介護日記 はじまり ～お人よし～

社長の介護日記 シリーズ３　～ お人よし ～


　予定時間を30分近く過ぎてようやく、彼女は病室へ帰ってきた。未だ麻酔の醒めない状態だが看護士さんの呼びかけにかすかに反応している。

　しばらくして執刀医がやってきて、私達に写真を見せながら「手術はうまくいきました。只、明日くらいは痛みが出るでしょう」との事。人体のレントゲン写真というより、Ｔ字型の杭を打ち込まれた様な写真は、機械部品の写真を見ている感じである。


　翌朝、「あ～痛い、私しゃあお人よしじゃけんダマされてんじゃなかろうか」としきりに愚痴をこぼす。鎮痛剤が効いているので、かなり痛みは抑えられてると思うのだが、「痛くないヨ。あっという間ヨ」などと適当な事を云い続けてきた。私としては何とも返す言葉も無く「あんな大手術をやったんだし、先生は１日か２日の辛抱と云うとる。それに手術はバッチリ大成功やったし、少々は我慢せにゃ」などと、今度は開き直ったような事を云う。呆れて彼女はとんでもない息子め、と思ったかもしれない。


　術後はリハビリが大切との事で、手術の翌日はベッドの横の簡易トイレで用を足す様すすめられ、次には療法士のリハビリを少しずつしていくことになる。およそ２～３ヶ月、このリハビリを続けると云う。