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United Minds (Strikes Back)

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『龍馬伝』第五回~第九回感想 〔by ラウド〕

2010-03-03 01:05:53 | History
あんまりためこみすぎると、先月の初めの放送の内容などはかなり記憶がおぼつかない。
最低でも2~3回単位で書いていかないとまずいようだ。



第五回「黒船と剣」

いよいよ大きく時代が動き始める、黒船来航。
得体の知れない何者かが近づいている緊張感。今までの自分の中にある価値観を引っ繰り返される衝撃。
太平の眠りを覚ます蒸気船…とはよく言ったものだ。日本の国の中でしか通用しない常識が、汽笛と蒸気エンジンの轟音と共に崩れ去っていく。
あそこに自分がいたら、果たして…と、妙に感情移入して観ていた。

そういう意味で、龍馬と桂をギリギリまで黒船に接近させ、黒船の大きさと対比させたのは非常に説得力があって、いい演出だったと思う。
そりゃあんなもの間近で見てしまったら、夢でもうなされようというもの。

圧倒的な技術と文化の差。龍馬は剣を続けるべきか悩み始める。
しかし桂を含め、この時点でここまで彼が開明的な考え方をしたかどうかに関してはちょっと疑問が残るなぁ。
龍馬が天才だというのは認めるけど、まだまだ攘夷という考えは根強くあったんじゃないかと思う。
いや、そうじゃないと勝海舟と邂逅した時の豹変振りが楽しめないというか…。


第六回「松蔭はどこだ?」

とにかく生瀬勝久氏の吉田松陰。それに尽きる回。
何と熱く、何と聡明な松蔭。素晴らしい。本当に最高の演技、脚本だ。
吉田松陰という人は、今までの個人的なイメージでいうと、どうにも暴走気味の人というイメージがあった。あまりに性急で、過度に実践主義すぎるというか…。

しかし今回の松蔭はただただ熱い。自分が今何をなすべきか、ただそれに向かい邁進する衝動に満ち溢れている。
史実と違う?そんなものどうでもいいのだ。この松蔭ならば、松下村塾の門下生にあそこまで慕われるのもさもありなん、そう思わせるに十分な、とても魅力的な人間だった。

「黒船に乗り込んでアメリカに行くんは僕のやるべきことであって、君じゃない!君は 何者じゃ。何のためにこの天の下におる!」
「考えるな、己の心を見ろ!そこにはもう答えがあるはずじゃ!!」

ヨーダの「やってみる、ではない。やるのだ。試しなどいらん」や、ブルース・リーの「考えるな、感じろ」にも並ぶ名台詞ではないか。
こんな台詞で一々熱くなるのがバカなら、僕はそれで結構。僕はこういう男に惚れるのだから。
正直、生瀬松蔭のインパクトがあまりに強すぎて、このシーンの事以外は何も覚えていないのだった…。


第七回「遥かなるヌーヨーカ」

リリー・フランキーの河田小竜が登場。力の抜けきった演技がなかなかいい。
目が血走った武市や、ギラギラした弥太郎を鼻で笑う感じが見ていておかしいのだ。
特に武市の考えなど、米国の事情に明るい彼にとっては一笑に付さずにはいられないものだっただろう。

書き忘れたが、既に武市は攘夷に向け、後には退けない道を既に走り始めている。
復権しようとしている後の土佐藩参政、吉田東洋とのやり取りは見ごたえがあった。
東洋も武市の才は認めているものの、だからこそ彼を試すような質問をし、それにより攘夷に凝り固まった武市の考えに呆れ、失望し、侮蔑の言葉を吐く…というのは、武市と吉田のコントラストがはっきりしていて面白い。
この時の武市の恨みが、土佐勤皇党の修羅の道に繋がっていくのだ。

リリー・フランキーの飄々とした味から、最後は坂本家の絆を強調する桂浜でのシーンへの流れ。
いつまで経っても坂本家の坊ちゃんである龍馬の、遥かなる世界への思いに意外なほどの成長を実感し、父・八平の呟く感極まった言葉。
一人で録画したものを観ていたのだが、児玉清の演技に思わず目頭を押さえてしまった。周りに誰かがいなくて良かった…。

この回で実感した。“坂本龍馬”や“幕末”、という格別の素材は抜きにしても、このドラマは面白い、と。
同じ幕末が舞台でも、『新撰組!』でこんな事を感じた事は一度も無かった。


第八回「弥太郎の涙」

タイトルどおり、弥太郎が主役の回。
ようやく念願の江戸行きを果たした弥太郎だったが、父の怪我の報を伝え聞き、急ぎに急いで土佐へ帰ることに。
ほぼ全編弥太郎のやりきれない思いが炸裂する回。
それに逐一付き合う龍馬のお人よしも、ここまで来ると凄い。
錆び付いて抜くことすらままならない弥太郎の剣が、何だか象徴的であった。もはや、奉行所への落書き用の彫刻刀と化すくらいしかなかったのも納得である。
しかしなかなか見事な落書きだったなぁ。よく夜中にあんなでかい音を立てて気付かれなかったものだ。奉行所って宿直とかいないのか?

吉田東洋に弥太郎の父が受けた暴行、それに対する奉行所の裁定の不服を直訴した二人への、東洋の台詞が強烈。
「わしは天才だからじゃ」
「わしがいかに有能か、お殿さまはわかっておられるきにのう。そんな人間は何をしてもええがじゃ!」
傲岸、不遜。これくらいの男でないと成り上がれないのだろう。世の中は常に勧善懲悪というわけにはいかないものだ。

岡田以蔵、平井収二郎と連れ立って江戸に赴く武市。三人とも最初の頃と違って笑わないし、目が据わって険がある。いよいよ思想が表情に表れ始めた。
そんな孫の行く末を知ってか知らずか、武市の寝たきりの祖母が呟く「半平太…」という台詞がしみじみと悲しい。
宮迫の演技というのは、今までは「いつも同じような感じじゃん」などと決め付けていたのだが、こういう役も出来るのかと感心した。確かに彼は演技が上手いと思う。


第九回「命の値段」

ずっと大津波・津波警報の日本列島図が右側に表示されたままの放送。大きな被害が無くて本当に良かったです。

山本琢磨という土佐藩郷士の江戸での時計横流し事件が主な内容。
この人の名前は聞いた事がなかったので、Wikipediaで調べながらテレビを観ていたのだが、何とその後越後に流れ、更に函館を目指し(前島密の勧めによるものらしい)、そこでロシア正教会の司教・ニコライへ師事、日本初の司祭となったらしい。
更に僕にとっても非常に身近な、御茶ノ水のニコライ堂の建立にも関与したということも知る(実はこの回の放送日、近くを訪れたばかり)。これで一気に親近感が湧いた。

不勉強で全く知らなかったが、この人だけでもドラマが撮れそうなほど激動の人生を送っているのであった。単なる龍馬の“いい男エピソード”を演出する為の要員ではない事に驚きを隠せない。
そう考えると、龍馬の逃亡の手助けは非常に意義があるものだったのだろう。Wikipediaによると、武市も彼を逃がすのに手を貸したらしいが…今後調べてみる価値はありそうだ。

そしてそんな話を馬論としながら観ていると、最後の「龍馬伝紀行」で取り上げられたのがタイミング良くニコライ堂。大いに我々のテンションも上がったのであった。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (yuz)
2010-03-08 00:54:27
ご無沙汰。

龍馬伝。思ってた以上に面白い!

で、山本琢磨の話てどこまで本当?
実際に龍馬は手を貸したの?

そろそろ春に向けて企画しますか?(して)

史跡めぐり。
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Unknown (ミカ)
2010-03-11 20:09:47
>>yuzさん
おひさ。中村憲剛は顎を骨折したが、あなたは大丈夫かね。

面白いねぇ。ここまでとは予想外だった。
龍馬が手を貸したのは事実らしい(武市も協力したとか?)。山本琢磨は晩年まで龍馬に感謝の言葉を述べていたみたいだよ。

気温も上がってきたし、そろそろ企画しましょうかね。ネタはいくらでもあるんだ。
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Unknown (独眼竜)
2010-03-13 21:44:56
ここでも登場です!当然ですけどね。

私は3点ほど

まず、黒船の圧倒的スケールが良かったですね。泰平の世をぶっ壊すような存在感を上手く表現していたと思います。


あと、生瀬松陰が凄すぎました。聡明な松陰は度々観てきましたが、あそこまで熱い松陰は観たことがなかったので衝撃すら感じましたね。個人的には松陰に対しては熱血漢で行動派なイメージがあったので、生瀬さんの姿に松陰を重ね合わせて観れたので大満足でした。本当に素晴らしかった!!


そして最後はやはり龍馬の成長に涙する八平ですね。泣き虫で頼りなかった龍馬が、いつの間にかスケールな男に変わっていく姿にはたのもしさを感じたでしょうし、安心感も覚えたでしょうし、変わるきっかけが江戸での修行だとすればきっと江戸へ行かせて良かったと心から感じた瞬間だったでしょう。それを児玉さんが本当に見事に演じてくれました!あのシーン以外でも一家の大黒柱らしい芯の強さと、息子に対する本当に深い愛情を上手く演じてくれました。

幕末を決して龍馬目線ではなく、俯瞰的に描いてるところが非常に良いですね。大河史に残る名作になってくれそうな予感がします。
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Unknown (ミカ)
2010-03-19 22:16:55
>>独眼竜さん
ありがとうございますw

生瀬松蔭最高ですよねぇ。あれだけで特別な大河ドラマになるのは間違いないですよ。僕も衝撃と言う他なかったです。本当に鳥肌立ちました。

八平はあまり語られる機会がないだけに、竜馬が主人公だからこそのこの視点はいいですよね。感動です。

こうなると、上川さんの登場が待ち遠しくなりますね…。
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