美容室グレープス (飯田市) 店長&スタッフ・ブログ

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着物で、セレモ二ー ⑪ 振袖万能論

2017年12月29日 | 着物で、セレモニー

Presented by  グレープス.com  and スズキ美容室.com 

and  スズキ美容室・訪問サービス.com  (長野県飯田市)

 

1着の振袖を、T.P.O ※1 に合わせてスタイリングしてみる今回の企画。

ここで、全体を振り返ってみます。

 

◆A~Dまでのスタイリングのタイトル名の2番目に「ドレスコード」を記しています。

 

A.「結婚式披露宴用」 「モード系・フォーマルヘア」 + 振袖 (お引きずり)

 

B.「成人式用」 「スマートカジュアルヘア」 + 振袖

 

◆以上の A.B のスタイリングのヘアが、いわゆる「洋髪」です。

どちらも、衣裳が着物からドレスに代わっても「似合わせ」可能なヘアスタイルです。

 

 

C.「神前結婚式用」 「フォーマルヘア(日本髪)」 + 振袖 (お引きずり)

C の日本髪は、「時代衣装」の髪型ですが、

現代の振り袖にも十分調和することが、お分かりいただけたのではないでしょうか。

振袖も着物ですから、当然と言えば当然です。

 

D.「結婚披露宴・お色直し用」 「フォーマルヘア」  + 振袖

D は、現代の和服用アップスタイルです。

美容業界用語では「面を作る」 ※2 という技法でスタイリングされています。

 

◆ C.D のヘアスタイルが、いわゆる「和髪」と分類されます。

 

このように観てくると、

振袖は、ヘアスタイルが和髪でも洋髪でも、コーディネイトができ、

コーディネイトの仕方次第で、最上級のフォーマルな場面から、カジュアルな場面のおしゃれ着としても着用できることとがおわかりいただけるのではいでしょうか。

「振袖」は、いま、多目的な用途で着用できる「ドレス」と言っても過言ではありません。

 

そして、これは、「振袖」が、明治以降の長い歴史の中で、

少しづつ、時代に合わせて変化をとげてきた証といえるのではないでしょうか。  ※3

 

一方、

この連載の冒頭でもご紹介させていただきました、

振袖よりも格上(歴史が古い)の花嫁衣装とされてきた、「打掛」「白無垢」は、時代衣装です。

◆この 「時代衣裳」 ⇔ 「現代の振袖」 のファッションとしての意味合いの違いについては、

衣裳とヘアスタイルのコーディネイトをする上での知識として、お客にもご理解いただきたいポイントです。

 

こんな事例がありす。

◇近年、「打掛」や「白無垢」に、上のBスタイルのような、スマートカジュアルヘア(成人式用ヘアのような)や、さらにカジュアルでラフなヘアスタイル(浴衣ヘアみたいな)を合わせたい、とのご希望が、美容師の頭を悩ませます。

何故って、

◇それは、フランスのブルボン王朝の時代(日本の江戸時代と重なります)のマリーアントワネットが着る装飾華美の宮廷衣裳である巨大スカートのドレスに、現代のカジュアルヘアを合わせることと同じくいの難問だからです。

 物理的に、ドッキングさせることは当然可能ですが、似合わせという点からも、ファッション(バランス)という点からも、格式(歴史・文化への敬意/宮廷衣裳に合わせるヘアスタイルです)という点からも、合格点をいただける確率は極めて低いと言わざるを得ません。  ※

 ◆18世紀後半のフランスの宮廷衣裳ローブ・ア・ラ・フランセーヌを身にまとう王妃マリー・アントワネット

衣裳が大掛かりになるに比例して、ヘアスタイルも大がかりに変化していった。

(この時代は、日本では、江戸時代(1603-1868)にあたり、現代の着物スタイルの原型となる振袖や、打掛のかたちが出来上がったと言われる年代が、18世紀)

◆左 天璋院/篤姫(1836-1883 徳川幕府13代将軍・家定の御台所) の打掛姿  (大河ドラマストーリーブック/NHK出版)

◆右 マリー・アントワネット(1755-1793 ブルボン王朝第5代・仏国王ルイ14世の王妃) 像 (別冊宝島マリーアントワネット/宝島社)

  

さらに、もうひとつ

ファッションの知識として、お客様にも知っておいていただきたいポイントがあります。

それは、

◆「和装」⇔「洋装」の 色使いに対する感性の違いです。

古典の和装の衣裳は、色使いが豊富で、華やかです。

一方、

ヨーロッパの服飾では、多色使いが好まれない伝統があります。 ※5

 

この知識を頭の片隅に置いておくと、きっと振袖選びの際のお役に立つはずです。

(振袖を洋髪でコーディネイトしたい方は、色使いをおさえた振袖を、

逆に、和髪でコーディネイトしたい方には、古典的な色使いの振袖がフィットする傾向にあります)

 

いま、日本の伝統的着物文化の象徴でもある多色づかいをおさえた振袖が、

市場でも見かけられるようになっています。 

 

振袖が、

街着として、

さらにハイセンスなトップモードとして、街で着られる日が、

そして、ストリートファッションのヘアスタイルとのマッチングがふつうに見られる日が、

遠からず訪れるのではないかと予感します。

 

つづく

 

 ※1 T.P.O   

 Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合。Opportunityと使われることもある)の頭文字をとって、「時と場所、場合に応じた方法・態度・服装等の使い分け」を意味する和製英語。  (ウィキより抜粋)

 

※2 面をつくるスタイル

面に、艶を出す演出を施すとフォーマル度は高まります。

この和髪を少し古典に振ったスタイングが、「新日本髪」※3  と呼ばれています。

 

※3 新日本髪

昭和の時代の、日本髪の花嫁全盛時代から、かつらを好まれないお客様へ日本髪スタイルを提供するために研究されている簡易型日本髪。

高島田など、時代物の日本髪を結うためには、身長丈ほどの髪の長さと毛量が必要で、現実的ではないため、肩から腰丈ぐらいのロングヘアのお客様にも提供可能な日本髪のスタイリング。

古典の日本髪の基本構造(前髪、まげ、たぼ(耳の横の張り出し)など)は残しながら、その他の要素は簡略化、あるいは自由にデザインされた髪型の総称。

1つの決まった形を指すものではない。

 

※4 振袖の進化

仕立て方の細かい改良、着付け方法、柄の変化、色使いなど、

すべて現代の暮らしやファッションシーンに調和させるようにそのベクトルは向いています。

 

※5 多色使いを好まないヨーロッパのファッション

日欧の文化の違いがこれほど対照的に表れる事象も珍しいのではないでしょうか。

これは、街並みの景観にも表れている事象とのことです。

和装と洋装の根源的な違いとして、お客様にも知っておいていただきたいファッションの知識です。

(参考文献 「ヨーロッパ服飾史」徳井淑子著)

 

 



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