今から大体10年くらい前のこと。
僕は今より少しだけ馬鹿で、今よりずっと無知で、楽天主義者で、それでいて傷つきやすくて、いい加減な事を許せなかった。
今ほどひねていなくて、どこか調子っぱずれで、今よりさらに間抜けで、お調子者で、おちゃらけたことばかりしていた。
何より、純粋だった。誰に何を言われようと真っ直ぐ夢を見ていた気がする(今はちょっとだけ現実的になってしまった。あくまでちょっとだけ)。
一般的な“青春”の定義などクソクラエと思うし、僕はそれが心のありようだと信じて疑っていないから、それを振り返って語るにはあまりに早すぎると思っているのだけれど、それでも“青春時代”というものを人にわかりやすく説明するのなら、1997年から2002年あたりの思い出話をするだろう。
つまり、前にやっていたバンドの活動期間である。
その時代の多くを僕と共にしたのが、このギターだ。

何の変哲もない、フェンダー・ジャパンのテレキャスターである。
改造もしていなければ(修理はした)、思わず息を呑むような値段で買ったわけでもない。

「エレアコを持ってくるのが面倒くさい」とこぼすバンドのもう一人のギタリストに、生まれて初めて買ったフェンダー・ジャパンの黒いラージヘッドのストラトを売ったのが98年暮れ。
99年が明けると共に、DEENの田川伸治氏に憧れて御茶ノ水の楽器店で購入したのがこのテレキャスである。買うのには馬論が同行してくれた。
よく訊かれるのだが、これを買うにあたってジョージの事は特に考えていなかった。ジョージのオールローズウッドのテレキャスは特殊なギターという気がするし、ジョージのギターはもっとお金持ちになってからちゃんとしたものを買おうと決めていたからだ。
ちなみに、田川氏が当時弾いていたテレキャスはフェンダーのものではないということが、2002年にクリップ集DVDを購入した際に判明してしまうというオチがつく。
このテレキャスを手に入れてからは、とにかく弾いて弾いて弾きまくった。
バンド練習もこれ。個人練習もこれ。録音もこれ。作曲のコード付けもこれ。
あの頃は今よりずっと時間があったから、自分の部屋にいる時間の半分はこれを弾いていた気がする。
バイトをするようになって、ずっと欲しかったエピフォン・カジノを手に入れてからもこれがメインだった。
やはり、壁の薄い集合住宅ではアコギは勿論、セミアコすらも弾くのは勇気がいるからだ。
録音では歪んだ音、特殊な音、クリーンな音、はたまたアコースティック・ギターの音(ボスの“アコースティック・シミュレーター”を使用)までこれ一本で弾き通した。無理もあったが、そこは工夫とアイディア勝負である。
2006年のSpiSunの作品『Sketch』で何曲かに使ったが、それまでは何だかんだで完全にメインで使い倒していたと思う。
こうして弾き続けたおかげだろうか。チョーキングやビブラートで情感たっぷりに弾くと、なかなかコクのある音を出して応えてくれるようになってきた。
ビートルズのカヴァー・セッションをニッシーさん達とやった際、cloud9さんに「なかなか良い音してますよね」とお褒めの言葉をいただくほどだった。
しかし2007年に前の店をやめたのをきっかけに、親にプレゼントしてしまうことで、その役目を降りてもらうこととなる。
もともと、シングルコイルのノイズが気になっていたのもあったし、何よりスタジオ仲間のK氏から買ったフジゲンのPRSタイプのギターがスチューデント・モデルながら非常に素晴らしく(次にギターを買うなら、2ハムバッカーのギターと決めている。それはこのギターがきっかけ)、すっかり気に入ってしまったことも原因だ。
何より、名前もspiritual soundsからSpiSunに変えたばかりだったし、リフレッシュしたくもあった。
遠い昔に読んだ漫画に、上京をきっかけにベースを買い換えるキャラがいたが(秋山澪ではない)、それに近いものがあるのかもしれない。
だが、どうやら親のお気には召さなかったらしい。
曰く「ネックが太い」「重い」…結局、僕が以前このブログでも紹介したムスタングを進呈することにしたのだった。
ショートスケールでアームも使え、デザインもポップなこちらのほうが気に入った模様。何にせよ僕はムスタングを録音で使う気には結局なれなかったので、これで良かったと思っている。
年も明けて2010年。いいきっかけなので、テレキャスを自分の部屋に持ち帰ることにした。
おお、今まで寂しい思いをさせて悪かった。これからはまた一緒だ。
このままズルズル時間を過ごしたくはない。そのためにも、あの頃の気持ちを思い出すことが必要だ。
だから、このテレキャスをまた弾こうと思う。それだけの単純な理由でしかない。
でも、シンプルな動機でしか僕は動かない。そういうのって、理屈じゃないからね。
全然関係なくて申し訳ないけど、ジェフ携帯版公式の孝太のブログ“コータのひとりごと”の1/21更新分に癒された。
戸島君ってかわいいですね。すごく良いヤツそうだ。こんな笑顔ができる人って素敵。
腐女子のような発言だが、これから戸島君をチェックし続けようと思う。