弱い文明

「弱い文明」HPと連動するブログです。 by レイランダー

アブー・ラハマさんからの手紙+ガザ遮断壁の問題

2010年01月12日 | パレスチナ/イスラエル
 このところパレスチナ関連の話ばかり載せている。正直に、そして誤解を恐れずに言わせてもらえば、不本意である。なぜなら、僕のこのブログは、パレスチナ問題に特化したものではなくて、幅広い関心に沿って幅広くくっちゃべることを目的に始めたのだから。そしてもう一つ、もっと問題なのは、パレスチナのネタが続く時というのは、要するに現地の情勢が(いつも以上に)やばくなってきている時だったりすることだ。


 実際ガザは危機の真っ只中なのだけど、ヨルダン川西岸地区でも状況は非常に苦しい。
 以前にも書いたように、イスラエルがやっていることは「占領」であると同時に「併合」である。それを思い出せば、非常に苦しい状態が改善されずむしろ進展してしまう事情も腑に落ちる。が、それに加えてパレスチナ自治政府の中の腐敗が、いっそう「併合」の進展に手を貸してしまっている現状も見逃せない。季刊「リプレーザⅡ」に掲載のジョセフ・マサドの論説「イスラエルと友好のポリティクス」(翻訳:中野真紀子さん、出展はエレクトロニック・インティファーダ2009年2月3日)は、情報として最新というわけではないけれど、衝撃的だった。


 昨年12月に拘束された件(イスラエル軍が放った催涙弾の空き容器を集めて保管していたら「兵器隠匿」の罪を着せられた、という話だ…──まあ当局にとって、理由はなんでもいいのだろう)をここで伝えたビリン村のデモ・コーディネーター、アブダラー・アブー・ラハマさんは、他の数十人の村人とともに、年をまたいで拘留中である。彼が弁護士に託した新年最初の手紙が公表されている。「気まぐれビリン情報」管理人の6さいのビーグルさんと僕で共同で訳してみたので、読んでくだされたし。ビリン村のホームページから、ラハマさんに激励のメールを送れるアドレスもある。(写真:娘さんを抱いたラハマさん)

 http://bilininfojp.blogspot.com/2010/01/blog-post.html(英語原文はこちらを参照)
 
 決意と希望を抱いて新たな10年を迎え、・・・とラハマさんは言うけれども、・・・この10年がいっそう悲惨な、残酷な10年にならないよう、世界の市民が知恵を絞り、行動していかなくてはならない。現地の人たちはただ生活するだけでいっぱいいっぱいなのだから。


 一方、西岸の自治政府から見捨てられた格好のガザ。支援物資を積んだビバ・パレスタインのコンボイは、治安部隊との衝突もあったが、何とかガザ入りを果たした。前回エントリーで紹介した「ガザ自由行進」の方は、結局別働隊の100人がガザ入りしたにとどまり、残りの1300人はカイロで抗議行動を続けた後、解散となった。だが、主催者は「カイロ宣言」を始めとする国際的なアピールを完遂した。主催団体の一つ、コード・ピンクはアクションの成果を以下のようにまとめている。

①世界的な注目を封鎖に向けさせ、ガザの人々の気運を高めた。
②エジプトの否定的な役割にスポットを当てることができた。
③すったもんだの挙句、100人をガザ入りさせるという譲歩をエジプトから引き出した。
④エジプト政府に対し遮断壁の建設差し止めを求める訴訟に加わった。
⑤封鎖の解除に向けて、闘争を継続する決意をさらに充填することができた。

 なんか、抽象的な話が多いなあ・・・と考える向きもあろうが、もともと物資のコンボイのように直接的に住民生活をサポートする企画とは違う。その意味では、ガザに入っての交流活動より、カイロでの本体の抗議行動が予定外に長引いたことで、まさに②のことを内外に伝え、エジプトの政府・市民社会の双方にも波紋を投げかけた、そこが最大の山場だったのかも知れない。


 実際「エジプト政府の否定的役割」は、いよいよ深刻な局面に至っている。これまでのエジプトも、口ではパレスチナ支援を言いながら、イスラエル・アメリカのやることを追認し、また見て見ぬふりすることで間接的に協力するという姿勢をおおっぴらにはしていた。が、ここにきて建設が始まったガザ国境の遮断壁の導入というのは、ガザの一部の過激派を相手にというのとは違う、住民全体に直接危害を加えるに等しいやり方ではないか。
 トンネルなんて、使わなくて済むなら誰も使わない。武器密輸が問題だというなら、遮断壁導入と引き換えに、地上の検問所を開いて、そこでみっちり監視すればいい。それをしないのであれば、遮断壁の導入は、言い方の問題でなく、文字通り大量虐殺への直接の加担である。
 エジプト政府は、150万市民の消滅を願っているのだろうか?かつてナチスは追放政策と並行して、帝国内に建設した強制収容所を使い、「ユダヤ人問題の最終解決」と呼ばれるものに着手した。こんな言い方はしたくないが、・・・エジプト・イスラエル・そしてアメリカの連携によるこの壁の建設は、彼らがとうとう、「ガザ問題の最終解決」に乗り出したことを意味するのだろうか?
 ミーダーン<パレスチナ・対話のための広場>がエジプト大使館宛てに送った要請文書簡を公開している。

 ガザ境界上での壁建設に抗議するエジプト大使館への要請文

 一人でも多くの人に、事態の深刻さが伝わってほしい。そして広めてほしい。大手のメディアがほとんど軽視しているだけに・・・。

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