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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

オーバーロード15『半森妖精の神人』(上) / オーバーロード16 『半森妖精の神人』(下) 感想

2022-12-27 18:28:06 | オーバーロード
2年半ぶりに出たという『オーバーロード』の15巻と16巻だけど、上下編だったので、まとめて書いておく。

で、この2巻は、表面上は「エルフの森編」とでもいうべきもので、アインズが、アウラとマーレのダークエルフの姉弟に、友だちをつくってもらいたい、と思って、わざわざ「有給休暇」を取得して、出向いていく、という建付け。

で、そのエルフの森の話が上下巻あわせてだいたい3分の2まで続いていたところから、物語は急転して、アインズたちとエルフ国のエルフ王ならびに法国の絶死絶命との対決が記される、というもの。

で、このダークエルフの村の話と、エルフ王&絶死の話とのつながりがあまりうまくなくて、その点から、エルフの森編、いらねーじゃん、って感想がわりと多いようだけど。

個人的にはあんまりそうは思わなかったかな。

というか、ダークエルフの村に向かう、というのはあくまでも今回の物語の舞台設定でしかなくて、この舞台で作者が描きたかったのって、アインズ(の中の人)って実は素でスゴイ人だったんだ、ということを、新たに彼と接した人たちの目を使って描こうとしたところにあると思うから。

つまり、アインズの中の人の鈴木悟は、ずっと自己評価の低い普通のサラリーマンだった、ってことになっていて、でも、アインズになると「至高の御方」ってことで、アルベド以下ナザリックのNPCたちからは、ただただ崇拝すべき対象として崇められていたわけでしょ。

だから、実際のところ、アインズの人となりがどういうものか、本人の(内面語りによる)自己申告以外に知る手立てがなかったわけじゃない。

それを、ダークエルフの薬師の仮師匠の独白で、普通に見て、アインズってちゃんと計算高く、しかしときにちゃんと情に訴える切れ者だということが語られるわけで。

あるいは、アウラに手を出そうとしたペドフィル・エルフ王にブチ切れて戦いを挑んでいるアインズの姿を見て、ちゃんとアウラとマーレは、アインズが戦況を作りつつ相手を追い詰めようとする「怖い」人物だということも語られるわけで。

ついでにいえば、絶死が、マーレとのマッチアップの途中で、アインズの深謀遠慮に気づくとか。

まぁ、王国をぶっつぶすことで、法国にエルフ国との決戦を急がせて・・・云々、というのは確かに、ラッキーがラッキーを呼んだものだけど、でも、それとて、絶死が思いついたように、アインズの聖王国における派手なパフォーマンスがあればこそでしょ。

いずれも、アインズの凄さを、周りの人間が評価しているわけで、アインズさん、あんた自己評価がめっちゃ低いけど、実はそうでもないのよ、というのが今回の上下巻で伝えたかったことのひとつでしょ。

つまりは、理性と感情がうまくバランスの取れた動き方をするわけで、それは統治者にとっては欠くべからず「徳」なわけで。

いや、もちろん、すでにモモンがいたじゃん、というのもあるけど、モモンの場合は、あっという間に実力者の冒険者になってしまったから、彼のいうことにはうなずく以外なくなってしまったわけで。

しかも、そうなるように、モモン/アインズも意図して誘導していたし。


とまれ、そんな試合巧者のアインズが、絶死の必殺技からかつてのシャルティエの暴走を招いたのが法国だったと知り、大激怒。

そのまま怒りに任せて、法国を破壊する、とまで言っているわけだから、次巻が面白くないはずないよね。

だって、アインズ自身が望んで殲滅する対象に法国がなったってことだから。

もう全戦力で完膚なきまで滅亡させる、ってことなんだろうなぁ。


だから、次巻が確かに楽しみなのだが、問題は作者が残り2巻で完結させる、といってること。

そうなると、普通に考えて、次巻で法国を、最終巻で評議国を、それぞれ扱うという理解でいいのかどうか。

だって、法国だけ倒すなら、もう簡単でしょ。

法国最高戦略である絶死を倒して、捕虜にしているのだから。

しかも、絶死、以前から自分を倒した男がいたら結婚してもいいとか言ってたわけで、となると、マーレが実は少女ではなく少年だった、ってわかったら、むしろ絶死のほうがガンガン、マーレに攻めていく展開もあるんじゃない?

でそうなったら、もう法国、ナザリックへの対抗手段がないじゃん。

そうなると、その混乱に乗じて、評議国が乱入するか。

もしくは、15巻のラストに出てきた、闇の不死者集団が介入してくるか。

でも、後者は、実は、アルベドかデミウルゴスが手を回した組織っぽい気もするので、あまり期待しておくと肩透かしを食らいそうな気もするw


ともあれ、15巻と16巻、個人的には、アインズがどういう人か、彼の独白によらず描写されたところは面白かったし、多分、次巻に続くないようなんだろうなと思った。

あと、タイトルが『半森妖精の神人』だから、そりゃハーフエルフの絶死絶命がラスボスで登場するはずだよね。

なので、あくまでもエルフの森は舞台設定に過ぎなかったってことでいいと思うけどな。

てか、そんなにバトルシーンばかり読みたいかなぁ。

あとは、残り2巻で伏線の回収はされるのか?という心配も出てきているようだけど、それも、あんまり考え過ぎなくていいんじゃない。

伏線と言われているものの多くは、ファンの読み込みが生み出した妄想だし、その一つ一つに作者が答える必要はないから。

結局、何だったんだろうねぇ、と思わせるものがいくつか残るくらいがいい物語だと思うけどな。
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