日々のできごと。生物準備室より

理科教育、生物教育に関して考えたことをぼちぼち更新。たまに授業実践報告をします。

子どもの学びを探る(2)

2014-12-23 11:44:51 | 最近読んだ本

 

  子どもの学びを探る―知の多様な表現を基底にした教室をめざして
クリエーター情報なし

東洋館出版社

概念地図法(Concept Map)

 トピックの構造をいかに理解しているか、個々の事実をどのように相互に関連付けているかに焦点を当てる。

論文体テストは時間を必要とする(生徒が仕上げる&教師が読む・評価する)だけでなく、生徒のもつ一般的な語彙力、文体、考え方の表現力と教師の判断に影響される。その点、概念地図法は生徒が認識しているトピック構造やリンクのあり方に焦点を当てているため、迅速・直接的・少ない語彙数で作成できる。

得点化は教師自身が最初に作成した概念地図に依存。




 

POE(予測―観察―説明法)法
 演示実験でよく使用されている?タイプ。実行できる限り直接的に結果をはっきり見せる。ただし、POE法を繰り返すと生徒を「予想屋」にしてしまう。全員に予測させること、予想の理由と観察結果との矛盾を調和させるようにトライさせること、考えられる限り考えさせるように教師が生徒を励ますことが重要。POE法を使用するのにおススメの内容は、状況の理解に焦点をあてたもの。さらに、特定の概念に焦点を当てていりもの。

得点化は生徒の持つ信念と推論の質の両方で評価。観察の得点化は不適切。



 

事例面接法・事象面接法
ある特定の概念(判断ではなく現象を説明するもの)について生徒の実態を面接により詳しく調べる。

15~30分の時間を必要とし、時間と場所の確保が難しい。テストとして生徒の評価は難しいが、クラス指導ができているかの調査が目的なら適している。また、面接法で明らかされた一般的に保持された概念を、オルタナティブ(ミスコンセプションとは区別)な考え方として大規模に実施されるテストに盛り込めば、面接法のもつ鋭敏さを維持させることが可能である。

 

概念についての面接法

概念に対する知識を引き出すためにデザインされた会話。事実に関する知識に限定せず、信念や意見、ストリング、イメージ、エピソードに加えて、知的スキルや運動スキルにまで拡張できる。トランスクリプト(面接記録)をもとに、命題やイメージ等どれだけ引き出されたか分類・カウントし、その正確さを分析する。得点化は可能。



 描画法
その名の通り、描画させることにより生徒の理解の質を教師が知る。「言葉—図」の尺度や「閉鎖的—開放的」の尺度の極端に位置するため、他の調査手続きでは分からない理解の質(例:ステレオタイプ)を明らかにすることができる。ただ、絵より推論する(解釈する)時、判断できないことがある。そのときはこのプローブに限らず面接を一緒に行う必要がある。この手法はそもそも開放的であるため得点化するための手続き(採点基準)が難しいが、不可能ではない。

 

 運勢ライン法

学習者の物語の理解を詳しく探らせるために、学習者に各場面での一つかそれ以上を見積もらせてグラフ化させたもの。回答者の記述した運命を場面ごとに正しいかどうかチェックすることにより得点化が可能。生徒に物事の関連を見いださせたり、価値判断を促すなどのメリットがある反面、手法そのものを習得するのに時間がかかったり、時系列的な展開のみに適している等、デメリットも挙げられている。

 

関連図法
 対象物の集合や事象の集合、あるいは抽象概念の集合間の重なりの様子を示すために、閉じられた関連図(=ベン図)を描く方法。関連図は物の集合を表す用語に対して、人々が与える意味を表示している。主なターゲットは概念の理解であるが、知識の一要素についての理解を調査することもできる。得点化は可能。

 

単語連想法
 教師が与えるキーワードに対して連想する言葉をできるだけ沢山、書き込んで行く方法。途中までは概念地図法と同じように概念間の結びつきパターンに焦点があてられるが、単語連想法は管理的であるため生徒によっては面白みがない。得点化は可能(数式を読み飛ばした・・・)。

 

問いの生成法

授業を成功に導くような生徒の問いを促進するために課題を構造化し焦点化する方法。

 留意すること


1)ストラテジーは単に記憶から呼び戻した問いではなく、教えられた考え方を応用発展させた理解を表しているような問いを十分に認められるように開かれていなければならない。


2)思考的な問いを生徒が生成するときのみ、その手法が本当の価値を発揮する。

 


5つのストラテジー


<1>特定な方法で生徒に問いを始めさせる


<2>質問のもとになる刺激を与える


<3>答えの提供と問いの要求


<4>困惑しているポイントについての問いを要求する


<5>一連の学習に対する到達度を見る問いを用意する。


子どもの学びを探る(1)

2014-12-05 22:59:14 | 最近読んだ本
  子どもの学びを探る―知の多様な表現を基底にした教室をめざして
クリエーター情報なし

東洋館出版社

「プローブ(probe)」とは、理解に対する評価法、調査法、探索法。「理解」は多様であり、プローブは理解を捉えるための道具、子ども側からみれば、自分を表現するための道具である。教師自身が、子どもたちから学ぶ能動的な学び手となること。そのことから子どもの能動的な学びが引き出される。

  学校で用いられる評価方法は、1つか2つの単語や数字、わずかな選択肢からの選択、さまざまな長さの論述文に偏っている。限定的なテストは限られた理解を助長する。そこで、質の高い学習を促進するための手段として、理解についての多様なプローブの使用が提案されている。新しいプローブの使用者、生徒ともに技能が必要であるが、手続きに慣れてしまえば、その手法が多様性と拡張性の探索に挑むための生産力をもつことに気づく。教師が使うプローブが多ければ多いほど、生徒の理解の進化を健全な形で認めるようになり、生徒は授業をより興味深いものだと考えるようになる。

 

理解の本質

 

<理解の対象>

(1)概念

(2)学問全体

(3)知識を構成する一つの要素

(4)幅広いコミュニケーション

(5)状況

(6)人々についての理解

 

 

(1)概念の理解

 概念を理解するためには基となる情報(知識)が必要であり、その一つが命題(言語的な情報の一つの形式)。命題は事実・信念であり、ストリングとは一致しない。(命題は意味が固定されているが表現は変形可能、ストリングは固定されている。)命題を補足するものとしてイメージやエピソード、知的スキル(何種類かの課題をこなす能力)、ストリング、運動スキル(運動技能)、に加えて認知的方略が知識要素として挙げられる。追加して認知的方略が命題を理解するための構成要素となる。認知的方略とは思考と学習の中で使用されるスキル。(ex:課題への注意力保持、演繹と帰納、情報の弁別等)。認知的方略は他の構成要素と違って、対象に固有ではない。概念の理解は全か無か(理解している・していない)の状態で二分されるわけではなく、連続的。理解の構成概念は多次元である。

 

(2)学問全体の理解

 学問の理解の本質になるような中核的な知識は存在しない。

→適切性についての判定は主観的である。

 

(3)知識を構成する一つの要素(知識要素)

 知識要素が十分でないと命題は理解できない。しかし、どの知識要素が特定の命題の構成要素として肝心なのかも指摘できない。

 →それも主観的である。

 知識要素の一つである知的スキルとはアルゴリズム的知識、ルール使用の知識を指す。たとえば、数学の授業において、手続きに含まれる概念と操作ができれば、単語の意味が分からなくても実行可能になるという状態。ルールの理解の中核は、手続きを説明することで、この手続きの説明自体が命題となり得る。

→説明は知的スキルを理解するための鍵であり、命題や知識スキルを理解するための鍵でもある。

 

(4)幅広いコミュニケーション

 ①概念や②学問全体の理解について語る場合は、知識の状態に言及している。知識の状態とは、対象になる知識にリンクする情報のパターン、あるいは知識を構成している情報のパターンのことである。詩歌やスピーチ、演劇や絵画といった幅広いコミュニケーションについて語る場合には、状態を理解することよりも、過程について言及している。

 幅広いコミュニケーションはの理解のレベルは2つあり、各部分の意味、第二に推定すべき全体の意味がある。構成部分を理解できない場合や、記憶の中にある要素とつながらない場合、全体の意味を飲む込むことはできない。だからと言って満足のいく同定が可能である限り、関係づけは必ずしも完全なものでなくてもよい。

(分からない言葉をイメージに翻訳すればよい。)詩歌の真髄が言葉を用いてイメージを喚起することのように。コミュニケーションは必ずしも言語的である必要はなく、主題・中心的メッセージは何か、その構成のっ背後にはどんな目的が潜んでいるのか、といった問いへの回答が理解というものを具体的にする。

 

(5)状況の把握

 生活する上で、注意すべき情報の選択と棄却を常に行っている。状況を意味づけることの中に含まれる選択・説明・予測の過程が理解の対象である。この3点に焦点を当てたプローブはあまり学校では使用されない。

 

(6)人々についての理解

 一人の人を理解するということは、一つの状況を理解することである。対象者の行動を予想、自分自身で説明の適切性を判定、対象となった人に評価をさせるといったことが可能である。

 

<意味の構成>

 理解とは、その対象について人が所有する知識要素の数の関数として記述できる。

本質的な中核部分は、学習者は自分が獲得する知識について自分自身の意味を構成する。理解とは新しい知識要素と現在の知識要素の間の関係づけのパターンとリンクが進むにつれて発達する。しばしばパターンの再体制化が起こる。

 意味の構成が起こる三つの様式は次の通りである。

1)知識について内省することで新しいリンクを知覚、新しい命題や演繹、新しいイメージを創造する。

2)偶発的学習をとおして生起する。

3)意味が教師の指導の下に構成される。

新たな視界は個体固有のものではなく、個々の心は異なった受容体を持っている。(エピソードやイメージ、その他知識要素のパターンが異なっている。

 

<評価と得点化>

評価を2つに分けると次のようになる。

1)学習の支援を意図した診断としての評価(形成的評価)

2)学習の質を総括して資格審査や進級審査としての評価(総括的評価)

限定的な様式のテストは限定的な学習方略を促進、理解を限定的にしてしまう。理解は1つの得点で全体像を十分に示すことができない。