QT Lab.品質・技術研究室

技術者のための品質工学、品質管理、統計学、機械設計、信号処理を
解説します。

調和平均のはなし

2016-06-01 04:20:29 | 品質工学

 先々週、品質工学を通じて懇意にしていただいている技術者の方とメールで
いろいろな情報交換をしたのですが、そのときに思い出したはなしをひとつ。

 片道20kmの道のりを、往路は時速5km、帰路は時速4kmで往復するとき
全体での平均時速は何km/h になるでしょうか?

という問題を解くとき、調和平均という概念を使うと簡単に計算できます。

 n個のデータの調和平均;dm は、各データをdiとすると

  dm = n / (1 / d1 + 1 / d2 + ・・・ 1 / dn ) 
 
で計算できます。上の問題の場合、

   Vm = 2 / ( 1 / 5 + 1 / 4 )= 2 / ( 0.2 + 0.25 ) ≒ 4.44

になります。往路は4時間、復路は5時間かかるので20×2=40km を9時間で
歩くことになるので、40 / 9 ≒ 4.44 km/h
となって、調和平均の計算結果と一致します。

 さて、ここで往路、復路とも時速5km/h の場合 Vm=5km/h です。
往路が時速6km/h 復路が4km/h の場合 Vm= 4.8km/h です。
往路が時速8km/h 復路が2km/h の場合 Vm= 3.2km/h です。

 ここで注目してほしいのは、いずれの場合も算術平均を計算すると V=5km/h
ということです。

 算術平均が同じであっても、調和平均はもととなるデータのばらつきが大きいほど
その値は小さくなる、という事実があります。

 んッ?ばらつきが大きいほど値が小さくなるとは、SN比そのもの!

 つまり、算術平均は感度がわりに、調和平均はSN比のかわりとして使えるのです。

 2年前、私の尊敬する品質工学の大先輩にこの事実を教えていただいたとき、
大感激したものです。

 さらに、データのばらつきがゼロの場合、田口のSN比は計算不能になるのですが
調和平均は算術平均と一致して最大値をとる、というとても便利な性質があります。

 現在進めている会社の業務で、この性質はとても有効で重要なので、早速、
活用するつもりです。

 


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