DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

道(21)

2015-12-04 10:24:53 | ButsuButsu


Tさんから「はっけん号カンパ」が届いた。

1993年、この船が進水した年に、彼は私のところで琵琶湖に関する卒論を書いた。

「覚えていないと思いますが、、、」

彼の手紙は、こう始まっていた。

あれから22年がたつ。

彼も40歳を超え、会社では中間管理職なのだろうか。

今更に、月日が経つのは早いものだと思う。

やんちゃなTさんは、小さなトラブルをいくつか起こした。

困った子だな、と思いながらもどこか憎めない青年だった。

今思えば、感受性の強い人だったのかもしれない。

いやいやながら就職していったのだが、まだ同じ会社にいるようだ。

時々琵琶湖に来ています、記されてあった。

きっと、魚釣りなのだろう。



あの頃、はっけん号は出来立ての淑女で、全てがキラキラしていた。

今、なぜか廃船にされかかっているのを、私たちが引き取ることにした。

続々とカンパの申し込みが届いている。

四半世紀が経って使い込まれ、今や堂々とした貴婦人の風格がある。

こんなに贅沢な船はないだろう。

基本設計を行う前に、2年かかってカナダ・アメリカ・オーストラリア・日本の各地を回って集めた情報が凝縮されている。

そして、その時々に、多くの学生さんたちがこの船を使って研究論文を書いた。

立派な社会人になった彼らが、こうしてカンパを送ってきてくれる。

こんなに嬉しいことはない。

教師冥利に尽きるというものだ。

最近、はっけん号のことを、老朽船だと悪口を言う人がいる。

一体何を根拠に言うのだろうか。

自分の目で確かめたのだろうか。

琵琶湖には、この種の不確かな情報が飛び交う。

この船は、あと10年は立派に動く。

嘘だと思ったら、加納船長に聞いてみればいい。

デマを撒き散らす人は、自分を貶めているだけだ。

琵琶湖であまりにも嘘の情報が多いので、検証の意味を込めて「琵琶湖は呼吸する」という本を書いた。

この本には、私たちの真心がこもっている。

売れ行きは順調のようだ。

あとは、何とかはっけん号に命を吹き込むだけだ。

生まれたものは、寿命が来るまで、大切に使いたい。

はっけん号も、そして自分の体も。

感謝に始まり、感謝に終わる。

ありがとうTさん。