私の古い友人に武田和忠さんがいる。
友人と言っても私より10歳は年配で、しかも大学の先輩でもある。
だから大いに恐れいる必要があるのだが、本人はいたって気さくなのでつい友達のように接してしまう。
武田さんは、技術士だ。
技術士の偉さを私に教えてくれた人でもある。
昔は三洋電気に勤めていたが、脱サラして自由業になったらしい。
技術士が自由業かどうかという議論はさておき、彼の暮らしぶりは確かに自由人である。
私が公務員であったころ、よく研究室に遊びに来てくれた。
遊湖の会の初期会員でもある。
彼については面白い話がたくさんあるのだが、今日は古い地図の話をしよう。
武田さんは、努めて古い地図を集めている。
面白い地図や珍しい地図が手に入ると、私のところに見せびらかしに来る。
きっと私も興味を持つに決まっていると、確信しているのだろう。
いつだったか、伊能忠敬が描いた琵琶湖の地図を持ち込んできた。
おそらく、我が国最古のまともな琵琶湖地図だろう。
皮肉屋の私は、数値化して持ってこなければ役に立たない、と言って彼に地図のデジカル化を押し付けてしまった。
それが添付した画像である。
よく見ると面白い発見がたくさんある。
山科に大きな池があったなどとは知らなかった。
時間があれば現在の地図との比較をしてみようか、と思っている。
武田さんは、過去を楽しみ、現在を憂い、未来を分かち合う、数少ない私の友人の一人だ。