United Minds (Strikes Back)

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『江』ここまでの感想 〔by ラウド〕

2011-02-28 22:15:00 | History
基本的に、世間の尻馬に乗って得意げに何かを批判するのは得意ではない。
そして、何かを「好きだ」と書くのはとても簡単な事だけど、「嫌いだ」と書くのは、僕にとってはとても勇気のいる事だ。


だけど、ここまで今年の大河ドラマを観た感想は、こう書かざるを得ない。
酷いよ、このドラマ。


ひとまず、話題になっているキャストと実在の人物の年齢差に関しては置いておくとしよう。
一番の問題は、主人公である江があまりにも歴史の転換点に顔を出しすぎている点だ。
主人公だから、確かにそうかもしれない。だが、稚児ともいえる年齢の女児が、ここまで奔放な物言いをし、好き勝手な行動をしていいものなのだろうか。
はっきりいって、ファンタジーの世界である。これがライトノベルやアニメならばまだ納得できるのかもしれないが、これは公営放送が威信をかけて送る大河ドラマではなかったか?

ドラマだからそれくらいは仕方ない、という意見もあろう。だが、ドラマだろうが何であろうが、そこに織田信長や羽柴秀吉や明智光秀という名前の登場人物がいる以上、歴史上の同名人物を意識せずにいられようか。
例えドラマでも、そういった実在の武将達と江との絡み方にリアリティと説得力がなければ、そこに納得がいかないと思う人がいるのは当然ではないだろうか。
そこで独自に突き進みすぎるから、結局時代背景も、そこに生きていた人物の機微すら描けなくなる。

…これ、確か最近も似たような内容を書いた気がするなぁ。
ただ、やりすぎなのだ。主人公とはいえ、あまりにも周囲からの影響や尽力を無視しすぎなのだ。
(中略)
僕だって子供ではない、福山龍馬が目立たなければ大河ドラマとしてまずいのはわかるし、ドラマとしての完成度を重視するのは当然だと思っている。
だ が、ドラマだからこそ言いたいのだ。福山雅治氏が演じていたのは、あの歴史上に残る偉人「坂本龍馬」ではなかったか?そこに「坂本龍馬」と名の付いた登場 人物がいる限り、史実上の坂本龍馬と比較し照らし合わせてしまう、これは歴史好きでなくても止むを得ない事ではないだろうか。

『龍馬伝』感想 〔by ラウド〕

結局、この点はもうどうしようもないのかもしれない。
日向英実総局長は「子役時代が1回で終わったことや『史実と違うのではないか』との指摘もあるが、おおむね評判は良さそう」と話した。会見では「史実とあまりにも違う」との質問が出たが、日向総局長は「ドラマですからね」と苦笑いした。

「江」史実との違い指摘されるもNHKは手応え(スポーツ報知)

ドラマを創る立場の人が、この点に関して後ろめたく思っていないのならば、もうどうしようもない事だ。


単純に、脚本にも問題があると思う。
女性の持つ強さを描いていこうというのはわかるが、どうもこのドラマにおける三姉妹とお市はそれを履き違えているように思えてならない。彼女達は、ただ奔放に、身勝手に生きようとしているようにしか見えない。

秀吉を必要以上に小物に描写しようとしている点も、不満どころか不快だ。
北大路欣也の家康がどっしりと控えているところから察するに、秀吉と家康の差をはっきりと付けて持ち上げようという意図が見え見えである。

その秀吉がダダをこねている場面を早回しにしてみたりする演出や、打ち込みや歪んだギターの音を前面に押し出した音楽も個人的には全く受け付けない。


唯一評価したいのは、これまでヒールとして描かれることが多かった信長の新解釈(というか、これが最近の主流にもなりつつあるらしいが)と、豊川悦司の演技だ。彼の演じる信長は、実に堂々としていて余裕があって、大いに納得した。
本能寺の変がもう少し後なら、このドラマを楽しめる期間もわずかながら長くなったのだろうが…。



今から『坂の上の雲』が恋しくて仕方がない。
好みではなかった『篤姫』や『天地人』ですらその時間に自室にいれば観る気になったのに、今回は自主的にテレビを付けようという気にすらならない…。

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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (cloud9)
2011-03-02 03:01:24
ラウド殿、こんばんは。確かに今年の大河ドラマは今までのと比べると趣きが違いますね。時代背景が別の時代ならまだしも、よりによって誰もが知っている「織豊徳」時代ですからね。TVだからといってラウド殿のように黙って見過ごすわけにはいかない方もおられると思います。歴史物は映像化して理解が深まり楽しめる作品もあれば、そうでない場合もあるということでしょうか...
Unknown (独眼竜)
2011-03-15 23:55:08
お久しぶりです、独眼竜です。

まったくの同意見です。見ていてイラっとくることもある位今作は酷い。

ミカさんの仰るとおりただただ身勝手で、気が強い女性だらけで強さを履き違えているように感じます。脚本家のなかに「戦国時代=男性社会」というイメージがあって、それに対するアンチテーゼとして描いているのではないかとさえ感じます。

戦国時代をドラマで描く場合、女性はどちらかというと政治に使われるようなシーンが多いですが、だからといって男性社会なのではなく、男性には男性の役割が、女性には女性の役割がある時代、いわば現代とそう変わらない時代だと思います。

秀吉は確かに酷いですね。秀吉に対しては私自身明るいイメージはありますが、あれはただ単にふざけているだけだし、器量が小さいですね。江の母であるお市が相当嫌っていたという資料が多いので、描き方が汚くなるのかもしれませんが、あまりに酷い。

良い面を挙げるのはとても難しいですがトヨエツや北大路さん、大地安雄さんあたりは安心してみていられる演技ですね。さすがベテラン俳優。

というわけでかなり『やっつけ』で見てますし、途中から観る事が多いです・・・。
Unknown (名無し)
2011-09-15 03:50:15
もしかして、ラウドさんってsoccermodeでよくお見かけしたミカ・ラウドさんですか??
Unknown (ミカ)
2011-12-10 14:28:57
本当に本当に申し訳ない…

>>cloud9さん
そうでしたね…最後まで納得の行かない作品でした。秀吉役の岸谷五朗の演技が唯一の見所でした。
むしろ、今年で最後になる『坂の上の雲』を楽しみたいです。初回から期待を裏切らない出来でした。
Unknown (ミカ)
2011-12-10 14:36:45
>>独眼竜さん
そうなんですよね。むしろ日本的な女性像というのは江戸時代以降に作られたイメージが強いようですね。戦国の世では、むしろ自立し主張していたと。勿論、このドラマのような自分勝手なやり方ではなく。
僕も最終回は一応観ましたが、トヨエツ信長が討たれた後は、どんどん役がハマってきた秀吉意外に見所がありませんでした…ただし愚将として描かれる事の多い秀頼が聡明そうだったのが数少ないプラスの点だったでしょうか。

>>名無しさん
はじめまして。
はい、まさに僕がそのミカ・ラウドです。気付くのが遅すぎて申し訳ない…。
懐かしい名前ですなぁ。サカモも放り出してきてしまったようなものなので、かなり罪悪感が有ります…。

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