自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

4輪車天国。

2016年08月13日 22時42分11秒 | おしごと日記
アゼルバイジャンでは、まったく自転車を見かけません。
平らな土地もたくさんあるのですが、とにかく走ってるのは4輪車だけ。





走る車は、超高級なベンツか、
オンボロのソ連製ラーダ。
ベンツに乗ってるのは、まずまともな仕事ではないですね。
たぶん石油関係で儲けてる人。
でも、話すと意外と素朴で、
ことごとく上から目線で接してくるアラブの金持ちに比べたら
そんなに悪い奴じゃない。


ソ連製のラーダは、たいてい40年ものの「超」がつくほどボロボロなのですが、
とにかく速い!
バイーン! といって、かっ飛ばしていく。
この国の山岳は勾配20%オーバーがザラなのですが、
まったく問題なく登っていく。
恐るべし、ラーダ。

もちろん、故障は日常茶飯事で、
道でボンネットを開けてボンヤリ立ってる人にも
たくさん出会いましたが、
「走る」以外の機能がまったくなシンプルな作りなので、
ほとんどのドライバーは自分で直せるんだそうです。




さて先日。
そんな車だらけの道で撮影をしていたら、
真後ろから「クシャ」という音がした。
見ると、なんと車が横転している。





車の中は、ブドウがぎゅうぎゅうに詰まっている。
市場かどこかにブドウを運ぶ途中で、こんなことになったようだ。
運転手が「あ〜あ」という顔で立ち尽くしている。


すると、通行中の車から、わらわらとおっちゃんたちが出てきて、
みんなで車を押し出した。
もう、手伝うのが当たり前、という空気で、
えっさ、ほいさと掛け声かけて、
横転した車を立てようとしている。


車はどうやらペラペラなので、
これだけの人数がいれば起こせそうな気がしたが、
そうは問屋がおろさなかった。


えっさ、ほいさと車を揺すったら、
ペラペラの車はクニャクニャ曲がって、
まるで猫じゃらしをモミモミすると出てくるように、
トランクのぶどうが出てきちゃった。

えっさ、ほいさ。
ぶどうコロコロ。
えっさ、ほいさ。
ぶどうコロコロ。


ここまでは微笑ましかったのだが、
運命は彼らを放っておかなかった。
ドボドボとガソリンが漏れ出したのだ。


車を揺さぶるほど悪化する状況に、
おっちゃんたちも諦めたようだ。



しかし。
話はこれで終わらなかった。
一縷の望みを託していた運転手の兄ちゃんは、
どうやらダメなことがわかり、頭をかかえてしまった。
そして、あろうことか、タバコに火をつけた。

まさかこの状況で、タバコを吸い出す人がいるとは思わなかった。
兄さんはそのまま、オイルが漏れている自分の車を
色んな角度から覗き込んだ。
こぼれたオイルまで20センチ。
私たちは、うわー、うわー、やめてくれー、と
状況を見守った。



そうこうしているうちに、
さらに恐ろしい事態になった。
漏れたオイルが道路に広がり、
通る車がスリップしだした。
オイルを踏んだ車は、もうタイヤがグリップしないので、
スリップしながら路上でクルクル回り出した。
あっちの車がクルクル。
こっちの車もクルクル。
警察が来たが、談笑しているだけで
特に交通整理をするわけでもない。
こんなに車がクルクル回っているのに、一台もぶつからなかったのは
奇跡を見るようだった。



我々は、いつまで見てても危なっかしいし、きりがないので、
立ち去ることにした。
横転した車を助けようとしていたおっちゃんたちも、ぼちぼち去り出した。
と、おっちゃんたちが、車を横転させた兄ちゃんに、
何か言いながら、何かを渡している。


お金だ。


表情からは、「力になれなくてすまん」と言っているようだ。
とにかく、ほとんどの男たちが、兄ちゃんにお金を渡した。
この国では、ああいうおっちゃんたちの収入は、
月に1万円から2万円ほどだそうだ。
物価が安いとはいえ、もちろん生活は苦しい。
それでも、当たり前のように渡した。
それまで大騒ぎして見ていた私たちは、何も言えなくなり、黙った。




こうした助け合いは、イスラム教徒によく見られる風景だそうだ。
祈りの日には、モスクで炊き出し。
金に困った人がいれば、だれからともなくスッとお金が差し出される。
私は、これまでほとんど触れて来なかったイスラム教の何かを、少しだけ見られた気がした。




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3 コメント

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Unknown (るるねこ)
2016-08-14 18:04:34
昔ながらの助け合い精神は日本では最近見る機会が減ってる気がします。
特に都会にいると金銭的に豊かになった反面、みんな疲れて心に余裕がないような…
そんな大事な心をもっと取り戻したい物ですね。(・.・;)
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 (トラベラー)
2016-08-16 23:41:05
相方の田舎にお盆で帰省中ですが、コンビニ一件もない山の村で住んでる人もほぼお年寄り。

でも、何かあった時はさっと集まり助け合う、昔の日本はこんなだったかな~と。

アゼルバイジャンもそうなんですね☆

ただ、ガソリンに火気は怖いです^^;
返信する
Unknown (D☆)
2016-08-17 16:34:58
るるねこさま。
そうですね〜。
せめて自分だけは、助け合える人でありたいと
思います。

トラベラーさま。
日本でも、田舎に行くと
こういう雰囲気って残っていますよね。
それが煩わしくて、捨ててきたのでしょうけど、
失くしてしまうと大切さがわかります。
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