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小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「好酸球性消化器疾患」という病気

2017年10月20日 06時48分50秒 | 食物アレルギー
 乳児期発症の食物アレルギー予防に関しては「避けるより食べさせる」風潮がトレンドです。
 しかし食物アレルギーを「食べて治す」という「経口免疫療法」は一時期学会でブームと言えるほど勢いがあったのですが、数年前に「まだ研究レベルに留め、一般診療として推奨されない」と一歩後退して現在に至っています。
 その理由は2つ;
①治療中に症状が必発し、ときにアナフィラキシーショック
②好酸球性消化器疾患を発症するリスクがある
 です。

 ②のこ好酸球性消化器疾患を扱った記事が目にとまりましたので引用・抜粋します;

■ 原因特定難しい食物アレルギー、「6種抗原除去食療法」で改善
2017年10月18日 読売新聞・佐藤光展
 近畿地方の30歳代の男性会社員は、3年前からひどい腹痛や下痢が続き、「好酸球性消化管疾患」と診断された。食物が原因で消化管に炎症が起こるアレルギー性の病気で、男性はステロイドを飲むと回復するが、量を減らすと再発した。副作用が心配で昨年、島根大学病院(出雲市)に入院し、原因食品を見つけるプログラムを受けた。原因は卵と分かり、これを抜く食事で元気に仕事ができるようになった。
本来は寄生虫と戦う好酸球、持て余した力を発散し...
 食物アレルギーは、本来は体を守る免疫機能が、特定の食品成分を敵と誤認して攻撃し、その影響が消化管などに及ぶことで起こる。通常は食後1時間以内に腹痛などの症状が表れるので、原因を特定しやすい。特定の食品成分を含む試薬を皮膚に少量ずつつけて反応を見る検査や、血液中のIgEという免疫に関わる物質の量を見る検査もある。
 ところが食道や胃、小腸などに炎症が起こる好酸球性消化管疾患は、食後数日してから腹痛や吐き気、下痢、血便などの症状が表れることが多い。皮膚に試薬をつける検査にも反応せず、原因の特定は困難だった。
 この病気を引き起こす好酸球は白血球の一種で、本来は体に侵入した寄生虫などと戦うために存在する。ところが衛生環境が劇的に良くなり、寄生虫が体内からいなくなると、好酸球の仕事が激減してしまった。同病院第2内科教授の木下芳一さんは「好酸球性消化管疾患は、暇になった好酸球が、持て余した力を発散しようとして起こっているように思える」と語る。
 これまでは希少難病とされてきたが、近年、患者が次々と見つかっている。木下さんは「島根県内の検診センターで内視鏡検査を行うと、食道に軽度の炎症が起こるタイプは、約500人に1人の割合で見つかるようになった」と語る。
 この病気は血液検査では分からない。内視鏡検査で炎症を確認し、その部分から少量採取した細胞を顕微鏡で見て、好酸球の数を確認する検査を行う。
 食道に炎症がとどまるタイプは胃酸を減らす薬で良くなる場合がある。胃や腸に炎症が起こるタイプも、ステロイドを使うと症状は治まるが、全身に回るステロイドを長期使用すると、糖尿病や骨粗しょう症、うつ状態などを招きやすい。
6種類の食品から原因見つけ出す
 そこで同病院などの研究チームが始めたのが「6種抗原除去食療法」だ。症状を引き起こすと考えられる卵、乳、小麦、大豆、魚介類、ナッツの6種類の中から原因を見つけ出す。
 まず、6種類の食品を全部抜いた食事を4週間から6週間続けて、症状を改善させる。その後、6種類のうち1種類を加えて2、3週間様子を見る。変化がなければさらに1種類加える。症状が出たら内視鏡検査で炎症を確認し、最後に加えた1種類を抜く。症状が落ち着けば別の1種類を加えて再び様子を見る。
 同病院は入院治療で行い、原因を特定できた患者は、除去食メニューを生活に取り入れてステロイドをやめることができた。だが、6種類の食品を試すには半年近い入院が必要になる。
 同病院管理栄養士の平井順子さんは「将来は外来でも行えるように、家で楽に作れる除去食メニューを増やしたい」と話している。


「卵を早期から摂取すると卵アレルギーにならない」を誤解していませんか?

2017年10月13日 13時24分04秒 | 食物アレルギー
 数ヶ月前に「離乳食で卵を早期から摂取させると卵アレルギーを予防できる」という報告が医師向けに公表され、話題になりました。

■ 「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」の発表について

 これは対象を限定した研究発表に基づくものであり、一般論として普及させるべきモノではありませんでした。
 しかし現実には、メディアが大きく報道した影響で「健康な子どもでも早めに卵を食べさせた方がよい」という誤解と伴って普及してしまいました。

 その状況に警鐘を鳴らす意味で、日本小児アレルギー学会から先の提言の説明が新たに公表されるに至りました。

 その内容のポイントを挙げますと、

1.対象は乳児アトピー性皮膚炎に限定され、
2.かつ、治療により湿疹がなくなった状態に限定され、
3.1と2を満たす患者に卵を医師の管理下で生後6ヶ月時点で微量摂取からはじめて増量していくプログラムを行ったら卵アレルギー発症率が低くなった。


 ということです。
 つまり、この研究結果からは、
① 健常児
② 治療により湿疹がよくならない乳児アトピー性皮膚炎患者
 は対象にならない
と云うことです。

 さらに云うと、卵を開始する時期、量によっては卵アレルギー発症を防ぐ効果がないという報告もあるので、健常者が「何となく卵を早く食べ始めるといいらしい」というレベルの話では断じてない、ということです。
 誤解なきよう。

「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」の解説:小児科の先生方へ
「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」の解説:患者・一般の皆様へ


 脱線しますが、英国の卵摂取事情に関する記事を見かけたので紹介します。
 イギリスでは赤ちゃんに卵を食べさせなかった、しかし理由はアレルギーではなくサルモネラ感染症が恐いから。
 安全宣言が出されたので、解禁になったらしいです。

■ 英国でも生卵が全面解禁 赤ちゃんも妊婦も食べてOK
2017年10月12日:BBC
 英国ではこれまで生卵の安全性について、乳幼児や高齢者、妊婦は食べてはいけないと言われてきた。しかし英食品基準庁は11日、生産方法や衛生状態が改善したため、品質保証の赤い「ブリティッシュ・ライオンマーク」がついた卵は、誰でも生で食べて大丈夫だと基準を変更した。
 英国では1988年12月、当時のエドウィナ・カリー保健相が「英国の卵はすべてサルモネラ菌に感染している」と発言し、卵の消費量が激減する騒ぎがあった。英国では前年、卵によるサルモネラ菌感染が20件以上起きていた。

米国小児科学会から食物アレルギー診療医へのコメント

2017年08月04日 18時00分34秒 | 食物アレルギー
 米国小児科学会(AAP)が食物アレルギーに関して小児科医が果たすべき役割を発表したという記事を紹介します。

 ざっと目を通してみると、あまり目新しい内容はありませんでした。
 「血液検査や皮膚テストだけでは食物アレルゲンを確定できない」「食物経口負荷試験(OFC)がゴールデンスタンダード」であることを強調しています。

■ 食物アレルギー患者の安全を確保するには 〜AAPが小児科医が果たすべき役割を発表
2017年08月03日:メディカル・トリビューン
 米・Icahn School of Medicine at Mount Sinai教授で米国小児科学会(AAP)のScott H. Sicherer氏らは米国科学工学医学アカデミー(NASEM)が2016年に発表した食物アレルギーに関するコンセンサスレポート"Finding a Path to Safety in Food Allergy: Assessment of the Global Burden, Causes, Prevention, Management, and Public Policy"(以下、NASEMレポート)の中から小児科医およびAAPが果たすべき役割を要約してPediatrics(2017; 140: e20170194)で発表した。「医療提供者は食物アレルギーの高リスク群や重度患者(喘息併発症例など)に対するカウンセリングを積極的に行い、アナフィラキシーへの救急時対応ではエピネフリンの筋肉内注射を第一選択とすべき」と強調した。

<関連記事>
・「エピペン自主回収の対象を追加
・「花粉−食物アレルギー症候群の診療ポイント
・「ピーナツアレルギー予防に指針、NIH

◇ 単一の検査結果では診断が確定できず
 米国では食物アレルギーの有病率が正確に把握されておらず、報告ごとに数字は大きく異なっている。その要因の1つとして、食物アレルギーはしばしば自己報告(または親による報告)に基づいて評価され、有病率が過大評価されていることが挙げられる。加えて、食物アレルギーに対する基本的な理解が一般に十分に浸透しておらず、乳糖不耐症をはじめ代謝要因や薬理学的要因、毒性反応などがアレルギーと混同されているのが現状である。そのため、食物アレルギーは免疫反応であり、その大半がアナフィラキシーの原因ともなる免疫グロブリン(Ig)E介在型の反応であることを周知させる必要がある。全国健康栄養調査( NHANES)などに食物経口負荷試験(OFC)の結果を加えて、より正確な有病率を把握することを推奨している。
 また食物アレルギーの診断は、単一の検査法では診断が確定できないことを十分に理解しておく必要がある。特異的IgE検査あるいは皮膚プリックテスト(SPT)で陽性所見が得られても、それだけでは特異的IgE抗体の存在を示しているにすぎず、食物アレルギーであることの証明とはならない。小児44例を対象に特異的IgE検査で陽性所見が得られた食品を用いてOFCを行ったところ、93%は食物アレルギーではなかったとの報告もある。
 プライマリケア医407人を対象とした調査では、38%が確定診断は特異的IgE検査またはSPTで十分と回答しており、このような誤解を解消することも急務である。
 一方で、十分な検査が行われずに、真のアレルゲンを見逃してしまう恐れもある。そのため、既往症(アトピー性皮膚炎など)やIgE非介在型の食物アレルギーなどにも配慮しつつ、適正かつ必要な検査を正しく施行することが重要である。

◇ エピネフリン筋注が第一選択
 NASEMレポートでは、食物アレルギーの予防に関する多くの研究を紹介している。例えば、ピーナッツアレルギーのリスクが高い生後4カ月以降の乳児にピーナッツ蛋白を投与することで、同アレルギーを予防できるとする研究などを紹介し、他の食品についても研究の余地があるとしている。
 食物アレルギーの管理については、まず、アナフィラキシーを生じた場合の救急時対応としてエピネフリンの筋肉内注射を速やかに実施するよう呼びかけている。同レポートによると、エピネフリンは安全性が高いにもかかわらず使用されないケースも多く、特にティーンエージャーや喘息併発症例などの高リスク群に対して、エピネフリン自己注射器の使用法を周知させる必要があるとしている。
 加えて、現在、米国では乳幼児に最適化された用量のエピネフリン自己注射器が上市されていないことから、その対応を急ぐ必要があると言及している。
 日々の管理では、家庭・学校・旅行先などさまざまな場面でアレルゲンをどのように回避すべきかを小児科医が家族に教育することが求められる。例えば、家庭では調理の際にアレルゲンとそれ以外の食品を一緒に扱わない、食品購入時には食品包装のアレルギー表示をきちんとチェックするなどの遵守が必要。加えて、アレルゲンを回避するだけでなく、食物アレルギーが学校でのいじめの原因となる恐れがあることから、心理社会的観点からの管理も求められるとしている。
 アレルギーを原因とするいじめをなくすには、食物アレルギーに関する教育や公衆衛生当局による啓発キャンペーンの実施などが必要であり、安全な食品の提供という観点からは食品メーカーや米食品医薬品局(FDA)による現状改善の努力も欠かせない。食物アレルギー患者の安全を確保するには、利害関係者を中心に社会全体が真剣に取り組む必要があるとしている。

(Finding a Path to Safety in Food Allergy: Assessment of the Global Burden, Causes, Prevention, Management, and Public Policy)

「おいしく治す食物アレルギー攻略法」(伊藤浩明監修)

2017年07月04日 06時53分27秒 | 食物アレルギー
おいしく治す食物アレルギー攻略法
監修:伊藤浩明
作成:あいち小児保健医療総合センターアレルギー科
発行:認定NPO法人アレルギー支援ネットワーク

<内容紹介>
本書は、伊藤浩明先生監修の下、あいち小児保健医療総合センター アレルギー科で実際に使用している資料をまとめた資料編と解説編に分かれています。
「資料編」は、保護者へ指導する際にコピーして使用できるパネルがまとめられ、「解説編」は、資料編のそれぞれの内容について、指導者が理解しておきたい内容が記述されています。「資料編」と「解説編」相互に、対応するページが示され、指導がスムーズにできるよう構成されています。
食物アレルギーの食事指導を行う管理栄養士の皆さまにご利用いただきたい一冊です。

この「攻略本」は、原則として各医療機関の医師の診断と指示の下に管理栄養士が食事指導を行うことを想定して作られています。食物アレルギーの基礎的な内容を網羅した解説ではありませんので、一般的な知識は成書や研修会などで学習した上でご利用ください。また、一般の方は必ず主治医の指導の下ご利用ください。




当院はアレルギー科を標榜しているので、よく食物アレルギー患者さんが相談に受診されます。
そこで避けられないのが除去解除の際の経口負荷試験とそれに伴う栄養指導です。

しかし、アナフィラキシーの既往のある重症患者さんを抱えるのは危険だし無責任とも考えられます。
アレルギー関連学会で議論になるのは決まって重症患者さんで、軽症患者さんに対するガイドラインもマニュアルも従来は存在しません。

そんな中、私は「開業医でどこまでできるか?」をずっと探り続けてきました。
近年になり、ようやく軽症者への対応も扱われるようになった感があります。

この本は、先日聴講した伊藤浩明先生のお話の中でも紹介され、私が探してきた「軽症者の診療」を扱った内容です。

・『攻略法』は、従来から「少しずつ食べてみる」指導をしてきたすべての軽症者が対象です。
・私たちは『攻略法』による食事指導と経口免疫療法の本質的な違いは、対象となる患者さんの違いと考えています。


ただ、やはりハードルがありました。
医師の他に「栄養士」ありき、なのです。
しかし現状は、総合病院でなければ栄養士はいません。

・『攻略法』は医師と栄養士がチームを組んで食事指導を行うことを想定しています。

当院の事情として、地域の基幹病院の小児科が閉鎖したことが大きく影を落としています。
いざというときの受け入れ先がないのです。
入院施設のある近隣の総合病院へ救急車で搬送しても30分以上かかってしまいます。

すると、はじめから十分な救急体制の取れる総合病院に患者さんを誘導した方がよい、とも考えられます。
やはり開業医では十分な診療は無理なのでしょうか・・・。

ちなみに、経口負荷試験を保険診療で行うには、以下の施設基準を満たし申請して許可される必要があります;

1.小児科を標榜している保険医療機関。
2.小児食物アレルギーの診断および治療の経験を10年以上有する小児科を担当する常勤の医師が1名以上配置されている。
3.急変時などの緊急事態に対応するための体制その他当該検査を行うための体制が整備されている。

当院に当てはめると、1と2は満たしますが3は不十分と言わざるを得ません。アナフィラキシー・ショックを起こした場合は医師も複数を集めて人海戦術で診療にあたるのがふつうですが、私1人しかいませんので。

(医学雑誌拾い読み)「小麦アレルゲン」

2017年07月03日 13時22分49秒 | 食物アレルギー
日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会誌 13-1、37-41、2015
松尾裕彰(広島大学医歯薬保健学)

■ 小麦アレルギーの病型は多彩で、病型ごとに主要アレルゲンが異なる
1.即時型小麦アレルギー:経口摂取
2.パン職人喘息:吸入
3.小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA):経口摂取、経消化管感作
★ 加水分解小麦タンパク質が原因のWDEIA:経口摂取、経皮感作、眼瞼浮腫が特徴
4.小麦接触じんま疹:接触

■ 小麦アレルギーの有病率は、成人1000人あたり2.1人

■ 小麦タンパク質の分類
小麦タンパク質
→ (15%)塩可溶性タンパク質:アルブミン/グロブリン
→ (85%)塩不溶性タンパク質 → (60%)グリアジン(α/β、γ、ω1,2、ω5)
                → (25%)グルテニン(高分子量HMW、低分子量LMW) 
小麦粉に水を加えて捏ねるとグリアジンとグルテニンが重合しグルテンが形成される

■ 小麦アレルギー病型別主要アレルゲン
1.即時型小麦アレルギー:塩可溶性および塩不溶性タンパク質
2.パン職人喘息:塩可溶性小麦アレルゲンのα-アミラーゼインヒビター、アグルチニン、ペルオキシダーゼ、脂質輸送タンパク質(LTP)
3.WDEIA:ω5-グリアジン、γ-グリアジン、高分子量グルテニン

吸入や経皮的にアレルゲンが侵入すると、水様性のタンパク質に感作されやすく、経口では水様性・不溶性両方のタンパク質に感作されると推測される。

(医学雑誌拾い読み)「魚類アレルゲンの性状と低アレルゲン化」

2017年07月02日 13時46分34秒 | 食物アレルギー
日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会誌 13-1,2015
板垣康治(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科)

■ 赤身魚と白身魚の違い
魚肉中に含まれる色素であるミオグロビンの含有量により赤身魚と白身魚に大別される。ちなみにサケ肉の色素はエサの甲殻類に含まれるアスタキサンチンに由来するものであり、実際にサケをアスタキサンチンを含まない配合飼料で完全養殖すると魚肉は白くなるので、サケは白身魚に分類される。

■ 魚類の主要アレルゲンはパルブアルブミンという水様性タンパク質である。
パルブアルブミンは耐熱性が高く、基本的に生の魚でも加熱調理したものでもアレルゲン性は変わらない。
魚種ごとにパルブアルブミンを指標としてアレルゲン性を調べると、軟骨魚類に属するヨシキリザメ、マスカベ(ヱイの一種)は極めてアレルゲン性が低いことが明らかになった。

■ パルブアルブミンの低アレルゲン化
伝統的な水産発酵食品である「へしこ」や「しょっつる」などは、微生物が産生するタンパク質分解酵素の作用により魚肉中のタンパク質が低分子化され、このときパルブアルブミンも同時に分解されてアレルゲン性が低下する。
缶詰やレトルト食品などのように魚肉を高圧下で高温処理することにより、通常の加熱では変化しないパルブアルブミンであっても、アレルゲン性が低下する。
★ 「へしこ」・・・糠(ぬか)漬け。サバなどが原料として使用される。福井県の名産品。
★ 「しょっつる」・・・魚醬油。ハタハタなどを減量とする。秋田県の名産品。

■ 「かまぼこ」と「かつお節」は魚アレルギー患者の90%が摂取可能
かまぼこは、魚のすり身を原料として製造される。すり身の製造工程の中で、血液や皮などを除去する目的で「水さらし」という操作が行われる。水さらしによって、水様性タンパク質であるパルブアルブミンも、その大部分が溶出する(実験では5回水さらしをするとほとんど検出されなくなった)。


(医学雑誌拾い読み)「学校・保育所における問題点と対応」

2017年07月02日 12時41分18秒 | 食物アレルギー
日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会誌 13-1,2015
長谷川実穂、佐藤さくら(相模原病院臨床研究センター)

■ 乳幼児期に発症する食物アレルギーでは鶏卵・牛乳・小麦が多く、3歳までに50%、6歳までに90%が耐性化する。

■ 給食管理は安全性の確保が最優先される。
学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」(日本学校保健会/文部科学省、2008年)
保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」「同Q&A」(厚生労働省、2011年)
では、保育所や学校生活での食物アレルギー対応は、原因食物の完全除去か、制限なく解除するか、どちらか二分化して対応するよう指針が示されている。

■ 保育所と学校の「生活管理指導表」の違い
保育所の書式では、学校の管理指導表の“診断根拠”に該当する欄が“除去根拠”という名称になり“④未摂取”の項目が追加されている。

■ エピペン所有者情報はあらかじめ地域の救急隊と共有されている。

<参考>
・「学校における食物アレルギー給食対応指針」(文部科学省、2015年)
・「アレルギー疾患対応資料(DVD)映像資料及び研修資料

(医学雑誌拾い読み)「乳児期の食物アレルギー〜不足しがちな栄養素〜」

2017年07月02日 11時09分33秒 | 食物アレルギー
日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会誌 12-3:321-326, 2014
上野佳代子(国立病院機構大牟田病院栄養管理室)

■ 鶏卵アレルギー
・主要栄養素はタンパク質。
・代替食品として、肉類、魚類、大豆製品などのタンパク質源で補充すれば栄養面での問題は生じにくい。

■ 魚アレルギー
・主要栄養素はタンパク質とビタミンD、カルシウム。
・代替タンパク質として、肉類、鶏卵、大豆など。
・ビタミンDはキノコ類に多く含まれている(干しシイタケがお勧め)。鶏卵、乳製品にも含まれている。牛乳アレルギー用ミルクも可。
・大豆製品、野菜、果物はビタミンD含有量がゼロ。

■ 牛乳アレルギー
・主要栄養素はタンパク質とカルシウム。
・カルシウム補充用代替食品として、小魚、海藻類、青菜など。牛乳アレルギー用ミルクも可。乳児期以降ではカルシウムを強化した豆乳やウインナーなども利用可能。

★ 牛乳アレルギー用ミルクの問題点
・特有なアミノ酸臭があり、味覚が発達してから試みてもうまく行かないことがある。離乳食に使う場合は生後5-6ヶ月頃からはじめると継続しやすい。さらに、牛乳アレルギー用ミルクは加熱することで苦味が増すため、煮込まないようにする、火を止めてから加えるなどの工夫が必要である。
牛乳アレルギー用ミルク単独の長期使用によるビオチンやカルニチン欠乏日本小児アレルギー学会から注意喚起されている。ビオチン欠乏症状:皮膚炎/脱毛、体重増加不良。カルニチン欠乏症状:低血糖、嘔吐、肝機能異常。ビオチンを含む食材:レバーや卵黄に多い、他に米や一部の肉、緑黄色野菜。カルニチンを含む食材:ヤギ肉やヒツジ肉に多い、ほかに牛肉や牛乳、マグロやサケ、ブロッコリーやトマトなど。

<参考>
・「牛乳アレルゲン除去腸性粉乳によるビオチン欠乏症例の経験」(小児保健研究、2014)
・「特殊ミルク・経腸栄養剤使用時のビタミン・微量元素欠乏」(ラジオNIKKEI、2013)

■ 小麦アレルギー
・主要栄養素は炭水化物。
・代替食品はコメ。
・パン粉はパン用米粉、うどんやスパゲティはビーフンやフォー(ベトナム料理で使用される平打ちの米麺、煮ると柔らかくなるため離乳食としても利用しやすい)、雑穀麺で代替可能。
※ パン用の米粉には、食感をよくするために小麦タンパクのグルテンが添加されているものが多いため要注意。

伊藤浩明先生の講演を聴いてきました。

2017年06月23日 07時58分32秒 | 食物アレルギー
 昨日6/22夜、前橋にて。
 テーマは「食物アレルギー診療ガイドライン2016」の解説と、先日発表されて話題になっている「卵アレルギー予防に関する日本小児アレルギー学会からの提言」の説明でした。

 ひと昔前までは、食物アレルギーの治療方針は「除去」と「症状出現寺の対症療法」という消極的なものしかありませんでしたが、経口免疫療法の登場でガラッと変わりました。
 「食べない」方針から「食べて治す」方針へ180°転換したのです。

 しかし、アレルゲンを食べれば症状が出るのは当たり前、重症者にとっては命取りになる事がありますので、あくまでも専門医師の管理下に行うことが原則です。
 ただし、軽症者(食べても一部の皮膚症状だけ)は外来での負荷試験、さらに軽症者は自宅での食事指導でもOK。
 伊藤先生は、この食事指導法を詳しく解説してくれて、「小児科開業医でどこまでできるか」を模索している私にとってタイムリーな内容でした。

 一番印象に残った言葉;
「軽症で少し(アレルゲン2g相当)食べても無症状の患者さんには、自宅で同じ量を5〜10回食べていただき、大丈夫なら、負荷量を10〜20%増量してもらう、これを粘り強く反復して食べられる量をゆっくり増やしていく」

 それから、アレルゲン量の推定は、牛乳と小麦は含まれるタンパク量で単純に計算できるけど、卵は加熱方法・調理法で変化するので混乱していると指摘されました。
 確かにその通りで、アレルゲン性が低下するのは喜ばしいのですが、食事指導が複雑になってしまいます。
 そして調理法によりアレルゲン量が変化すると最初に指摘したのは伊藤節子先生です。
 
 この点に関して、伊藤(浩明)先生は鋭いことを指摘しました。
 伊藤節子先生が使用したのは微量検出用の検査方法であり、濃度の高いものを測定する際には誤差が大きくなり適さない、また、少なくなったアレルゲン量は加熱により不溶化して沈殿しているだけであり、水溶液のみを検体とする測定系には反映されないので、伊藤節子先生のデータには疑問が残る。
 なるほど。

 次に卵アレルギー予防の提言に関して。

 これはあくまでも医師向けの提言であり、マスコミが一般向けとして扱っている現状に違和感がある。
 予防対象も「アトピー性皮膚炎乳児」のみであり、健康乳児は対象に入っていない。

 とのこと。

 以上とは別に、ふだんから疑問に思っていることを、群馬大学小児科教授の荒川浩一先生に聞いてきました。

Q.1)食物アレルギー患者がアレルゲンを食べたときに、皮膚症状の他に「喉の違和感」を訴えることがあるが、この症状の取り扱いは「皮膚粘膜症状」「消化器症状」「呼吸器症状」のどれが適切か?

A.1)基本的にケースバイケースであるが、私は「皮膚粘膜症状」に含めることが多い。

Q.2)アレルゲン除去の解除過程で、食べても無症状だが触ると症状が出る「接触じんま疹」を時々観察するが、これは除去解除の障害となるか?

A.2)障害と考えない。


ピーナッツアレルギーでも他のナッツ類は食べられる?

2017年04月10日 13時01分08秒 | 食物アレルギー
 久しぶりのワクチンネタを離れて、アレルギー関連のニュース紹介です(^^;)。
 「ピーナッツは植物学的分類では豆でありナッツではない」という知識はアレルギー専門医の中では有名ですが、一般の方々は混同しがちです。
 ただし、私が調べた範囲では次のような事実もあります;

・ピーナッツアレルギーの人が他の「ナッツ類」に反応する確率は20〜40%と多く、しかし分類上近縁の大豆などの「豆類」に反応するのは1%のみで、誘発される症状も軽いと報告されています。
・実際にピーナッツで症状が出る子どもでも、他のナッツ類でも症状が出るとは限りません。ナッツの種類ごとに一つ一つ検査、あるいは経口負荷試験をして食べられるかどうかを確認する必要があります。

■ ピーナッツアレルギーでも他のナッツ類は食べられる?
2017/04/10:HealthDay News、ケアネット
 1種類のナッツ類にアレルギーをもつ人でも、必ずしも他のナッツ類を除去すべきとは限らないことが、新たな研究で判明した。1種類のナッツ類にアレルギーをもつ人の半数以上は、他のナッツ類にアレルギー反応を示さなかったという。
 今回検討されたのは、アーモンド、ブラジルナッツ、ピスタチオ、カシューナッツ、クルミ、ヘーゼルナッツ。興味深い点として、ピーナッツアレルギーの人では、これらのナッツ類にアレルギーのある人はほとんどいないことも判明した。ピーナッツは実はマメ科で、ナッツ類(tree nuts)ではない
 研究筆頭著者である米フェニックスのアレルギー専門医Christopher Couch氏は、「一度も食べたことのない食べ物の場合はとくに、皮膚プリック検査や血液検査が陽性になっただけではアレルギーとは断言できない」と説明する。その代わりに、疑わしい食べ物を数時間かけて徐々に量を増やしながら摂取し、専門医がアレルギー反応を評価する食物経口負荷試験を受けるべきだとしている。なお、同氏は研究当時、米ミシガン大学医学部フェローであった。
 研究では、1種類のナッツ類にアレルギーをもつ患者100人強の医療記録を検討し、他のナッツ類に対するアレルギー反応を調べた。被験者は皮膚プリック検査または血液検査(特異的IgE検査)および食物経口負荷試験を受けた。
 その結果、皮膚プリック検査または血液検査では他のナッツ類に感作性を示したにもかかわらず、食物経口負荷試験ではアレルギー反応が認められなかった被験者の割合は、それぞれの検査で半数以上に上っていた。
 Couch氏は、「皮膚プリック検査や血液検査では想定以上に偽陽性が出やすいことが分かった。患者のアレルゲンや除去食の必要性を明らかにしたい場合、食物経口負荷試験が最も客観的な検査である」と話している。この研究結果は、「Annals of Allergy, Asthma and Immunology」オンライン版に3月27日掲載された。

<原著論文>
・Couch C, et al. Ann Allergy Asthma Immunol. 2017 Mar 22.