CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ

ニューロリハビリテーションの臨床応用を実践するリハビリ科専門医・道免和久の日記【CRASEED Rehablog】

臨床研修制度は失敗したのか?

2006-01-05 12:58:33 | リハビリ
兵庫医大リハビリ科では、当初から、2年間の研修医の間に、循環器内科、救命救急、整形外科、神経内科等をローテーションしていましたので、3年目にはもう1人前の医師になっていました。もちろん、1人で受持ち患者さんを任せることができました。

今回の臨床研修制度は、もともと、スーパーローテーション的にプライマリケアを身につけるような教育システムをとっていた医局にとっては、大変迷惑な話です。それでも、2年間の研修を終了した人達が、厚生労働省の考えている通りに、プライマリケアができるようになっていれば問題ありません。

しかし、結果は異なるようです。

いくつかの研修病院にいる臨床研修医からの情報から、以下のような問題点が浮かび上がってきました。

1)今の臨床研修制度は、ポリクリ(学生の臨床実習)の延長のように、手技などが制限されすぎている。(つまり、3年目に入った時点では何もできない)
2)過重労働批判は正しいにしても、9時~5時の勤務体制では、何も学べない。
3)一人前の医師に育てようという先輩と2年間マンツーマンという体制がなくなったので、どの科を回ってもお客さん扱いで、雑談の中で医学・医療の考え方を盗んだり、しっかり修得するような雰囲気がなくなった。
4)良い意味でのオーベンとネーベンの関係もなくなったので、仕事の後に飲みに行ったり、休憩中に教科書には載っていないTIPSを学ぶ機会もない。
5)1年目から臓器別のマイナー科に入局する時代にいた、心臓マッサージもできない医師がいなくなったかわりに、2年目の後半には10年目の先輩よりも仕事ができるようなスーパー研修医もいなくなった。つまりシステムが底辺に合わせられて画一化する中で、優秀な医師が伸びるチャンスが消えた。
6)所得の保証がなされたことは、1年目くらいまでは良かったが、昔なら一人前の医師として立派に働ける2年目の後半の時期にも、アルバイトが禁止されているため、収入は減少している。ハングリーさもない。
7)昔の3年目、と、今年の3年目の医師の実力を比較すれば、平均化はされているが、3年目から新たに覚えることが数多くある。つまり、標準偏差が小さくなり、平均点は低下した。特に手技的なことはこれから。
8)以上まとめると、医学部が6年制から、8年制になったようなもの。今の3年目は、昔の研修医、のような扱いにならないかと危惧される。3年目の過重労働、薄給、過労死・・・、そんな心配がある。

全部が生の声ではありませんが、さほどはずれてはいないと思います。とりあえず一人前の医師になるのに、大学入学後10年かかり、専門医は更に先の先、という状況です。

若い優秀な医師をどうやって育ててるべきか、私の答えは、教える側の【教育に対する評価】を高めることです。

大学では教育に対する評価がやっと高くなってきたところです。経営が大変な民間の病院でも、研修医を受け入れるからには、それを指導・教育している医師に対する評価や報酬を高めて欲しいと思います。

厚生労働省は、現行の研修システムの再評価をしっかりとお願いしたいと思います。


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