

夜のピクニック
恩田 陸
新潮社
さすが本屋大賞おそるべし。

以前,長野県のある高校で,毎年全校生徒の有志が文化祭まで数ヶ月かけて1頭の巨大な竜の張り子を作るという行事を伝統でやっていて,そのドキュメントをNHKで見ましたが,『白線流し』なんてドラマがヒットしたように,高校時代の伝統のイベントというのは個人が持つエピソードと重ね合わせると本当にドラマチックな効果が演出される極上の舞台でありますね。

そんなこんなで2004年,第2回本屋大賞に選ばれた本作品,「夜のピクニック」と題された物語のモチーフとなる行事は,とある進学校・北高の全校生徒1200人が朝から翌朝まで80キロの行程を(休憩と仮眠をはさみながら)ただただ歩き続けるだけという「鍛錬歩行祭」。


イベントはシンプルだが
主人公たちのエピソード,キャラや身の上設定がすごい。
お話のメインとなる西脇融(とおる)と甲田貴子の関係,
そりゃ,ありえないだろ!
漫画の世界ではこれよりすごい設定がいわゆる名作といわれるものの中にも
たくさんありますが。あだち充先生(※1)とか鈴木裕美子先生(※2)とか
(※3)星里もちる先生とか…。
これらの話と比べればかなりリアルで可能性としてはあり得るし,
かつ当事者にとっては突拍子もないディープなシチュエーションである
ことは間違いないわけで,この大きな秘密を1本の幹に,
融,貴子,そして2人の親友戸田忍,遊佐美和子,そして数々のクラスメイトたちが
それぞれのエピソードを枝や葉,花として広げていき
たった一昼夜の物語でありながら素晴らしい名木を形作っていきます。

そしてまたこの行程自体が非常によく練られた構成になっていますね。
前半はクラスごとに固まって全校生徒が1列に並んで歩く団体歩行,
夜になり,後半は全校生徒が一斉にスタートし,上位成績も記録される自由歩行。
融にとっては自由歩行を親友の忍と一緒に歩く(走る)か
足の不調も考慮して仲のいいテニス部の仲間たちと一緒に歩くかの
選択を迫られる前半であり,
貴子にとっては,高校の三年間,親友にまで隠してきた
秘密を精算するために決めた賭けに勝つかどうか,
緊張と不安に包まれながらの1日であり,
思い出作りに彼氏をつくろうと作戦を練っている子,
従妹を妊娠させた男子生徒を捜し出そうと捜索活動に
邁進する子まで多種多様の人間ドラマ。

その人間模様が心に迫る美しいドラマとして描かれる鍛錬歩行祭,
間にはさまれる1時間ごとの休憩や仮眠で交わされる会話や
生徒たちの行動がまぁいきいきと描かれていて
疲れや足の痛みまで伝わってくるよう。
夏恒例の某テレビ局の24時間マラソンを見ているよりはるかに
伝わるものが大きいのは活字のもつ力のすごさだと思いますね。

で,また1人1人のキャラ設定が絶妙なんだわ。
融はクールな外面でモテキャラなんだけど
内面にはすごいコンプレックスをもっていて,親友の忍から見ると
殻を被って青春時代を過ごしているのが歯がゆくてしかたない。
そんな忍も,「いい人」キャラ爆裂で,結局一番損してるんじゃない?
と読んでいて心配してしまう好人物。
貴子はかなりさっぱりした明るい前向きの女の子(実写化向きですねw)
なんだけど,心の中はかなり繊細で簡単に思い切ることのできない
ところがあったりする。
美和子は優しくて美人で育ちがよくて,長所を挙げたら
十指では足りない完璧ガール。

このストーリーを読めばどこかに自分(あるいは心の中にある
理想の自分)の分身を見つけることができると思います。

読み終わってみれば,
融も貴子も,そして忍も美和子も後藤梨香も梶谷千秋も
お前は柳沢慎吾ちゃんか!ってくらい賑やかやかまし男くんも
自己チューのゴーインマイウェイな女の子も
みんな,とても愛おしく感じられます。
それはかつて通った,過ぎ去った十代のときを過ごした
青くて自分勝手で狭い視野の中で一生懸命突き進もうとしていた自分や
それを温かく見守りつづけてきたまわりの人々たち,
そして彼らと過ごしてきた思い出だったり。
高校時代,そんなに友達とつるまず過ごしてきてそんなに思い出も
残っていないつもりだった私さえも,そういえばあいつ面白かったよな,
あいついい奴だったよな…と自分は一人じゃなかった,
みんなに助けられて(っていうと語弊がありますが…いい表現が
見つかりませんが,みんなといたからこそ自分の高校時代があったんだ
という感じですね)高校時代を過ごし,卒業してきたんだなという
思いにひたれる,タイムマシンのような小説です。

さて,当ブログでは本の感想には「かってに配役」をつけるのが恒例となっていますが,ティーンズ俳優の方々にはくわしくないんで高校生が主人公のお話に実写バージョンの配役をつけるのは無理ですわ。
第一,今年上映された当作品の映画も動員・興収で惨敗したって話ですしね…。
聞くところによると興収2億ですか。制作費どころか宣伝費も回収できないと。

たしかに,この小説はすばらしい!
「セカチュー」よりも完成度が高いともいえるし,感動できる作品です。
しかし,生身の人間でこの友情や悩み,感動を表現し観客にそれを味わわせるのは至難の業ですよ。
「セカチュー」は恋愛ものでしたから長澤まさみさんが可愛くて
森山未来くんが,のたうちまわる平凡な高校生を演じれば一丁あがりでしたし
(しかしすごい映画でした。社員旅行の帰りのバスの中でビデオ上映したら
 映画が終わる前に解散場所に着きそうになってバスが遠回りしたくらい
 私も含め皆が真剣に見入ってましたから

「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」はコメディーですから
ウケる場面をいくつも投入することで観客を引き込んで満足させることが
できましたけど…小さな出来事の積み重ねで最後にスッキリさせる
この話はよっぽど存在感のあるキャストで客を引きつけるか
TVCMで一瞬流してハッとさせることができるくらいのシーン
(「あずみ2」の視点垂直360度回転シーンとかw)を投入するとかしないとね。

何ということのない話なのになぜか高確率で観客が泣けてしまった
「ニューシネマパラダイス」みたいな映画もありますから
小規模低予算でつくって(ちょっとエキストラとか大変ですけど)
単館上映から展開すべきストーリーだったんじゃないですかね…。
※アルフレード役のフィリップ・ノワレさん,亡くなられたとのこと。
 ご冥福をお祈りします。いやぁ,すごい存在感でした…。


と,いうわけで,今回は「かってにコミック化」
これを漫画にするならこの描き手がいい!
という提案をしてみたいと思います。

こういった青春ものでは実績筆頭にあげられるのは
原 秀則先生かなと思います。
昔は週刊少年サンデーで『ジャストミート』コミカルな野球漫画を描いてましたが
『冬物語』『部屋においでよ』など高校・浪人・大学生男女の
心の動きを美しく描き出すことにかけては男性メジャー漫画家の中では
第一人者といえるのではないでしょうか。
今,ビッグコミックスピリッツで連載中の『ほしのふるまち』も
高校生が主人公で進路問題や恋愛感情に悩む姿を描いた作品ですから,
感性の若さを維持し続けているのは凄い。
原作つき本(とはいっても元は「2ちゃんねる」でのやりとりだけですが)
でも『電車男』をうまく料理した実績があります。

しかし,原秀則作品の主人公男子は総じて軟弱なんですよね…
もこみち君主演で実写化された『レガッタ』なんてのもありましたけど
クールで硬派系の融を描くには物足りない。

融,忍コンビの描写を中心に考えるなら
石渡 治先生などが面白い。
昔から『B・B』,今ヤングサンデーで連載の『ODDS』に至るまで
けっこう硬派,(シャープな)マッチョ系のスポーツ漫画が多く,
気は優しくて女の子に弱い好漢キャラを生き生き描くのには
太鼓判を押せます。


ただ,この「夜ピク」をコミック化するのであれば
一番に押したい,こだわりたいのが
きたがわ 翔先生。
その理由はただ一点,榊杏奈をこの人に描いてほしい
これにつきます。
上の小説感想では一言も触れていませんでしたけど,
美人で頭脳明晰,米国留学で鍛錬歩行祭に参加していないけど
貴子に届いた彼女からの手紙「去年の歩行祭でおまじないを
かけておいたから」という謎めいた“予言”がこの行事を通して
非常に重要なキーとなるのです。

私は,d-「夜ピク」を視覚化するのであれば,
榊杏奈を神秘的で透明感のある美少女に描けなければ
魅力は半減,かなり読み応えのない物語になってしまうのではないかと思います。
『ホットマン』といい『刑事が一匹』といい
近年のきたがわ翔作品は,大人の男性,言い切ってしまえば
オッサンが主人公の漫画が多いですが,
(今週のヤンジャンに描いた読み切りも女装コスプレ父ちゃんの話だったし…^^;)
私の知る限り,透明感のある可憐な少女,あるいはミステリアスな美少女を
描かせれば,そこらの少女漫画家よりよっぽどきれいに描ける
第一人者といっていいと断言します。

ドラマ化でリベンジしたいとお考えのテレビ関係者の方,
きたがわ翔カバーのコミックとのマルチメディア戦略で
攻めてはいかがでしょう?
きたがわ先生のスケジュールを調整の上,ぜひ!

※1「みゆき」…主人公若松真人が,同じ屋根の下で暮らす血の繋がらない妹・若松みゆきと,クラスのマドンナ・鹿島みゆきとの間で揺れ動く
※2「うめモモさくら」(→Amazon)…主人公が失踪した兄の婚約者と称する女の子3人と同居
※3「ルナハイツ」(→Amazon)…突然婚約者に逃げられてしまった主人公,買っていた新居が職場の女子寮にされてしまい,入居した女の子たちと同居することに。“理不尽同居”は星里作品では定番といえますが


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