「描く」仕事の現場から

イラストレーター兼デザイナー兼ディレクターTETSUの独り言

MIXI、クリエイター、コミュニティ。

2008年03月12日 | JILLA(日本イラストレーション協会)
ここ数日で、実に多くの「理由」が見え出したMIXI規約改定
問題。最初の3,4日でその「規約改悪の影響」が予想し尽く
され、ここ何日かは,それでもその規約を出してしまって,
かつ簡単には規約を引っ込められない「MIXI」の裏事情に
ついても、ユーザーだけでなく多くの人から関心が寄せられて
いる状況。

ここ何日か恥を忍びつつ、この問題の重要性と警鐘を鳴らす
意味で、拙く綴っていたが、私の近くの人たちとも問題意識も
共有出来たように感じるので、私がそれをここで再び、一夜
漬けで書き出したノートよろしくぶちあげてもあまり意味が
ないのでそれについては記述はしない。

直面している問題についてだけ,書こう。
コミュニティ閉鎖についてだ。

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といっておいて,いきなり脇に逸れるが、
イラストレーターには、残念ながら門戸を開いた業界団体がない。
メジャーで入賞歴があれば入れる団体はある。
(例えば,TIS/東京イラストレーターズソサイエティ
http://www.tis-home.com/index.cgiなど。)
ただ、それでは、フリーランスとしてイラストレーターとして
食べていく事を普通に選ぼうとするまだ、芽吹いていない若い
才能の多くは入れないし、芸術家保険も受けられないし、何の
セーフティネットもない、賃金の保証も著作権もクソもない道
ばたに放り出され続けている現状がある。その責任はどこにあ
るのか?育成の場を広げる努力をしきれないで、指針を提示で
きなかった,先人であり,私たちそのものだ。道ばたには、
才能があって、仕事の仕方がわからなくて、かつ,どこにも受
け入れられていない「原石」がいる。僕はここ数年,こういう
原石たちをとてもたくさんみて来た。彼ら,彼女らの自己責任
は否定しないが、活躍出来るはずの原石が多く、行き場を失っ
て迷っているのが今の日本のクリエイティブ。
ただでさえ,小さな国なのに、そんな原石をほったらかしては、
この国のクリエイティブに未来などあり得ない。
「原石」だけではない。中堅の多くのプロが料金の価値格差に
この業界で仕事をする事をあきらめる現状がある。
こういう,不況下においては特にその傾向は顕著だ。
これも、そのままにしておいてはいけない。

Jリーグが成功した背景には「Jリーグ100年構想」がある。
地域に根ざした適正な人材のピラミッドを各地で広く作る事によって、
人口に限りのある日本という狭い国から、多くの才能をコンスタントに
吸い上げていくことと、人材育成していくことを可能にしようとした。

選手だけではない。それぞれのチームに2部があり、3部があり、
ジュニアチームがある。あるいは,湘南のように、ベルマーレという
地域スポーツ事業を株式会社にして,湘南のスポーツのプロ=ベルマ
ーレという図式を作って,地域活性に成功している例もある。

さらにJには「セカンドキャリアサポートセンター」がある。
Jの選手であった人の経験を他の業種でも生かしてもらい、
人的資源を社会還元しかつ、若くして選手寿命を終える多くの
中堅プロたちを積極的にサポートしようと言う試み。

つまり、「原石を磨く」「人的資源を生かす」意志を持って、
強力に動いている「協会機能」があるからこその、今のJリーグ
の隆盛があるのだ。
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MIXIに出会った3年前、僕の中で1つの実験として
「Creator's Networks」は始まった。
僕が,様々な仕事の紆余曲折を経て、今の仕事をしている
「経験」を書面化して、伝える事で磨かれる原石もあるはず
という思いから。

将来的に「日本イラストレーション協会JILLA」においても
その経験値は、役に立つに違いないという思いもあった。

「承認制」「紹介なしで入れない」「コミュニティ」の
コントロールがしやすいなど、リアルなケースワークを質疑応答で
疑似体験してもらいたいと考えていた僕にとって、MIXIは理想的な
ライブスペースだった。
「広告業界」におけるドローイングライターやイラストレーター
カンプライター、コンテマンなどの仕事は「守秘義務」がある故に、
美術大学の授業レベルでさえも、その現実のトップランクのレベルを
垣間見る機会はまず,ないと言っていい。書籍は何冊か出ている。
が、前後の「文法」があって、その技術というつながりが理解出来
るのであって,書籍,印刷物だけではなかなか,その凄みは伝わら
ないのである。伝わらなければ,後進はいなくなる。
先達の使っているプロの仕事道具もどんどん廃盤になり、技術を継ぐ
ものもどんどん減っていく。
今,私が見ている風景は,そうやってやせ細っていく日本のクリエイ
ティブそのものだ。話がそれた。
で、MIXIのコミュニティとして始めたCreator's Networksは3年間
いろいろな質疑応答の流れの中で密な時間を何人かの仲間と共有する
だけでなく、時系列の制作過程や練習用の作画などの公開などを含めて
リアルに多くの「フリーランス」の事業者の離陸を見守って来た。

今回の規約改定で、理由は様々あれど、このコミュニティの根幹に
あるものは全て保護されない条文がある。このままであれば、ここ
は管理運営の責任上、全部閉鎖せざるを得ない。MIXIからは撤退する
タイミングなのかもしれない。これと同様に,多くのクリエイターの
コミュニティが今回の規約による著作物の扱いについての問題を抱え
悲鳴を上げている。万人単位のコミュニティを無償で育てて来た、
有志である管理人がクレームを付けられられているケースも少なから
ずある。

MIXIを良質のコンテンツたらしめてきたのは、多くのクリエイター
ではなかったのか?

「クリエイターのプラットフォームになりたい」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0802/08/news013.html

これはMIXIの笠原社長の言葉である。
今となっては、現実との乖離に違和感を覚える。

商業的なダイナミズムだけが、クリエイターのメリットではない。

ここまでのMIXIはすばらしく有益な空間だった。
本当に感謝してもいる。
だからこそ、きちんとした規約改正を切に望む。