2007 Cape Rass Scotland
「お話して、ピュー」
「どんな話だね?」
「何度でも最初から始まるお話」
「それはつまり、人生の物語だ」
「でもそれってあたしの人生の物語なの?」
「お前さんが語りさえすればな」
スコットランド、ケープ・ラス近くの港町ソルツ。
10歳で孤児となったシルバーを養女にしたいと、灯台に住むピューが申し出た。
こうしてシルバーは燈台守の見習いとして、ユニコーンよりも長く生き、200年前のことも見てきたように語って聞かせる、不思議な老人ピューと灯台で暮らすようになる。
ピューの口から夜ごと語られる、今から百年も前のソルツの町に生きたバベル・ダークの数奇な人生の物語。
灯台が無人化されることが決まり、シルバーとピューも離れ離れになる。シルバーは灯台に残されていた、ダークの日記を携え、旅に出る。
こうして二百年の時を経て、シルバーとダーク、二つの魂が響きあい、交差していく----.。
訳者あとがきより抜粋
「現在(いま)ってどこにあるの?」
「周りすべてだ。この海のように。わしから見れば海はいっときもじっとしておらぬ。わしは陸に住んだことがないから、これは何、あれは何、ということは言えん。
わしに言えるのは引いていくのが何で、寄せてくるのが何かってことだ。
「引いていくものは何?」
「わしの命だ」
「じゃあ、寄せてくるものは?」
「お前さんの命だ」
「自分を物語のように話せば、それもそんなに悪いことではなくなる」
ジャネット・ウインターソン
「自分自身を常にフィクションとして語り読むことができれば、
人は自分を押しつぶしにかかるものを変えることができるのです」
J・ウインターソン 「ガーディアン」インタビューより
読みながら海の匂いと静かな波の音にに囲まれていました。後半シルバーが一人で生きていくあたりからは、少々荒波になったように感じましたが、、、。こんな歌も聞こえてきました。
The Water is wide (1600年代から歌われているスコットランド民謡)
「海は広く 泳いでは渡れない。 空を飛べるような翼も持っていない
二人を運べる船を作ってくれないか それで漕いでいくよ 愛する人と私で」
The Water is wide、I can’t cross over
And neither have I wings to fly
Build me a boat that will carry two
And both shall row,my love and I