乳児期発症の食物アレルギー予防に関しては「避けるより食べさせる」風潮がトレンドです。
しかし食物アレルギーを「食べて治す」という「経口免疫療法」は一時期学会でブームと言えるほど勢いがあったのですが、数年前に「まだ研究レベルに留め、一般診療として推奨されない」と一歩後退して現在に至っています。
その理由は2つ;
①治療中に症状が必発し、ときにアナフィラキシーショック
②好酸球性消化器疾患を発症するリスクがある
です。
②のこ好酸球性消化器疾患を扱った記事が目にとまりましたので引用・抜粋します;
■ 原因特定難しい食物アレルギー、「6種抗原除去食療法」で改善
(2017年10月18日 読売新聞・佐藤光展)
近畿地方の30歳代の男性会社員は、3年前からひどい腹痛や下痢が続き、「好酸球性消化管疾患」と診断された。食物が原因で消化管に炎症が起こるアレルギー性の病気で、男性はステロイドを飲むと回復するが、量を減らすと再発した。副作用が心配で昨年、島根大学病院(出雲市)に入院し、原因食品を見つけるプログラムを受けた。原因は卵と分かり、これを抜く食事で元気に仕事ができるようになった。
本来は寄生虫と戦う好酸球、持て余した力を発散し...
食物アレルギーは、本来は体を守る免疫機能が、特定の食品成分を敵と誤認して攻撃し、その影響が消化管などに及ぶことで起こる。通常は食後1時間以内に腹痛などの症状が表れるので、原因を特定しやすい。特定の食品成分を含む試薬を皮膚に少量ずつつけて反応を見る検査や、血液中のIgEという免疫に関わる物質の量を見る検査もある。
ところが食道や胃、小腸などに炎症が起こる好酸球性消化管疾患は、食後数日してから腹痛や吐き気、下痢、血便などの症状が表れることが多い。皮膚に試薬をつける検査にも反応せず、原因の特定は困難だった。
この病気を引き起こす好酸球は白血球の一種で、本来は体に侵入した寄生虫などと戦うために存在する。ところが衛生環境が劇的に良くなり、寄生虫が体内からいなくなると、好酸球の仕事が激減してしまった。同病院第2内科教授の木下芳一さんは「好酸球性消化管疾患は、暇になった好酸球が、持て余した力を発散しようとして起こっているように思える」と語る。
これまでは希少難病とされてきたが、近年、患者が次々と見つかっている。木下さんは「島根県内の検診センターで内視鏡検査を行うと、食道に軽度の炎症が起こるタイプは、約500人に1人の割合で見つかるようになった」と語る。
この病気は血液検査では分からない。内視鏡検査で炎症を確認し、その部分から少量採取した細胞を顕微鏡で見て、好酸球の数を確認する検査を行う。
食道に炎症がとどまるタイプは胃酸を減らす薬で良くなる場合がある。胃や腸に炎症が起こるタイプも、ステロイドを使うと症状は治まるが、全身に回るステロイドを長期使用すると、糖尿病や骨粗しょう症、うつ状態などを招きやすい。
6種類の食品から原因見つけ出す
そこで同病院などの研究チームが始めたのが「6種抗原除去食療法」だ。症状を引き起こすと考えられる卵、乳、小麦、大豆、魚介類、ナッツの6種類の中から原因を見つけ出す。
まず、6種類の食品を全部抜いた食事を4週間から6週間続けて、症状を改善させる。その後、6種類のうち1種類を加えて2、3週間様子を見る。変化がなければさらに1種類加える。症状が出たら内視鏡検査で炎症を確認し、最後に加えた1種類を抜く。症状が落ち着けば別の1種類を加えて再び様子を見る。
同病院は入院治療で行い、原因を特定できた患者は、除去食メニューを生活に取り入れてステロイドをやめることができた。だが、6種類の食品を試すには半年近い入院が必要になる。
同病院管理栄養士の平井順子さんは「将来は外来でも行えるように、家で楽に作れる除去食メニューを増やしたい」と話している。
しかし食物アレルギーを「食べて治す」という「経口免疫療法」は一時期学会でブームと言えるほど勢いがあったのですが、数年前に「まだ研究レベルに留め、一般診療として推奨されない」と一歩後退して現在に至っています。
その理由は2つ;
①治療中に症状が必発し、ときにアナフィラキシーショック
②好酸球性消化器疾患を発症するリスクがある
です。
②のこ好酸球性消化器疾患を扱った記事が目にとまりましたので引用・抜粋します;
■ 原因特定難しい食物アレルギー、「6種抗原除去食療法」で改善
(2017年10月18日 読売新聞・佐藤光展)
近畿地方の30歳代の男性会社員は、3年前からひどい腹痛や下痢が続き、「好酸球性消化管疾患」と診断された。食物が原因で消化管に炎症が起こるアレルギー性の病気で、男性はステロイドを飲むと回復するが、量を減らすと再発した。副作用が心配で昨年、島根大学病院(出雲市)に入院し、原因食品を見つけるプログラムを受けた。原因は卵と分かり、これを抜く食事で元気に仕事ができるようになった。
本来は寄生虫と戦う好酸球、持て余した力を発散し...
食物アレルギーは、本来は体を守る免疫機能が、特定の食品成分を敵と誤認して攻撃し、その影響が消化管などに及ぶことで起こる。通常は食後1時間以内に腹痛などの症状が表れるので、原因を特定しやすい。特定の食品成分を含む試薬を皮膚に少量ずつつけて反応を見る検査や、血液中のIgEという免疫に関わる物質の量を見る検査もある。
ところが食道や胃、小腸などに炎症が起こる好酸球性消化管疾患は、食後数日してから腹痛や吐き気、下痢、血便などの症状が表れることが多い。皮膚に試薬をつける検査にも反応せず、原因の特定は困難だった。
この病気を引き起こす好酸球は白血球の一種で、本来は体に侵入した寄生虫などと戦うために存在する。ところが衛生環境が劇的に良くなり、寄生虫が体内からいなくなると、好酸球の仕事が激減してしまった。同病院第2内科教授の木下芳一さんは「好酸球性消化管疾患は、暇になった好酸球が、持て余した力を発散しようとして起こっているように思える」と語る。
これまでは希少難病とされてきたが、近年、患者が次々と見つかっている。木下さんは「島根県内の検診センターで内視鏡検査を行うと、食道に軽度の炎症が起こるタイプは、約500人に1人の割合で見つかるようになった」と語る。
この病気は血液検査では分からない。内視鏡検査で炎症を確認し、その部分から少量採取した細胞を顕微鏡で見て、好酸球の数を確認する検査を行う。
食道に炎症がとどまるタイプは胃酸を減らす薬で良くなる場合がある。胃や腸に炎症が起こるタイプも、ステロイドを使うと症状は治まるが、全身に回るステロイドを長期使用すると、糖尿病や骨粗しょう症、うつ状態などを招きやすい。
6種類の食品から原因見つけ出す
そこで同病院などの研究チームが始めたのが「6種抗原除去食療法」だ。症状を引き起こすと考えられる卵、乳、小麦、大豆、魚介類、ナッツの6種類の中から原因を見つけ出す。
まず、6種類の食品を全部抜いた食事を4週間から6週間続けて、症状を改善させる。その後、6種類のうち1種類を加えて2、3週間様子を見る。変化がなければさらに1種類加える。症状が出たら内視鏡検査で炎症を確認し、最後に加えた1種類を抜く。症状が落ち着けば別の1種類を加えて再び様子を見る。
同病院は入院治療で行い、原因を特定できた患者は、除去食メニューを生活に取り入れてステロイドをやめることができた。だが、6種類の食品を試すには半年近い入院が必要になる。
同病院管理栄養士の平井順子さんは「将来は外来でも行えるように、家で楽に作れる除去食メニューを増やしたい」と話している。