弱い文明

「弱い文明」HPと連動するブログです。 by レイランダー

今年も最後まで、ニュースにムカつく

2006年12月30日 | Weblog

 無視しようかとも思ったが、やっぱり腹が立つので書いておこう。
 サダム・フセインの死刑が執行された。フセインという人物について、イラクの新体制について、死刑制度についていろいろ言いたいこともあるのだが、それはここでは置く。他のもっとふさわしい人が書いてくれるだろうと思うし。
 それより、一見些細なことでも、どうにもひっかかってそのままやり過ごせない気分になったことがある。
 ヤフーのニュース欄で件の記事を開けたら、横っちょの写真ニュースにフセインとブッシュが握手を交わしているありふれたコラージュ写真が載っていた。何かと思ってクリックしてみたら、Record Chinaという、中国発の様々な「面白ニュース」の類を配信している通信社の提携記事(ここ)のようだった。こんな写真をポスターに使ってるバーが、河北省の秦皇島という街にあるんだと。
 それはどうでもいい。問題はその記事の本文である。
 本文では、この2ショットは「現実にはありえない組み合わせ」だから面白い、と解説している。だが、冗談ではない。これはめちゃめちゃありえる組み合わせである。現に、ブッシュのネオコン一味であるラムズフェルド国防長官が、1983年フセインを激励しに行った際に撮られた写真が上のものである。これはコラージュなんかじゃないし、別に機密情報でもない。
 当時レーガン大統領(その副大統領は父ブッシュ)に任命された中東特使のラムズフェルドの役目は、イラクを軍事的にパワー・アップさせるのに必要な交渉をまとめることだった。ありていに言えばイランを叩くために、ソ連のじゃなくアメリカ製の兵器(化学兵器・生物兵器を含む)をもっと買ってよ、お安くしときまっせと売り込みに行ったのである(関連記事は停戦委員会HP「アメリカはイラクの過去の化学兵器使用を責められるか?」)。
 大体が、ブッシュらネオコンとフセインが対立する者同士だと考える方がおかしい。お互いの本心はどうあれ、持ちつ持たれつの関係だったのである。ただその力関係で勝る一方が、その関係を維持するより、もっと商売のやりやすい相手・環境を作り出す方がお得だという結論になったから、「フセインのイラク」をお払い箱にしただけの話である(もちろん、可能な限りドラマチックに)。これを別名ビジネスライク、とも言う。

 Record Chinaのこの記事を書いた中国人の記者は、国内の事情についてはともかく、国際政治の現実に関しては明るくないと言わざるをえない。そのうえ、「イラク戦争を題材にしたブラックユーモアが、中国独特のセンスで、過激に描写されている」などと大げさに取り上げているが、こんなものはブラック・ユーモアというより単なる現実(の実相)だし、どこにも「中国独特」のセンスなどうかがえないし、「過激」のうちにも入らない。こんなのが本気で面白いんだとしたら、中国人も甘いなあ、という感じがする。なにも中国人全部がそうだとは思わない──昔、天安門広場で共産党の幹部をおちょくってた学生たちのポスターとか壁新聞とかは、もっとしたたかに「過激」だった。そりゃ、自分達の深刻な問題だったんだから当たり前かもしれないが。なんだか近頃の中国人は、ある意味日本人以上に無邪気に「親米」に見えてしまう時がある。
 もちろん日本人の方がマシだというのではない。いまだにブッシュとフセインの対立構図を無邪気に信じている人は、日本においても大半なのだろう。こんな箸にも棒にもひっかからない「ユーモア写真」のネタを、わざわざ死刑執行の第一報から数時間と経ずしてピックアップしてくるような大手の体質からも、察しがつく。また言うまでもなく、こうした「大手」のニュース配信元がそういう誤解を助長している現実もあるのだ。

 というわけだから、例年以上に腹立たしい報道が目についてゲッソリすることが多かった今年は去っても、来年は来年で相当に覚悟しなければならない。
 お金をかけずに、げっそりした精神の腹筋を鍛え直すには、話題の『ルースチェンジ』という映画も役に立ちそうだ。以前こちらでもトラックバックいただいた日本民族解放戦線^o^雅無乱さんの紹介ページから。僕も実はまだ最後まで観ていないので、正月中には観ておこうと思っている。


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
紹介どうもです^^)w (雅無乱)
2007-01-07 01:49:10
ご紹介ありがとうございます^^)

今年もよろしくお願いします!

パーレヴィを傀儡として間接的にイランを支配しようとして失敗したアメリカが、イスラム革命にあって人質を取られちゃった時、お隣のイラクにCIAを放ってフセインをまつりあげ世論操作術と武器と提供してけしかけて起こったのが、イラン・イラク戦争。

そんな事実が彼の口からあらためて語られちゃう前にさっさと葬っておきたかったのでしょうね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。