
男はじっと考えていた。
我々が通常見ることができるのは、湖の表面だ。
水の中で何が起こっているのかを確かめることは難しい。
一番良いのは潜ってみればよい。
ただ、通常の人間にとって、深く長く潜ることは困難だ。
そこで登場するのが、水中ロボットだ。
こうして、淡探というロボットが誕生した。
自律型潜水ロボットだ。
ただ、それにしても制限がある。
水中では電波が届かない。
だから音波を使って交信する。
音波は分散性が強いので、広がってしまって多くの正確な情報を伝えることができない。
今回見つけたベントの映像も、あとから再生してわかった。
リアルタイムでモニターするには、映像情報は大きすぎるのだ。
どんな技術や科学でも、進化させるには時間がかかる。
少しずつ、匍匐前進し、より高度な段階を目指す。
そういう一歩一歩の努力が大切だ。
忘れてはいけない。
みんないきなり子供から大人になることはできない。
時間がかかることは悪いことではない。
その過程で、情報や経験を共有できるし、進歩の段階を確かめることができる。
こうして私たちの世界は進んできたのだ。
男は気を取り直して、再びベントに思いをはせた。
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