小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「親と子の食物アレルギー」(伊藤節子著)

2012年10月24日 23時10分37秒 | 食物アレルギー
講談社現代新書、2012年発行。

著者の伊藤節子先生は小児アレルギー学会の重鎮で、その臨床・研究への真摯な姿勢から尊敬を集める先生です。

多くの怪しい情報に振り回されがちな食物アレルギーについての、正しい知識を得ることができる本です。
食物アレルギーの現況について学会レベルの内容を扱っているにもかかわらず、わかりやすく解説しています。
アレルギー専門医の端くれである私にも参考になるところがたくさんあり、日々の診療で抱く漠然とした疑問が解決して頭の中がスッキリ整理されました。
例えば・・・

・乳児期のアトピー性皮膚炎がステロイド軟膏でよくなってもやめると悪化するのはなぜか。
・ペットが乳児期のアトピー性皮膚炎へ及ぼす影響について。
・食物アレルギーのコントロールが悪い児は将来喘息になるリスクが高い。
等々。

また「除去食中に何を食べたらよいか」という項目が充実しているのが本書の大きな特徴です。
「調理・料理」についての解説は女性ならではで、類書の中で群を抜いていると思います。
同じアレルゲンでも調理法や一緒に調理・加工する食材によりアレルゲン性の変化が異なる事実が確認されたことは、伊藤先生の詳細な研究の成果です。
「○○と○○を除去してください」と医師から言われて途方に暮れるお母さんは、是非お読みください。

一般読者向けにコンパクトにまとめられた新書ですが、臨床現場の医師や、食物アレルギー児が在籍し給食メニューで苦労している保育園の栄養士さんにもお勧めできる良書だと思います。

※ より専門的な内容は、ほぼ同時期に発行された下記書籍に詳しく記載されています。
抗原量に基づいて「食べること」を目指す乳幼児の食物アレルギー(診断と治療社、2012年9月発行)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「学校に行けない/行かない/... | トップ | 「リスク」の食べ方(岩田健... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

食物アレルギー」カテゴリの最新記事