Boise on my mind

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ご愛読,ご参照御礼

2011-03-28 | アカデミック
数学:物理を学び楽しむために田崎晴明さんのページ)

ありがたいことに,「最近の主要な更新履歴」に次の言及があります.

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時間をかけて作業したのは、2.1.1, 2.1.2, 2.1.3 節の命題と論理の部分。構成も全面的に変えたし分量もかなり増えた。一般的な命題論理の話をする部分と、述語(変数が入っている命題)の部分をすっぱりと分けた。これまでは、(そういう解説が多いのだけど) 何となくいっしょくたに議論して、場合に応じて、述語を念頭に置いたり、一般の命題を念頭に置いたりしていた。さらに、述語についての「ならば」の文には「任意の変数の値について」が暗黙のうちに省略されているということを明示的に書いたし、必要条件、十分条件という言い方は述語についての命題に限って使うことにした(このあたりは、嘉田勝「論理と集合から始める数学の基礎」(日本評論社)の影響を受けた。もちろん、この本を熟読して理解したというわけではないし、書き写したわけでもない。ぼくの書いた物がおかしければ、ぼくの責任です)。かなりすっきりしたのではないかと思う。と言っても、専門外もいいところなので、ちょっと不安はある。
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日々の雑感的なもの ― 田崎晴明 2011/3/26(土)に,さらに詳しい言及があります.

例の本では,命題の同値性を「≡」,何らかの変数についての述語の同値性(たとえば「x^2=4」と「x=2 または x=-2」)を「⇔」で表すという記号の使い分けをしていて,田崎氏のテキストもこの流儀に従っています.この使い分けは私自身の「なんとなく…」という使い分けの感覚を(執筆を機に)ルール化しただけで,数学関係者一般に受け入れられるかどうかは不明ですが…

オンラインコミュニケーションに実時間の概念が(不必要に)入り込むのは嫌

2011-03-23 | コンピュータ・インターネット
某ピザ宅配業者のオンラインオーダーシステムは,注文受付可能な時間帯の始まりが実店舗の開店時間と一致している.つまり,配達先地区を担当する店舗が11時開店だとしたら,11時以後にしか注文を登録できない.「勤務先でランチパーティを開くから正午に勤務先に配達してほしい」という注文を,出勤前の朝8時に自宅から登録しておきたい(もちろん店舗がその注文を認識するのは11時の開店時でかまわない)と考えるのは自然だと思うのに,それを意図的に排除するシステムになっている.
電話注文なら,従業員が出勤していないと注文を受けられないのは当然ですが,「電話を受ける人」がいなくてもお客が注文を登録できるのがオンラインのメリットなのに!

携帯電話のメールが普及し始めた頃,インターネットのメールに慣れた人が携帯電話所有者にメールを送ると「着信音が鳴って困るから深夜はメールを送るな」と文句を言われて困惑する,などと語られたこともあったような.

「実時間の制約からの解放」はオンラインコミュニケーションの大きな利点の一つだと,私は思っています.
特に,eメールは「システムに起因する遅延」に加えて「相手がいつ読むかわからない」という意味で,そもそも実時間との一致性が低いコミュニケーション手段だと思っています.そのことが,「必ずしも受け取った直後に返信しなくてよい」という,受け手側の余裕を与えることなり,コミュニケーションをより楽にすることにつながります.

でも,現実には,携帯電話の普及でメールは即時に相手に読まれて即時に返信されるのが当然という風潮が強まっていますし,Twitterの大流行にみられるように,オンラインコミュニケーションはますます実時間依存の度合いを強めています.この現象はコミュニケーションの進化なのか,それとも退行なのか,私にはよくわからなくなってしまっています.どうしたものか…

エラーの許容に対する日米の文化の違い(!?)

2011-03-06 | アメリカ生活・文化・社会
電子マネーについていろいろ考え始めたきっかけは,「アメリカではクレジットカードやデビットカードによる少額決済が一般的なのに,日本ではクレジットカードでもデビットカードでもなく『電子マネー』という名の非接触プリペイドカードの普及に躍起になっている,なんで?」という疑問でした.

それで,ふと思いついたのが,「『エラーの許容』に対する文化の違い」という視点です.
簡単に言うと,日本は「エラーはあってはならない」という意識なのに対して,アメリカは「エラーは当然起こりうる,証拠が残って事後的にリカバーできることが重要」という考えではないか,ということです.

手書きの小切手は,デビットカードと違って即時の口座残高照会を伴わないので,原理的に不渡りというエラーが生じる可能性があります.それでも小切手を受け取るというのは,「住所が刷り込まれた小切手帳が発行されている」という事実を一応の信用の根拠としつつ,不渡りが発生したときには「小切手に印刷された住所」をもとにリカバリー(損害金の請求)を図ればよい,という考えなのでしょう.

飛行機のオーバーブッキングも「エラーの許容」に対する文化を反映している事例だと思います.日本では「予約=座席の保証」という意識が強くて航空会社はオーバーブッキングに及び腰なところがありますが,アメリカの航空会社はキャンセルを見越して過剰に予約を受けて,実際に座席不足というエラーが発生した時点でリカバー(一部の乗客に補償金を払って座席を取り上げる)するという態度を堂々と取っています.

電子マネーってよくわかんない

2011-03-05 | コンピュータ・インターネット
Edy,nanaco,WAONなど,「電子マネー」をうたう非交通系の非接触式プリペイドカードがさかんに宣伝される一方で,デビットカードはまるで流行の兆しが見えない,なんでだろう…

どうも,私には,「電子マネー」という名の非交通系の非接触式プリペイドカードの存在意義というのが理解できません.
交通系なら,非接触であることの効果が利用者,事業者双方にとって絶大(改札通過がスムーズ,改札機の故障原因が減る,定期券の乗り越し精算の自動化,などなど…)ということは納得できますし,カード発行の簡便さや未成年の利用を考えるとプリペイド方式に分がある(口座振替後払い式のPiTaPaは発行に2週間以上かかるため,磁気プリペイドカードを併存させている)のもわかります.
そして,交通系で普及した非接触式プリペイドカードを交通以外の物販でも使えるようにしようという流れは自然だと思います.

でも,非交通系となると,それは単にQUOカードとかの(電話でも交通でもない)プリペイドカードの媒体を磁気カードから非接触ICカードに変更しただけのもので,大仰に「電子マネー」などと呼んでありがたがる理由がわかりません.磁気カードと比べての本質的なアドバンテージといえば,携帯電話と一体化できる,携帯電話やICカードリーダーを介してチャージや支払いができる,…あと,何かありますか?

そんな新しい規格を作って,全店舗のレジにカード読み取り装置を備えたうえで必死でカードの普及を図るぐらいなら,クレジットカードの磁気ストライプの読み取り装置をレジに備えるほうが,よっぽど低コストで,しかも,既存のクレジットカードがそのまま使えて合理的と思えます.
磁気ストライプにセキュリティ上の弱点があるというなら,クレジットカードを非接触化すればよいわけで,実際,iDQUICPayはそういう思想で実にわかりやすいです.

イオン銀行のキャッシュカードはWAONと一体で,しかも銀行口座からのオートチャージを任意で設定可能になっていますが,「そんな機能をつけるぐらいなら,なんで『非接触式デビットカード』にしないの?」と思ってしまいます.セキュリティの問題は,1日あたり利用額に上限を設定して,「当日限り有効の上限緩和」をATMでできるようにするなど,運用で解決できるでしょう.

まあ,たぶん,事業者側が「いかに自社カードに残高を退蔵させるか」というせこい考えでやってるんでしょうねぇ.
そういう考えが透けて見えるから,私は(たまたま持っている)Edy付きカードのEdy機能は1度だけ使って残高を使い切ってから全く使っていません.

逮捕≠処罰,起訴≠処罰,ついでに逮捕≠起訴

2011-03-05 | Weblog
「カンニングで逮捕は行き過ぎだ」というネット上の議論が盛んなようですが,私の感想は,ただ淡々と「タイトルのとおりです」とだけ.

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(追記)
Twitterでの議論を見て知ったことですが,本件については少年事件ということで「逮捕=家庭裁判所送致」となり(全件送致主義),検察による不起訴処分(起訴便宜主義)という選択はないそうです.
もっとも,少年法の精神に則って処罰より保護が優先されるのですから,「逮捕≠処罰」のノットイコールはさらに強まることになります.

法学者の視点から見た京大カンニング事件について

2011-03-04 | Weblog
法学者の視点から見た京大カンニング事件について - Togetter

ものすごく理路整然として,明快で,すっきり理解できる解説です.

玉井氏(ツイートの主)の主張と重なりますが,私が感じた問題点の一つは,各種報道やネット上での議論で,第一報の時点から「一人の受験者による試験不正行為」と断定するかのような議論が横行していたことです.
後の報道で,実際そうだったらしい(←まだ断定はできない!)ことがわかりましたが,それは警察が捜査して関与した受験者を特定したからこそ明らかになったことです.それ以前の段階では,問題の事前漏洩や,大規模で悪質な組織的不正という可能性を排除できません,というより,排除すべきでありません.また,捜査段階では,携帯電話の使用者が受験者であるというのもしょせん「見込み」でしかなく,実行者は複数人で携帯電話の使用者は試験場外の協力者という可能性は当然考慮すべきで,実際,考慮されたでしょう.

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(追記)
「カンニングを刑事事件したのはおかしい」なんて的はずれ!京大入試業務妨害事件「犯人逮捕」は間違っていない 玉井克哉東大教授(知的財産法)が緊急寄稿現代ビジネス)で,Togetterのまとめとほぼ同様の主張を,さらに詳しく述べています.