なんとなくな日々

SL残日録(個人的なメモ帳)

洟をたらした神

2019年01月07日 23時59分08秒 | 本・雑誌
「洟をたらした神 」吉野せい 1975/4 読了 ☆☆☆☆☆
1899年(明治32年)に生まれ1977年(昭和52年)没(享年78)の著者。
1921年(大正10年)に結婚してから、ほとんど作品を書いておらず、1970年彼の死後、交流のあった詩人・草野心平に作品を書くように勧められたことを契機に、再び執筆活動を始めることになる。
70歳過ぎから数年かけて書かれた、戦前、戦中、戦後にかけたかっての頃の16篇の作品の重厚で鋭い文体と写実的な内容のち密さに驚かされる。
結婚以後、開拓農民として農村不況の戦前から敗戦による農地解放の混沌、生活の重荷、労働の過重、六人の子女の養育、満身風雪の生活が綴られる。技巧のないその表現の力強さに圧倒される。
乳児を亡くす「梨花」と出兵の風景と兵舎に息子を訪ねる「鉛の旅」は、特に心動かされる。

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