床の間チェスト

2011-04-21 18:59:51 | Weblog
 特に、住宅の中心になるリビングルームというものに「何か」大事なものが足りないという気がしてならないのだった。

 ある時、古道具屋で李朝のタンスを見つけて買い、部屋に置いて暮らすようになってから、その「何か」の正体が分かってきた。

 私はそのタンスを自分の部屋の一番いい壁の前に置くことにした。そうすると、自然に、その上部の壁に何かいい絵を架けたいという気分になってきた。タンスの上には季節の花や、ちょっとした小物なども飾ってみたくなった。その小さなコーナーが「床の間」のような役割をするようになってから、私の部屋に重心が生まれ、取りとめものなかった部屋にメリハリが出て来た。肉体ばかりでなく精神の安らぐ住みかという雰囲気が漂いだした。

 私が無意識に探していた「何か」の正体は実はカタカナの部屋名を並べるパズルには出てこなかった「床の間」というカードだったのである。

  普段着の住宅術  中村好文著より


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