
2015/1/8 22:56 日経新聞
【コロンボ=岩城聡】スリランカで8日、大統領選が実施された。19人の候補者が立候補した選挙戦は、3期目の当選を狙うラジャパクサ大統領(69)と、野党統一候補で大統領の側近だったシリセナ前保健相(63)による事実上の一騎打ち。現職優位とみられてきたが、「親中国路線」などの見直しを訴えるシリセナ氏の追い上げも激しく、9日に判明する選挙結果は予断を許さない。
ラジャパクサ大統領は2010年9月に与党・スリランカ自由党(SLFP)が支配する議会で、大統領の3選禁止規定を削除する憲法の改正を強行し、昨年11月に任期を2年残して大統領選を行うことを表明した。
ところが、直後に大統領の側近の一人でSLFP事務局長だったシリセナ氏が大統領選に名乗りをあげたことで状況が一変。シリセナ氏は、大統領の兄弟が相次ぎ経済開発相など要職に就いたことは「一族の汚職体質の元凶」だとして「大統領権限の縮小」を掲げる造反劇を演出した。
シリセナ氏に同調する閣僚や与党議員20人以上が相次いで離党。内戦後も対立が続くタミル人政党はシリセナ氏支持に回り、同氏は都市部でも支持を集めた。
シリセナ氏は、現政権の過度な親中路線も問題視。「中国・インド・日本のアジア3大国とのバランス外交を進めるべきだ」と外交政策の根本的な見直しを提唱する。
7日、ラジャパクサ氏の出身地である南部の港町ハンバントタの港湾開発の現場では土砂を運ぶ巨大な大型トラックが砂ぼこりをあげて走り回っていた。かつて漁業と塩田を営んでいた小さな港で中国による開発が始まったのは08年。第1、2期工事の計13億ドル(約1500億円)のうち85%は中国政府の資金援助によるものだ。
中国は近年、パキスタンのグワダル、バングラデシュのチッタゴンなどインド洋沿岸国の港湾を整備。こうしたインド包囲網の「真珠の首飾り戦略」の重要地点であるスリランカは中印激突の最前線ともいえる。事実、中国海軍は昨年11月、潜水艦をスリランカのコロンボに寄港させインドが猛反発した。
選挙結果は9日午前にも大勢が判明する見込み。「大統領の敗北が濃厚になった場合、集計で不正を働いたり軍を動かして選挙を無効にしたりするなどの暴挙にでないか心配される」(外交筋)との声もあり、選挙結果によっては内政が再び不安定化する可能性もはらむ。
★★★
コロンボ=貫洞欣寛 2015年1月9日12時03分 朝日新聞
8日に投票されたスリランカ大統領選で9日、新顔の野党候補マイトリパラ・シリセナ氏(63)の当選が確実となった。3選を目指した現職マヒンダ・ラジャパクサ氏(69)が同日朝、敗北を認めた。複数の地元メディアが伝えた。
地元紙セイロン・トゥディ(電子版)やARTテレビなどによると、ラジャパクサ氏は9日早朝、野党側と会談して敗北を認め、「スムーズな権限委譲を行う」と述べた。そのうえで、大統領公邸を離れた。
当選が確実となったシリセナ氏は保健相と与党幹事長を務め、ラジャパクサ氏の側近だったが、離反して昨年11月に立候補を表明。3選を禁じる憲法を改正して立候補したラジャパクサ氏を「身内を優先し汚職をはびこらせた」と批判。20人以上の与党議員や少数派タミル人、イスラム系政党の支持を集めた。
【コロンボ=岩城聡】スリランカで8日、大統領選が実施された。19人の候補者が立候補した選挙戦は、3期目の当選を狙うラジャパクサ大統領(69)と、野党統一候補で大統領の側近だったシリセナ前保健相(63)による事実上の一騎打ち。現職優位とみられてきたが、「親中国路線」などの見直しを訴えるシリセナ氏の追い上げも激しく、9日に判明する選挙結果は予断を許さない。
ラジャパクサ大統領は2010年9月に与党・スリランカ自由党(SLFP)が支配する議会で、大統領の3選禁止規定を削除する憲法の改正を強行し、昨年11月に任期を2年残して大統領選を行うことを表明した。
ところが、直後に大統領の側近の一人でSLFP事務局長だったシリセナ氏が大統領選に名乗りをあげたことで状況が一変。シリセナ氏は、大統領の兄弟が相次ぎ経済開発相など要職に就いたことは「一族の汚職体質の元凶」だとして「大統領権限の縮小」を掲げる造反劇を演出した。
シリセナ氏に同調する閣僚や与党議員20人以上が相次いで離党。内戦後も対立が続くタミル人政党はシリセナ氏支持に回り、同氏は都市部でも支持を集めた。
シリセナ氏は、現政権の過度な親中路線も問題視。「中国・インド・日本のアジア3大国とのバランス外交を進めるべきだ」と外交政策の根本的な見直しを提唱する。
7日、ラジャパクサ氏の出身地である南部の港町ハンバントタの港湾開発の現場では土砂を運ぶ巨大な大型トラックが砂ぼこりをあげて走り回っていた。かつて漁業と塩田を営んでいた小さな港で中国による開発が始まったのは08年。第1、2期工事の計13億ドル(約1500億円)のうち85%は中国政府の資金援助によるものだ。
中国は近年、パキスタンのグワダル、バングラデシュのチッタゴンなどインド洋沿岸国の港湾を整備。こうしたインド包囲網の「真珠の首飾り戦略」の重要地点であるスリランカは中印激突の最前線ともいえる。事実、中国海軍は昨年11月、潜水艦をスリランカのコロンボに寄港させインドが猛反発した。
選挙結果は9日午前にも大勢が判明する見込み。「大統領の敗北が濃厚になった場合、集計で不正を働いたり軍を動かして選挙を無効にしたりするなどの暴挙にでないか心配される」(外交筋)との声もあり、選挙結果によっては内政が再び不安定化する可能性もはらむ。
★★★
コロンボ=貫洞欣寛 2015年1月9日12時03分 朝日新聞
8日に投票されたスリランカ大統領選で9日、新顔の野党候補マイトリパラ・シリセナ氏(63)の当選が確実となった。3選を目指した現職マヒンダ・ラジャパクサ氏(69)が同日朝、敗北を認めた。複数の地元メディアが伝えた。
地元紙セイロン・トゥディ(電子版)やARTテレビなどによると、ラジャパクサ氏は9日早朝、野党側と会談して敗北を認め、「スムーズな権限委譲を行う」と述べた。そのうえで、大統領公邸を離れた。
当選が確実となったシリセナ氏は保健相と与党幹事長を務め、ラジャパクサ氏の側近だったが、離反して昨年11月に立候補を表明。3選を禁じる憲法を改正して立候補したラジャパクサ氏を「身内を優先し汚職をはびこらせた」と批判。20人以上の与党議員や少数派タミル人、イスラム系政党の支持を集めた。
2015年 01月 10日 02:11 JST ロイター
[9日 ロイター] - 米労働省が9日発表した12月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が25万2000人増と市場予想を上回り、失業率は5.6%と、前月の5.8%から低下し、2008年6月以来6年半ぶりの低水準を記録した。
市場関係者の見方は以下の通り。
●FRBの望む賃金上昇につながらず
<エドワーズ・ジョーンズの投資ストラテジスト、ケイト・ウォーン氏>
予想を幾分上回り、過去2カ月分の数字も上方修正され、良好な結果となった。労働市場の回復が継続していることが示された。
一方で、賃金の伸びがマイナスとなり、11月の賃金の伸びが下方修正されたことは驚きだった。雇用が創出されても、FRBが望んでいるような賃金の上昇にはつながっていない状況があらためて浮き彫りとなった。
こうした状況を背景に、FRBは様子見姿勢を維持、インフレ率は低水準にとどまり、原油安も継続するだろう。労働市場は改善しつつあるが、全般的にはFRBが望ましいとする状況には至っていない。
●低賃金職に雇用創出集中の可能性
<ウェルズ・キャピタル・マネジメントの首席投資ストラテジスト兼エコノミスト、ジム・ポールセン氏>
全般的には経済成長にとり、極めて良い内容だ。雇用の伸びも目覚しく、失業率もまた大きく低下した。
これだけ強い雇用統計にもかかわらず、賃金が減少するのはおかしい。テクニカルな要因が影響していると思われるが、腑に落ちない部分だ。
低賃金の雇用だけが創出されている可能性がある。この点に関して、市場はどう解釈すべきか困っている。
ただ、インフレ圧力が高まらない状況でかなりの成長を遂げていると言える。これは株式にとっては好材料で、1990年代後半の状況に似ている。
●賃金の弱さ悪材料、年央の利上げ変更なし
<キャンター・フィッツジェラルドのマネジングディレクター兼首席市場ストラテジスト、ピーター・セッチーニ氏>
緩やかながらも着実な労働市場の回復を示唆しており、良好な内容だ。だが時間当たり賃金に関し、前月分が改定されており、増加分が帳消しになった。賃金の弱さは好ましくない。
重要なのは、創出された雇用の質で、この点において満足の行く水準には達していない。必要な賃金の伸びもまだ得られていない。
とはいえ、今回の統計は米連邦準備理事会(FRB)が政策調整に向けた軌道にとどまるのに十分な内容だ。だが(利上げ開始が)年央のタイミングを変えるほどではないだろう。
●強弱まちまち、FRB忍耐強く臨む公算
<バイニング・スパークスの首席エコノミスト、クレッグ・ディスミューク氏>
強弱入り混じる内容となった。純ベースの雇用者数は非常に力強く増加したが、家計調査に一抹の懸念が残る。
参加率が下がった。時間当たり平均賃金が低下、前月分も下方修正されたことが、最も大きな失望を誘う。失業率は、連邦準備理事会(FRB)が利上げを始める際の目安となる水準からわずか0.1%ポイントの差となった。
(FRBの)経済見通し要約に基づけば、今年のある時点で利上げに踏み切るだろう。具体的な時期は重要な問題でない。賃金の伸びが鈍化し、インフレ率が向こう数カ月でゼロかマイナスになると見込まれ、(FRBは)可能な限り忍耐強い姿勢を取る可能性がある。
[9日 ロイター] - 米労働省が9日発表した12月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が25万2000人増と市場予想を上回り、失業率は5.6%と、前月の5.8%から低下し、2008年6月以来6年半ぶりの低水準を記録した。
市場関係者の見方は以下の通り。
●FRBの望む賃金上昇につながらず
<エドワーズ・ジョーンズの投資ストラテジスト、ケイト・ウォーン氏>
予想を幾分上回り、過去2カ月分の数字も上方修正され、良好な結果となった。労働市場の回復が継続していることが示された。
一方で、賃金の伸びがマイナスとなり、11月の賃金の伸びが下方修正されたことは驚きだった。雇用が創出されても、FRBが望んでいるような賃金の上昇にはつながっていない状況があらためて浮き彫りとなった。
こうした状況を背景に、FRBは様子見姿勢を維持、インフレ率は低水準にとどまり、原油安も継続するだろう。労働市場は改善しつつあるが、全般的にはFRBが望ましいとする状況には至っていない。
●低賃金職に雇用創出集中の可能性
<ウェルズ・キャピタル・マネジメントの首席投資ストラテジスト兼エコノミスト、ジム・ポールセン氏>
全般的には経済成長にとり、極めて良い内容だ。雇用の伸びも目覚しく、失業率もまた大きく低下した。
これだけ強い雇用統計にもかかわらず、賃金が減少するのはおかしい。テクニカルな要因が影響していると思われるが、腑に落ちない部分だ。
低賃金の雇用だけが創出されている可能性がある。この点に関して、市場はどう解釈すべきか困っている。
ただ、インフレ圧力が高まらない状況でかなりの成長を遂げていると言える。これは株式にとっては好材料で、1990年代後半の状況に似ている。
●賃金の弱さ悪材料、年央の利上げ変更なし
<キャンター・フィッツジェラルドのマネジングディレクター兼首席市場ストラテジスト、ピーター・セッチーニ氏>
緩やかながらも着実な労働市場の回復を示唆しており、良好な内容だ。だが時間当たり賃金に関し、前月分が改定されており、増加分が帳消しになった。賃金の弱さは好ましくない。
重要なのは、創出された雇用の質で、この点において満足の行く水準には達していない。必要な賃金の伸びもまだ得られていない。
とはいえ、今回の統計は米連邦準備理事会(FRB)が政策調整に向けた軌道にとどまるのに十分な内容だ。だが(利上げ開始が)年央のタイミングを変えるほどではないだろう。
●強弱まちまち、FRB忍耐強く臨む公算
<バイニング・スパークスの首席エコノミスト、クレッグ・ディスミューク氏>
強弱入り混じる内容となった。純ベースの雇用者数は非常に力強く増加したが、家計調査に一抹の懸念が残る。
参加率が下がった。時間当たり平均賃金が低下、前月分も下方修正されたことが、最も大きな失望を誘う。失業率は、連邦準備理事会(FRB)が利上げを始める際の目安となる水準からわずか0.1%ポイントの差となった。
(FRBの)経済見通し要約に基づけば、今年のある時点で利上げに踏み切るだろう。具体的な時期は重要な問題でない。賃金の伸びが鈍化し、インフレ率が向こう数カ月でゼロかマイナスになると見込まれ、(FRBは)可能な限り忍耐強い姿勢を取る可能性がある。