こんばんは。
本日本屋を何気なく覗いていたら、月刊
PLAYBOYの最新号の特集が『映画監督ほど素敵な商売はない』だったので、思わず買ってしまいました。
ご存知PLAYBOYは、1953年シカゴでヒュー・へフナー氏が創刊。マリリン・モンローのヌードで売り出したこの雑誌は、当初保守層からは冷たい視線を浴びながらも素人の女性を使ったヌードや充実した文芸記事が若者に受け、今やアメリカを代表する娯楽メディアとしての地位を築いています。
ちなみにあのバニーガールは、『PLYBOY』誌のマスコットとしてウサギをデザインして作ったことに端を発し、ヒュー・へフナーが編集長時代に雑誌と連動したキャバレー「プレイボーイクラブ」を発足させた時にウサギのマスコットを着せ、大好評を得たことが起源のようです。
私は学生時代、アマゾンの奥地で巨大淡水魚ピラルクーを釣り上げたり、北極で畳のようなオヒョウを釣る開高健の伝説連載記事『オーパ!』が大好きでした。オヒョウを釣るシーンは、確かサントリーのCMにも使われていた記憶があります。(※作家開高健はサントリー宣伝部の出身)
またリクルートに入社したての頃、PLAYBOYの編集記事における質の高い文章、エディトリアルデザイン、写真は格好のお手本で、古本屋で50冊近く購入し家に持ち帰り、記事を全てスクラップして徹底的に研究した思い出があります。
そんなPLAYBOYに掲載されていた、フランシス・フォード・コッポラの記事のリードコピーは…
「『ゴッドファーザー』という、映画界に不滅の金字塔を打ち立てたフランシス・フォード・コッポラ。本業以外でもワイン事業に成功し今や大富豪になったが、90年代初めまでの彼は何度も破産の憂き目に遭っている。まさに波瀾万丈の人生を歩んできた苦労人は、今再びメガホンを手に映画制作への情熱を燃やし始めた」
この記事はかなり面白かったので、さわりだけいくつかご紹介します。
◆当初は気が乗らなかった『ゴッドファーザー』製作
(中略)しかし実際のところ、コッポラは学生時代から近年に至るまで、人生のほとんどの時期を経済的苦労との闘いに費やしてきた。UCLA在学時代、B級映画監督ロジャー・コーマンのアシスタントに応募したコッポラは、料金不払いで電話回線を切られるほんの2時間前に合格の電話をもらっているが、電話を切られそうになったことなど、その後何度もある。(中略)
『ゴッドファーザー』についての電話がしつこくかかってきた時、コッポラは当時、仕事上のパートナーだったジョージ・ルーカスに「こんなギャングスター映画、やるべきだと思う?」と相談したのだという。ルーカスに「フランシス、僕らの会社は大赤字なんだよ。サバイバルのために君は仕事をするべきだ」と言われ、彼は引き受けることを決意した。
その結果、コッポラは、彼自身もが最初はバカにしていた「チープなギャングスター物」を、壮大なドラマに仕上げるという偉業を達成してみせたのだ。
◆俳優たちも辟易した型破りな演出法
(中略)常識にとらわれないコッポラのユニークな考え方と行動パターンは、映画制作の過程にもたっぷり披露される。
撮影開始前、主要キャスト全員を集め、数週間のリハーサルを行うのがコッポラの毎回のやり方。リハーサル中に俳優に即興を奨励し、いいセリフが出てくればどんどん脚本に取り入れる。リハーサル風景はビデオに収録し、いわばビデオ版のストーリーボードを作るのだが、そこまでしっかり準備するにも関わらず、とくに過去においては、撮影中も毎日のように別のことを思いついては脚本の書き直しを行うことで知られてきた。(中略)
この映画にはコッポラの甥ニコラス・ケイジも小さな役で出ているが、彼ですら「僕の撮影は3週間だったはずなのに、メイクもコスチュームも完璧な状態で6ヵ月も待たされた」とぼやいたといわれている。
◆新たなスターを発掘する卓越したキャスティングセンス
コッポラがアメリカ映画界に対して与えた最大の貢献のひとつに、新たなスターの発掘があったことは間違いない。限られた予算で映画を作るために、彼はしばしば、スターと呼ぶには地味なベテラン俳優と、誰も知らない若手の新人でキャストを構成するという手段を取った。
彼が目を付けたそれら無名の新人には、アル・パチーノ、ハリソン・フォード、トム・クルーズ、ダイアン・レイン、ヘレン・ハント、マット・ディロンなどが含まれる。
この俳優、と決めたらスタジオに反対されてもとことん闘うのがコッポラで、背が低く、当時映画の経験がほとんどなかったパチーノを『ゴッドファーザー』のマイケル役に起用するにあたっても、コッポラがさんざん粘ったため、スタジオはしかたなく「しょうがない、じゃあ、あの小人を使っていいよ」と渋々許可したのだと言われている。(※ゴッドファーザーでは、プロデューサーのロバート・エバンズとかなり派手な喧嘩を何回もしているのは有名)
◆70歳を目の前にして…これからのコッポラ
今年アメリカ公開が予定されている『Youth Without Youth』は同名の小説の映画化で、コッポラ自らが製作、脚本、監督を努める。物語は第二次世界大戦前のヨーロッパを舞台にしたロマンチックスリラー。ティム・ロス、ブルーノ・ガンツ、マット・ディモンらが出演、ロケはブルガリアで行われた。(中略)
コッポラはいつも、他人の脚本を使ったり、既存の小説を映画化するよりも、自分自身のオリジナルな物語を語ることを望んできた。(中略)
たとえば大衆向け小説『ゴッドファーザー』が映画史上に残る優れた作品になったのは、コッポラが「家族」という自分にとってパーソナルな視点から物語を展開していったためにほかならない。
一生死ぬまで続けられる映画監督という職業は、本当にヤリガイのある仕事だと思います。
有名監督のこだわりの向こう側を知ってから映画を観ると、また違った楽しみ方ができるかも知れませんね。