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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

魔法科高校の劣等生 第19巻 師族会議編〈下〉 感想

2016-03-13 10:27:32 | さすおに
ようやく刊行された「師族会議編」の完結編。
前巻の最後で人間主義者の暴徒?に襲われた深雪たちの去就はいかに?
一条が駆けつけるのか?
それともやっぱり達也なのか?
表紙からすると十文字先輩の可能性もありなのか? ・・・
だって七草妹もいるしね。

・・・ということで、いつもどおり、スペース、空けときます。
































































で、結論からすると、お約束通り、やっぱり「お兄さま」が介入することで、深雪、水波、泉美、の三人は難なく助けだされてしまった。

もちろん、予想はできたことだけどねw

まぁ、それはいいとして。

それにしても、この19巻はつまらなかった。
多分、このシリーズで最低の出来じゃないかな。

だって、師族会議編の三巻を使って、やったことって、結局、グ・ジーのおっさんの追跡だけで、しかも最後の最後で、グ・ジーはUSNAの魔法師に、文字通り「一刀両断」されておしまい。それだけ。

達也たちがグ・ジーを追い詰めるそばから、常にUNSAが横槍をいれて妨害する。その上で、国際法上、一応は理屈が付く公海上までグ・ジーを追い出して、そこでおもむろにUSNAが討伐。それだけ。

いやー、なんのカタルシスもない。

その上、稲垣だけでなくマジであっさり千葉寿和を殺す。
しかも、達也の手を使って、心臓木っ端微塵・・・

で、達也が活躍したところって、あえていえばそれだけ。
あとは、彼らしくもなく、ひたすら目の前に状況に苛立ちながら、(戦闘しつつ)内省するばかり。

もともとこの作者って、物語の語り手としてはあまりうまくなくて、基本的には、「物語風設定資料集」的な、なんでもかんでも説明口調で、要するに「地の文」で書いてしまう。

そのため、戦闘シーンは、戦闘の状況説明、戦闘する二人(ないしそれ以上)の人物の行動描写に加えて、そこで繰り出される「魔法技」の解説までしたり顔で書き記してしまうわけで、それだけでひたすら描写ではなく「説明文」を読まされることになる。

そこにさらに、達也の内省、つまりひとりごとまであれこれ書かれてしまうと、正直、読むのが苦痛。西尾維新みたいに、その内省に可笑しみや皮肉が混ぜられればいいのだけど、そもそも達也はそんなキャラじゃないしね。

いやー、ホント、つまらなかった。
何のカタルシスもないんだもの。


しかも、下巻約330頁中、本編は240頁程度。
で残りは「一条将輝日記」なんて、どうでもいい付録で水増しされていた。

こんな付録つけるくらいなら、三巻になんかせずに、上下巻の二巻で終わりにすればいいのに。最悪だよ。

期待させるだけさせておいて、この「つまらなさ」はヒドイよ、全く。

これ、もう作者自身、面白いと思って書いてないんだろうなー、とか、
もしくは、例の電撃の編集者がいけないんだろうなー、とか感じないでいられない。

だって、付録で水増しさせて一冊にするなんて、アクセルワールドと同じだし。
そもそも、こんなにつまらない話の展開で一冊にするのなんて、ここのところの禁書目録と全く同じでしょ。

電撃、終わったなー。

それにしても、このシリーズは、ネットに掲載されたものが終わってからの、つまり、二年生編に入ってからの「劣化」が激しすぎる。

師族会議編にしたって、上中下の三巻構成にする、と聞いたら、来訪者編のような展開を期待して当然だと思うのだけど、全くそんなこと、なかった。

新キャラはグ・ジーとか、おっさんばかり。
独立魔装大隊どころか、達也すら活躍しない。
八雲はただ暗躍するばかり。
真夜はただの後見人として、オホホ、と言ってるばかり。
深雪も水波も、物語の中核には絡んでこない。
レオや幹比古など一高の面々はモブ扱い。
ギリギリ、エリカが登場するも、それも寿和がらみ。
で、その寿和は死亡。
そうそうUSNAといいながら、リーナは出ずじまい。

来訪者編と微妙に要素がかぶっているのだけど、あの面白さはみじんもない。

なんか、これ、もう、お話として破綻してるでしょ。

一体、何がしたいんだか?
そうした物語の幹が全く見えなくて、結果として、話がどこに向かおうとしているのか、全く見えなくなってしまって、それゆえ、頁の先を読もうとする気がどんどん失せてきているところは、禁書目録と全く同じ。

じゃあ、ふりかかる事件はたんなる展開上のいわば刺身のツマで、本質は特定のキャラの言動に萌えるキャラ小説なのか、といえば、そんな要素もない。だって、達也、全然活躍しないわけで。この点では、まだ上条当麻の口上を無理やり組み込んでくる禁書の方がマシ、という、超低レベルの争いになっている。

ホント、ヒドイなぁ。

まぁね、寿和を殺されて、エリカの怒りボルテージをマックスにするとか、
寿和をいわば見殺しにして、藤林響子の心の闇をエグっていくとか、
寿和の死に立ち会えず、麒麟児の修次が暴走するとか、
その「修」の暴走に慌てふためく摩利とか、
摩利の狼狽ぶりに責任を勝手に感じて自責の念にかられる真由美とか、・・・

あれこれ、波紋を呼ぶ仕込みをしているのはわかるんだけどね。

グ・ジーという「小物」の中ボスを排することで、ラスボスらしき爺さんたちが表舞台にあがりそうだけど。

青波入道閣下(笑、とか、
七賢人(笑 の元締めのレイモンド、とか。
あと、エリカとレオがらみのドイツの魔法師、とか。

そんな今までとは規模の異なる「巨悪?」が、達也の前に立ちふさがるのかもしれないけど。

そして、その結末からすれば、「師族会議編」も、物語の転換点として重要な意味をもつものになるかもしれないけれど。

でも、単純に、この上中下三巻の話としては、ホント、くだらない。
あと、マジで、一条の日記なんていらない。一条、マジウザい。さっさと消えてほしい。
そういう意味では、七草三姉妹もウザい。いらない。

しかし、結局、終わってみればUSNAのスターズの「横暴」だけが、意味もなく際立つ展開になってしまって、ホント、作者はアメリカが嫌いなんだな、と感じたかな。そういうところだけはブレないなぁ、と。


ともあれ、今回、寿和が死去することで、達也は、この世界における「死」の意味をあれこれ考えてしまっているようだけど、それこそピクシーの問題とか、なにげに作中で引っ張り続けているプシオンのこととか踏まえると、達也は「再成」の限界を越えて、文字通り「再生」の領域にまで踏み込んでしまうのかもね。

で、最後は、その誰をも「生き返らせてしまう」ことのできる「再生」能力によって、寿和どころか、母の深夜まで蘇らせて、お花畑だけどカルトな終わり方をするのかもしれない。

まぁ、そのあたりの達也の暴走については、四葉のスポンサーでもある青波入道閣下が、これまでの魔法師開発の歴史を踏まえて、あれこれ、ネタバレしてくるのだろうけど。

あれれ、そういう解説役は、九島閣下の役割だったと思ってたんだけど。
もはや十師族ですらないしな、九島は。

それにしても、魔法師という人為的な異能力者開発の闇の歴史に踏み込んでいくとしたら、なんか貴志祐介の『新世界より』みたいになってきたな。

あれは、超能力を使えない凡人を化物に格下げして支配対象にする、という段取りだったけど、そんな感じで、陰惨な過去が待っているんだろうなぁ。

そうなると魔法師ではない?レイモンドあたりは、科学を使って魔法師に復讐を企てようとする立場で、『新世界より』のバケネズミみたいな立ち位置なのかも。

まぁ、とにかく、最後は、達也が「再成」改め「再生」能力で、神様になる!という超展開でよろしく! 
で、その暴走を止めるのが、きっと調整体として生まれた深雪の役割なんでしょ?

てかさー、それくらいバカげた展開にしてくれないとマジでつまらないよ。
この作品の魅力は、突き抜けた達也の力、荒唐無稽なほどな「バカバカしさ」にあるのだから。
それも往年の『バスタード』的バカバカしさね。

なのだから、こんな師族会議編みたいな、チマチマしたセコい話はホント、願い下げだよ。

しかし、次は『動乱の序章』編か。
「序章」だから、「本章」、「終章」とか続くのかね。
もっとも、その前に、今更ながらの二年次の九校戦編のエピソードが出されるらしいけど。

となると、禁書同様、これもしばらくは見送りかなぁ。

なんだかんだいって、無双する達也のサディスティックなところがこのシリーズの売りだと思うのだけどなあ。
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