明日からセンター試験です。私の職場も試験会場になり、受験生と試験要員以外は入構禁止になります。
今年のセンター試験について、職場でのもっぱらの話題は英語のリスニング試験です。試験要員には分厚いトラブル対処マニュアルが配られ、事前の説明会やリハーサルも繰り返し行われたようですが、いざ本番となるとどんなトラブルが起こるかわからない、ということで、試験要員の方々の気苦労は相当なものでしょう。
ところで、センター試験を前に、ふと思いついたことがあります。
センター試験といえば、共通一次の時代から「マークシート」が常識でしたが、私が考えたのは「センター試験の問題の一部を記述解答式にする」という可能性です。
当たり前ですが、記述式の解答をコンピュータで自動的に採点することはできません。大量の答案を一括して人手で採点することも不可能です。それではどうするか? 簡単です。大学入試センターの役割は問題作成と試験の実施だけにして、採点は各大学に任せてしまうのです。
技術的なアイデアは次の通りです。
マークシート用紙の表面をマークシート解答欄、裏面を記述解答欄にします。大学入試センターでは,表面のマークを読み取って自動採点するとともに、裏面はスキャナで画像として取り込んで、画像データを受験番号に紐付けしてデータベースに保存します。
2次試験の出願が終了した後に、大学入試センターは各大学に出願者のセンター試験の得点情報を送りますが、そのときに出願者の記述解答欄のデータも同時に送ります。各大学では、送られた記述解答欄のデータを印刷(あるいは画面表示)し、採点担当者が採点します。画像データの読み取り不鮮明などがあれば、大学入試センターにマークシート用紙の再読み取りを要求します。
記述式問題の解答例と配点は、センター試験終了直後に開示しますが、具体的な採点基準は各大学の採点担当者の裁量に任せます。
当然、同じ受験生の答案に対する点数がA大学とB大学で異なることが起こるでしょう。でも、それを問題視するのは的外れです。そもそも大学入試とは各大学の裁量で行うものです。その大学の中で一貫した採点基準に基づいた採点がなされていれば、同じ問題に対する採点基準が大学ごとに異なっていても、問題はありません。
大学入試における最も困難な仕事は、問題の作成です。センター試験が記述式の問題を提供し、全国一斉に試験を実施すれば、採点が各大学の負担になったとしても、出題と試験実施の手間がかからない分だけ、各大学にとってはメリットになります。作問の負担が大きすぎるためにセンター試験だけで合否判定をしている大学にとっては、採点の負担を受け入れるだけで記述式試験を合否判定に取り入れることができます。
何より、「多肢選択だけでは満点は取れない」「選ぶだけでなく自力で解答を記述しなければならない」という方式を示すことで、受験生の勉強のしかたが変わるでしょう。その効果は非常に大きいと思います。
マークシート方式のセンター試験の弊害はすでに語りつくされていますが、その弊害を取り除くための具体的方策はあまり語られていないように思います。たとえば、多肢選択の問題に「これらの中のどれでもない」という選択肢を付け加えるだけで、現在のセンター試験よりはかなり試験の効果が高まると思いますが、そのような議論はなかなか見かけません。私の「記述式問題の導入」のアイデアはなかなかの妙案だと思うのですが、いかがでしょうか。
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(2月4日追記)似ているけれど少し趣旨が違うアイデア:
NPOによる全国一斉入試への参入 (辰己丈夫の研究雑報)
アイダホ州の自動車運転免許の筆記試験では、多肢選択の問題の大半に "None of the above" という選択肢がありました。