と、はっきり言えないところが日本の問題の根本ではないかと以前から思っていました。
日本の性教育には「性行為を教えてはならない」というルールがあるそうです。当然、性行為に伴う性感染症が理解できるはずがありません。
このタブーを変えて解決しなければ、何度もトラブルを繰り返すでしょう。
だって「痛い注射」を「意味がわからないけどみんながするからしておこう」というモチベーションでは痛みに耐えられない、子どもにとって迷惑以外何物でもないと思います。
イギリスではHPVワクチンについて、「性行為感染症に伴うガンを予防するワクチン」としっかり本人達(子どもたち)に理解してもらい、承諾を得て接種していると聞いています。
このような方法で、接種率8割を維持し、日本のような副反応騒ぎは発生していません。
性感染症ですから当然、男性にも無縁ではありません。
世界中を見渡すと、男性への接種を推奨している国もあります。
日本では議論の話題にもなりませんが。
この辺を扱った、最近目に留まった記事を紹介します;
■ 子宮頸がんだけじゃない! やっかいな病気をもたらすHPV…1回の性行為でも感染、ワクチン接種は「デビュー」前がベスト
(2021年7月22日:読売新聞)より抜粋;
13歳の女子中学生Uさんは、母親とともに来院した。Uさんの母親は過去に早期子宮頸がんの治療をされている。それゆえ娘が同じ病気になるリスクが減るなら、子宮頸がんのワクチンを接種させたいと考えていた。しかしその副反応のことが心配で2人で相談にきたのだった。
小さい頃から時々受診していたUさんは、すっかり大人びて受け答えもきちんとできる女性になっていた。Uさんにはワクチン接種の意義と副反応について説明し、不安なことはないか尋ねた。Uさんはすでに母親と話し合っていたようで、接種したいとはっきりと申し出てくれた。
◆ 肛門や外陰部などのがんにも関与
子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスが強く関与していて、このウイルスは他にも中咽頭・咽頭がんや肛門がん、外陰部のがん、さらに 尖圭せんけい コンジローマ(ウイルス性いぼ)など治療に苦慮する疾患にも関わる。
HPVはとてもたくさん種類があるのだが、がんを発症するウイルスはそのうちの一部に限られる。日本で公費で受けられるワクチンは、2種類のウイルスに対応するものと4種類のウイルスに対応するものがあり、子宮頸がんの60~70%に関わるウイルスの感染を予防する。後者には、尖圭コンジローマに関わるウイルス型も含まれ、可能であればこのワクチンを接種するのが良いと思う。
◆ 公費での接種は高1まで
ウイルスはたった1回の性行為で感染するので、より多くのウイルス感染を予防するためにはセクシュアルデビュー(初めての性行為)前の接種が望ましい。高校1年生までが公費負担となっている理由はそこにある。
接種回数は3回必要で筋肉内注射である。その後、筋肉痛になるが、3日ほどで軽快する。通常、1回目の1か月後あるいは2か月後に2回目、1回目の6か月後に3回目を接種する。もう少し接種間隔を狭めることができるが、最短で1回目から3回目まで4か月強かかるので、高校1年の11月までに接種を開始してほしい。
子宮頸がんワクチン接種を受けるには、市区町村の役所・保健所に連絡すると、定期接種の用紙を自宅に郵送してくれる。現在は積極的勧奨が中止されているため、他の定期接種と違い、自分で請求しないと送られてこない。
◆ 自費なら9種類対応のワクチンも
実は世界ではすでに使用されている9種類のウイルス型を含むワクチンが、日本でも今年2月に発売された。残念ながら公費対象にならず高額である。発がん性の強いことがわかっている13種類のHPVのうち9種類のウイルス型に対応している。公費時期を逃した方は検討しても良いかもしれない。
パートナー間で感染を広げないため、また中咽頭がん・陰茎がんなど男性でもがんの危険があることから、海外では男児にも接種されている国がある。日本でも公費補助を今後期待したい。
◆ 重大な副反応はまれ
子宮頸がんワクチンはその副反応について不安を抱える親御さんも少なくない。子宮頸がんワクチン接種後に入院すべき重い副反応の症状が出た人は、因果関係があるかどうかわからないものや、接種後短期間で回復した症状をふくめて、接種1万人あたり約5人と報告されている。その頻度は他のワクチンに比べ、飛び抜けて多いわけではない。
ワクチン接種で防げるがんはまだ少ない。個別の事情や考え方はあるが、親御さんはもちろんのこと、中学生になればその意義について理解ができるので、きちんと話し、意思を確認すべきと思う。将来の健康に関わることなので、ステイホームの続く今年は、疑問や不安なども含めて家族でよく話し合ってほしい。(常喜眞理 医師)