かなり過激なタイトルにおどろかれた方もいることでしょう。
昨日、先月開催されました日刊工業新聞社様主催のMT法に関するセミナーを
受講された方からのご質問を受けました。そのご質問は、一様分布するような
事象を項目に含む対象に、MT法は使えるか?というものでした。
私は、MTシステム、公差解析、分散分析、実験計画法、品質工学、信号処理
などのセミナー講師をさせていただいております。
どれも、統計学の知識が不可欠で、セミナー対象と同じくらい、統計学の解説に
力をいれています。これをしないと、セミナー対象の本質を理解していただけない
からです。
統計学の解説のなかの中心極限定理の説明では、下の図を使います。
中心極限定理とは、もとの分布がどのようなものであっても、そこからn個の
サンプルを取りだしてその平均を計算する、そして、これを多数回くり返すと
得られた多数の平均の群れの平均は、母平均にちかづき、群れの分散は、
母分散の1/nにちかづく。そして、さらに、その群れは正規分布にしたがう。
というものです。
さて、下の図をご覧ください。
さいころの出る目はすべて1/6です。つまり、確率密度は一様分布になります。
大きさちがいの4個のさいころをなげて、その出た目を合計すると、4×1=4
から、4×6=24、(4~24)になります。
上の図は、合計が4から24になるさいころの組みあわせを書きだして、
積み上げたものです。14を中心に左右対称の釣り鐘型があらわれました。
つまり、正規分布に近い形です。これが、統計学的な事実です。
機械部品の寸法や電気部品の特性に、そのばらつきの範囲をしめすために
使われるのが公差です。機械部品の寸法や、電気部品の特性のばらつきは
正規分布にしたがうことが多いのですが、なかには、一様分布するものも
存在します。
公差の集積(複数の部品を組みあわせたとき、結果がどの程度の範囲をとるのか?)
を推定する技術を公差解析といいます。
公差解析には、完全互換の方法と不完全互換の方法があります。
完全互換の方法は、取る幅の最小値と最大値を計算する方法です。
上のさいころの例でいえば、公差の集積結果は4~24になる、ということを
結論とします。
一方、不完全互換の方法は、統計学を使って、一定の危険率のもとで、
取る幅の範囲を推定します。私は、こちらが正しいと考えています。
ごくわずかな確率で発生する集積公差の最小値や最大値付近まで、考えて
いたのでは、個々の部品にあたえる公差をとても厳しくしなければいけません。
当然、大幅なコストアップにつながります。
そればかりか、設計自体が成り立たなくなることも起こりえます。
どの範囲にすればよいのか?は統計学的な危険率をもとにすればよいのです。
製品の品質水準を3σ管理としたいのであれば、両側の確率が0.135%程度に
なるように推定すればよいのです。
完全互換の方法も行うべき、と指導される上司などもいることでしょうが
たぶん、その方は統計学をあまり知らないのでしょう。
昔、私は上司から、
「完全互換の方法でも・・・」といわれたのですが、さいころの事例を
説明したところ、納得していただきました。
ひさしぶりに技術的なはなし、しかも長文、最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。
ご質問などありましたら、コメント投稿してください。コメントは
公開しませんかr、ご安心ください。
私の経験上の考え方をコメントさせていただきます。
バラツキは統計学で考えなければならないことはそうですがね。
しかし、実際のメカ設計は樹脂部品を生産する場合、金型を作って射出成型によって部品が生産されるのですが、必ずしも設計通りの部品寸法に仕上がるかといったら、そうではありませんでした。
どうしても部品の形状や構造からくる避けて通れない設計不成立については、金型構造を理解して、設計以降の人達が生産、管理しやすいように調整してもいい箇所を示してあげる方が、工数もコストもかからない方法でした。
確立法で設計をしてしまいますと、数字遊びでモノづくりを知らない設計者になってしまいます。
私はメンバーに公差を累積公差で設計が成り立たないからと言って、確立法で計算して、設計の成立性を主張するな!といつも言っていました。
私はつい最近まで、30年間車載部品の設計をしていましたが、今まで
累積公差でしか設計はしませんでした。
設計部門ではヒヨッコの者です。
実際直面している事で、物にもよりますが切削加工で寸法公差の真ん中を狙ってくる加工業者と、公差内の上目を狙ってくる業者がいます。上目を狙う業者は分散が小さかったりもします。
業者がどう出るか分からないので、念のため上司の指示で寸法公差を完全互換性の方法にする場面に遭遇しています。
私としては不完全互換性の方法によりたいのですが、そうもいかず思案しています。
現在まだまだ勉強中の身ですが、こちらのブログもコメントも大変参考になりました。