小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「アトピー性皮膚炎を治す漢方療法」

2008年09月16日 08時56分13秒 | アトピー性皮膚炎
田中盛久著、1995年、池田書店発行。

西洋医学のアトピー治療に限界を感じる今日この頃、漢方治療の本はないものか・・・そのものズバリの題名の本を見つけました。
著者は日本漢方のメッカの一つである北里研究所の先生です。アトピー性皮膚炎の漢方療法について具体的に、そして微に入り細に入り懇切丁寧に解説しています。これほど詳しく、そしてわかりやすく書かれた内容は専門書でもあまりありません。ただ、盛りだくさん故、一般の方が読むと混乱しそうです。

西洋医学では治療ガイドラインが整備されており、アトピー性皮膚炎と診断されると、環境整備、スキンケア、薬物療法とやることが自ずと決まっています。
しかし、漢方ではアトピーと診断しても「ではこれを使えばOK」という薬の名前がすぐには出てきません。
なぜかというと、漢方医学には「アトピー性皮膚炎」という病名・概念が存在しないのです。
ですから、患者さんの皮膚の状態や体質により適応する方剤を選択していくことになりますが、これが難しい。
適応可能な薬の数は軽く10種類を越えます。
さらに著者は日本の伝統的な漢方医学ではアトピーを捉えきれないことを認め、中国古来の「中医学」の概念を一部当てはめて解説しています。
今まで喉につかえていたものが取れた思いでした。
やはり、ここまで理解しなければダメだったのか、と納得しました。

また、幼少児期のアトピーを6つの型に分類して居ますが、その内容が興味深い.

1.家庭病タイプ(自律神経失調型)・・・半数程度
2.癇が強いタイプ
3.消化器症状タイプ・・・約30%
4.熱感タイプ
5.水分代謝異常タイプ
6.その他のタイプ

「家庭病タイプ」とは・・・過保護などの家庭環境の影響が強いタイプで、依頼心が強いため自律神経系が弱く、すぐ自律神経失調状態になる.朝お腹が痛む、ストレスの影響を受けやすい、緊張しやすい、寝付きや寝起きが悪い、情緒不安定、自我が弱い、などの特徴が目安になる、と説明しています.

日々患者さんを診ている私には頷ける事ばかり.
特に食物アレルギーを合併したアトピー性皮膚炎の乳幼児は、この「家庭病タイプ」が多い印象があります.

アトピー性皮膚炎患者としっかり向かい合っている(ガチンコ勝負をしている)医師の書いた本は、例外なく「こころの問題」を指摘しています.
これが皮膚科学会が作成した「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」に欠如している要素であり、アトピー患者がドクターショッピングを繰り返す理由でもあると思います.

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