【2】(特集)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
【疑わしきは、罰する】
●心が壊れる子ども(無関心、無表情は要注意)(精神的に不安定な環境が原因?)
A小学校のA先生(小一担当女性)が、こんな話をしてくれた。「一年生のT君が、ヘビ
をつかまえてきた。そしてビンの中で飼っていた。そこへH君が、生きているバッタをつ
かまえてきて、ヘビにエサとして与えた。私はそれを見て、ぞっとした」と。
A先生が、なぜぞっとしたか、あなたはわかるだろうか。それを説明する前に、私にも
こんな経験がある。もう一五年近くも前のことだが、一人の園児(年長男児)の上着のポ
ケットを見ると、きれいに玉が並んでいた。私はてっきりビーズ玉か何かと思った。が、
よく見ると、それは虫の頭だった。その子どもは虫をつかまえると、まず虫にポケットの
フチをかませる。かんだところで、体をひねって頭をちぎる。ビーズ玉だと思ったのは、
その虫の頭だった。また別の日。小さなトカゲを草の中に見つけた子ども(年長男児)が
いた。まだ子どもの小さなトカゲだった。「あっ、トカゲ!」と叫んだところまではよかっ
たが、その直後、その子どもはトカゲを足で踏んで、殺してしまった!
原因はいろいろある。貧困(それにともなう家庭騒動)、家庭崩壊(それにともなう愛情
不足)、過干渉(何でも親が決めてしまう)、過関心(息が抜けない)など。威圧的(ガミ
ガミ)な家庭環境や、権威主義的(問答無用の押しつけ)な子育てが、原因となることも
ある。要するに、子どもの側から見て、「精神的に不安定な家庭環境」が、その背景にある
とみる。不平や不満、それに心配や不安が日常的に続くと、それが子どもの心を破壊する。
言いかえると、愛情豊かな家庭環境で、心静かに育った子どもは、ほっとするような温も
りのある子どもになる。心もやさしくなる。
さて冒頭のA先生は、ヘビに驚いたのではない。ヘビを飼っていることに驚いたのでも
ない。A先生は、生きているバッタをエサにしたことに驚いた。A先生はこう言った。「そ
ういう残酷なことが、平気でできるということが信じられません」と。
このタイプの子どもは、総じて他人に無関心(自分のことにしか興味をもたない)、無感
動(他人の苦しみや悲しみに鈍感)。情意(喜怒哀楽の情)の動きも平坦になる。よく誤解
されるが、このタイプの子どもが非行に走りやすいのは、そもそもそういう「芽」がある
からではない。非行に対して、抵抗力がないからである。悪友に誘われたりすると、その
ままスーッと仲間に入ってしまう。ぞっとするようなことをしながら、それにブレーキを
かけることができない。だから結果的に、「悪」に染まってしまう。
そこで一度、あなたの子どもが、どんなものに興味をもち、関心を示すか、観察してみ
てほしい。子どもらしい動物や乗り物、食べ物や飾りであればよし。しかしそれが、残酷
なゲームや、銃や戦争。さらに日常的に乱暴な言葉や行動が目立つというのであれば、家
庭教育のあり方をかなり反省したらよい。子どもの場合、「好きな絵を描いてごらん」と言
って紙と鉛筆を渡すと、心の中が読める。心が壊れている子どもは、おとなが見ても、ぞ
っとするような絵を描く。ただし、小学校に入学してからだと、子どもの心を修復するの
はたいへんむずかしい。子どもの心をつくるのは、四、五歳くらいまでが勝負だ。
●疑わしきは、罰する(流産率、10階以上で39%)(紫外線対策を早急に)
今、子どもたちの間で珍現象が起きている。四歳を過ぎても、オムツがはずせない。幼
稚園や保育園で、排尿、排便ができず、紙オムツをあててあげると、排尿、排便ができる。
六歳になっても、大便のあとお尻がふけない。あるいは幼稚園や保育園では、大便をがま
んしてしまう。反対に、その意識がないまま、あたりかまわず排尿してしまう。原因は、
紙オムツ。最近の紙オムツは、性能がよすぎる(?)ため、使用しても不快感がない。子
どもというのは、排尿後の不快感を体で覚えて、排尿、排便の習慣を身につける。たとえ
ば昔の布オムツは、一度排尿すると、お尻が濡れていやなものだった。この「いやだ」と
いう感覚が、子どもの排尿、排便感覚を育てる。
このことをある雑誌で発表しようとしたら、その部分だけ削られてしまった(M誌九八
年)。「根拠があいまい」というのが表向きの理由だったが、実はスポンサーに遠慮したた
めだ。根拠があるもないもない。こんなことは幼稚園や保育園では常識で、それを疑う人
はいない。紙オムツをあててあげると排尿できるというのが、その証拠である。
……というような問題は、現場にはゴロゴロしている。疑わしいが、はっきりとは言え
ないというようなことである。その一つが住環境。高層住宅に住んでいる子どもは、情緒
が不安定になりやすい……? 実際、高層住宅が人間の心理に与える影響は無視できない。
こんな調査結果がある。たとえば妊婦の流産率は、六階以上では、二四%、一〇階以上で
は、三九%(一~五階は五~七%)。流・死産率でも六階以上では、二一%(全体八%)(東
海大学医学部逢坂文夫氏)。マンションなど集合住宅に住む妊婦で、マタニティブルー(う
つ病)になる妊婦は、一戸建ての居住者の四倍(国立精神神経センター北村俊則氏)など。
母親ですら、これだけの影響を受ける。いわんや子どもをや。が、さらに深刻な話もある。
今どき野外活動か何かで、真っ赤に日焼けするなどということは、自殺的行為と言って
もよい。私の周辺でも、何らかの対策をこ講じている学校は、一校もない。無頓着といえ
ば、無頓着。無頓着過ぎる。オゾン層のオゾンが一%減少すると、有害な紫外線が二%増
加し、皮膚がんの発生率は四~六%も増加するという(岐阜県保健環境研究所)。実際、オ
ーストラリアでは、一九九二年までの七年間だけをみても、皮膚がんによる死亡件数が、
毎年一〇%ずつふえている。日光性角皮症や白内障も急増している。そこでオーストラリ
アでは、その季節になると、紫外線情報を流し、子どもたちに紫外線防止用の帽子とサン
グラスの着用を義務づけている。が、この日本では野放し。オーストラリアの友人は、こ
う言った。「何も対策を講じていない? 信じられない」と。ちなみにこの北半球でも、オ
ゾンは、すでに一〇~四〇%(日本上空で一〇%)も減少している(NHK「地球法廷」)。
法律の世界では、「疑わしきは、罰せず」という。しかし教育の世界では、「疑わしきは、
罰する」。子どもの世界は、先手先手で守ってこそ、はじめて、守れる。害が具体的に出る
ようになってからでは、手遅れ。たとえば紫外線の問題にしても、過度な日焼けはさせな
い。紫外線防止用の帽子を着用させる、など。あなたが親としてすべきことは多い。