こばなし

日々のよしなしごと

そんな時は安心して、くりかえし、今はもうない家のドアを、空想の中で開けることができた。

2009年07月13日 | 日記
かぜをひきました

はなみずがー
たれながしー

久しぶりにこんなちゃんとひいた


あしたライブ行けないかも
病院行かなきゃ

あとライブ行ったら
きっとママに怒られる
こわい…



最近タイミングが悪すぎる
悲しい







どうしてなくなってしまうのかなぁ












 もう全てなくなってしまった。
 こんなにはっきりと触れるくらいに頭の中にあるのに、もうこの世のどこにもない。あの家の中を無造作に歩き回り、母のめがねやサンダルに触ることももうない。あのドアを家族全員がそろって開けることもない。あのちっぽけな、通販で買ったテーブルに、みんなで向かうこともない。
 だからふだんは痛くて思い出せなかった。
 でも、ここでなら、涙がにじむまでぞんぶんに思い出すことができる。
 その中につかって切なく目覚めてからも、ひとりでいなくてもいい。考えがよそにうつるまで、じっくりと痛みを抱えることができる。
 アルゼンチンビルの中には、なにひとつ「なくなってしまったもの」がないから、時間が人の頭の中の力によってすっかり止まってしまっているから、そこに流れている時間は特別なもので、決して過去と現在を分けて流れてはいない、だから、そういう夢を見ることが許されるのだ、と私は思った。



アルゼンチンババア/よしもとばなな