エリザベス女王やキャサリン妃、メーガン妃が受け継いだ、英国王妃メアリーのアイコニックなティアラのすべて
伝説の全ティアラを振り返ります。


1925年、ジョージ5世の母、アレクサンドラ王太子妃が崩御されると、メアリー王妃は王太子妃のティアラを受け継がれました。もとは1888年、王太子妃の結婚記念日にLadies of Society(レディース・オブ・ソサエティ)として知られた貴族の有志のグループから贈られたものでした。王太子妃の要望で、ロシア皇后だった妹のマリア・フョードロヴナが持っていたココシニク(ロシアの女性の髪飾り)をモデルにして制作されました。

1914年、メアリー王妃はガラード社にこの「ハニーサックル・ティアラ」の制作を依頼しました。ダイヤモンドは、「カウンティ・オブ・サリー・ティアラ」と「レディース・オブ・イングランド・ティアラ」に付いていた石を使用されています。オリジナルはティアラの中央にカリナン・ダイヤモンドかサファイアが付けられるように設計されています。

「ハニーサックル・ティアラ」を着けて写真におさまるメアリー王妃。ティアラの中央はカリナン・ダイヤモンドではなく、サファイアです(サファイアとパールのチョーカーはロシアのマリア・フョードロヴナ皇后から購入したもの)。
メアリー王妃は、中央をダイヤモンドに付け替えて、三男のヘンリー王子の妻であるアリス妃に贈りました。今日では、このダイヤモンドのほか、エメラルド、クンツァイト*も中央に付けられることがあり、グロスター公爵夫人バージット妃が受け継いでいらっしゃいます。
*kunzite=リシア輝石の結晶、ピンクがかった薄紫色をしている。

メアリー王妃が身に着けていらっしゃるのは自分の名前を冠した王冠(そしてカリナン・ダイヤモンドIIIとIVのブローチ)。1937年、次男のジョージ6世が戴冠されたときの写真です。

メアリー王妃の肖像画。ジョージ6世の戴冠式でお召しになったドレスとご自分の王冠でのお姿。

1936年に描かれたメアリー王妃の肖像画。この年、夫君であったジョージ5世が崩御されました。肖像画の「ウラジミール・ティアラ」は、パールが散りばめられたバージョンです。

1932年、メアリー王妃は細めのティアラの制作を依頼されます。1893年に結婚祝いとして英国リンカン州から贈られたブローチに付けられていた粒ぞろいのダイヤモンドが使われました。
1953年にエリザベス女王がメアリー王妃の宝石類を受け継ぎましたが、このティアラは王室の金庫に長い間、保管されていました。2018年、メーガン・マークルがハリー王子との結婚式のためにこのティアラを選び、ようやく金庫から出されることになりました。

第二次世界大戦が終結し、再開したロイヤル・オペラ・ハウスに観劇にお見えになった時のメアリー王妃です。「アイヴァー・ティアラ」をお選びになりました。数ある結婚の贈り物のうち、このティアラだけは作り変えられることがなく、メアリー王妃の生涯を通して、贈られたときの形を保ちました。

1935年に新しく作られたティアラです。映画「幽霊西へ行く」のプレミアに出席されたときのご様子(お供をしているのは、四男のケント公ジョージ王子とマリナ妃)。ロシアの髪飾り、ココシニク風の作品です。
ダイヤモンドは菱形に配置され、トップの先端には13個のパールが使われています。メアリー王妃は後に、孫娘のマーガレット王女にパールを取り外した状態でこのティアラを託しましたが、このティアラがその後、公の場に登場することはありませんでした。
*lozange=ひし形

1925年、メアリー王妃はガラード社からダイヤモンドがあしらわれた細めのティアラを購入されます。ときおり、ケンブリッジ・エメラルドをトップに付けて、このティアラを着けられました。1947年、映画「The Woman in the Hall(日本未公開)」のプレミアにも、そのスタイルで出席されました。
その後、このティアラは四男のケント公ジョージ王子の妃、マリナ妃へ贈られ、その後、マリナ妃の長男であるケント公エドワード王子の妃である公爵夫人キャサリン妃に結婚祝いとして贈られました。
いまでは、Kent Diamond & Pearl Fringe Tiara(ケント・ダイヤモンド&パール・フリンジ・ティアラ)と呼ばれており、公爵夫人がデザインを少し変更されているようです。ベースはそのままですが、ダイヤモンドが埋め込まれ、トップはパールになっているそうです。
Translation by Takenori Noguchi From Town & Country
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