<いわきスタメン>
<藤枝スタメン>
いきなり昇格組同士の戦いが組まれる、裏で仕組まれたかのような巡り合わせとなった開幕戦。
それ故に、「前年貫いたサッカーを上位カテゴリでも……」といった意気込みは見事に肩透かしを喰らう事となり。
いわきの本拠地・いわきグリーンフィールドは前年に改修工事を終えたものの、未だJ2ライセンスには足りない集客力。
新スタジアムの計画を立てた事で何とか認められてJ2昇格、この度開催となりました。
予想通りにロングボール中心の入りを敢行するいわき。
それに対し藤枝も怯む事無く応戦し、かつセカンドボールへの対応の素晴らしさを見せ付け。
仮に拾われてもゲーゲンプレスを果敢に行い、いわきにサッカーをさせず。
得意分野であるフィジカル中心の戦いも、多くの競り合い・チャージを経て逆にいわきの選手が痛むシーンが続発する等、その船出は思わぬ事態となりました。
そんな訳で、いわきの決定機は藤枝のビルドアップのミスが主要因となり。
前半6分にパスミスを拾った鏑木、そのままスルーパスを送り、受けた谷村がエリア内を突いてシュート。
しかしゴール右へと外れてしまい、電光石火の先制点はならず。
15分には自陣でのパスカットから素早く前へ運ぶ得意手による攻撃、縦パスを受けた有田がディフェンスに入った杉田をショルダーチャージで跳ね飛ばした末にスルーパス、という具合に徐々にらしさを発揮せんとします。
藤枝も立ち上がりは得意分野のビルドアップがままならなかったものの、11分に自陣左サイドからのフリーキックで、キッカーの鈴木が直に逆サイド裏へロングパス。
これをフリーになっていた小笠原がダイレクトで前へ送り、受けた久保により右奥を突いたのち、三角形(久保・横山・小笠原)を形成して長いパスワーク。
そして小笠原→横山フリックでエリア内を突き、走り込んだ久保がシュート。(GK高木和キャッチ)
持ち味を発揮してのフィニッシュと同時に、いわきの守備が幅を使う攻撃に弱いというのを見破った感があり。
その後も度々鈴木から対角線のロングパスが送られ、そのボールをフリーで受けるシーンが見られました。
そうした立ち回りでいわきのプレッシングの意識を削いだのちは、お馴染みの3バックの変形+GKによる最終ラインからのビルドアップを貫く藤枝。
2センターバック+GKに対していわきの2トップも思うようにプレッシャーを掛けられず、また開いた左右のCBに対してもサイドハーフがいくかどうか迷いを見せ。
そしてウイングバック+シャドー(ないしはオーバーラップしたCB)により、いわきはサイドバック1人のみになるという、サイドでの数的優位を簡単に作り上げる藤枝。
攻めの土台が出来上がり、後は蜂の巣のようにシュートを浴びせるだけでしたが、ビルドアップのミスはその後も散見され。
23分にはパスのズレを直接山下がスルーパスを送ってカウンターに持ち込むいわき、ドリブルで運んだ有田からのパスを受けた鏑木がエリア内で好機を迎えましたが、切り返すもシュートコースは見つからずに撃てず。
続く24分には再びGK上田の縦パスを宮本がカットし、パスを受けた有田がエリア内からシュートしましたがGK上田のセーブに阻まれます。
危ないシーンも何とか凌いだ藤枝、30分を過ぎてそろそろ先制点が欲しい時間に。
32分には右サイドでの前進から一旦GKまで戻し、いわきのプレッシングを誘ったのち上田が左へロングフィード、上がっていた杉田に渡り好機に。
そして中央を経由して渡邉からエリア内右へラストパス、受けた久保が斜め45度からシュートするも惜しくも左へと外れ。
崩しの意図が明白な長いパスにより、決壊寸前にまで追い込まれるいわきディフェンス。
そして35分、一旦攻撃が途切れるもすかさずゲーゲンプレス、(有田に対する)反則気味のチャージで杉田が奪い回収する藤枝。
再び最終ラインから作り直しとなり、川島が左サイドへグラウンダーで速く長いパスを送って崩し。
榎本のエリア内へのパスはズレ、クリアボールを狙った杉田のミドルシュートも当たり損ねますが、そのボールが右サイド奥へと転がり久保が拾って尚も継続。
そして久保がクロスを入れると、突いたニアサイドに渡邉が跳び込んでヘッドで合わせる、今度は正確無比な流れでゴールネットを揺らします。
手数を掛けた成果である先制点を挙げた藤枝。
反撃したいいわきですが、持ち味の縦に速い攻撃も、藤枝の集中を切らさない対応の前に不発となり。
そして藤枝の組織的な崩しを浴びるという具合に、どうしても攻撃が途切れた際の反動が大きくなるのがいわきの攻撃パターンの功罪でしょうか。
そして1点目から間髪入れずの37分、再びGK上田も加わっての最終ラインでの繋ぎから、杉田が最終ラインに降りる事でボランチ・宮本を引き出し。
そうしたうえでGK上田が先程と同様に左へフィードを送ると、榎本がフリーで受けてドリブルで持ち込み。
こうなると後は仕上げるだけで、榎本が左サイド奥からマイナスのカットイン、中央を伺うと見せかけてヒールパスで託したボールを横山がダイレクトでシュート。
意図的な崩しをゴラッソで締める、華麗な追加点となりました。
いわきも只では終わらず、再開後の39分に左サイドから遠藤縦パス→谷村スルーパスと素早く運び、走り込んだ有田がヒールでポストプレイ。
鏑木には通らずも、クリアボールを拾った石田が果敢にミドルシュートを放つと、ボールはゴールバーを直撃。
惜しいシーンを作ると、40分にはまたもGK上田のパスミスを拾ってのショートカウンター、今度はエリア内を突いたのは加藤。
しかし追いすがる川島を振り切れず、シュートはブロックに遭い決められずと、流れを変える1点目が奪えません。
すると終了間際の45分、再度GK上田のロングフィードから好機を作る藤枝。
右サイドを突いたこのフィードを久保がダイレクトでスルーパス、走り込んだ小笠原のマイナスのクロスを合わせたのは大曽根。
シュートはブロックされるもさらに繋ぎ、新井のミドルシュートが放たれるもこれもブロック。
しかしエリア内右へこぼれた所を久保が出足良く繋ぎ、最後は渡邉が押し込んでネットを揺らし。
波状攻撃を実らせ、リードを3点へと広げました。
そのまま前半は終了。
そしてハーフタイム、「3点取られても4点取れば良い」というスタジアムDJ氏の甲高いアナウンスと共に、3枚替えを敢行するいわきベンチ。
有田・加藤・鏑木→近藤・江川・永井へと交代。
江川が左SBへと入った事で、石田が右SBへ・嵯峨が右SHへシフトと、コンバートも交えて巻き直しを図りました。
決定機は何度も作っていた前半だけに、まずは1点を取って雰囲気を変えたい状況のいわき。
江川が左SBに入った事で、彼による飛距離のあるスローインも交えながら押し込む、パワーサッカーらしい振る舞いでペースを取り戻します。
そうして獲った後半3分の左コーナーキック、キッカー山下のクロスをニアサイドで江川がヘディングシュート、さらに中央で永井がコースを変えたものの惜しくもゴール上へと外れ。
「また決定機逸か……」といういわきサポーターの嘆きも聞こえてきそうな展開でしたが、続く4分でした。
左サイドで拾った永井がスルーパス、走り込んだ近藤がさらにスルーパスと素早くエリア内へ運び、走り込んだ谷村がグラウンダーでクロス。
そしてニアサイドで嵯峨が合わせると、フリックのようなシュートながらもGKの右を抜いてゴールへと転がり、とうとうこじ開けたいわき。
待望の1点目が齎されました。
まだ判らないという雰囲気を生み出したものの、その後も藤枝の攻撃は衰える事は無く。
8分には久保がカットインでエリア内右からシュート(遠藤がブロック)、10分にはCKからの二次攻撃で、エリア内左から新井がシュート(ブロック→GK高木和キャッチ)とあくまで4点目を狙いにいきます。
SBの対応に難儀していたいわき、その一角を江川に代えたものの、本職はCBよろしくシャドーをチェックして大外が空くシーンを作る(11分)など藤枝の跳梁を中々止められず。
ゴール前で必死の凌ぎを強いられるのは明白で、12分の藤枝の攻撃は鈴木ロングパス→渡邉落としにより中央からで、横山のエリア内右へのスルーパスに久保が走り込む絶好機。
そして速く低いクロスを選択した久保、大曽根が跳び込むも僅かに合わず、悔しがる大曽根を尻目に尚も渡邉折り返し→小笠原収めてシュート(ブロック)と何度もエリア内を右往左往する攻撃を浴びます。
しかしそれを凌いだいわき、15分には嵯峨のラフなロングパスで一気に運ぶと、左サイドでの空中戦を制して永井が左ポケット奥からクロス。
この低いボールを谷村が合わせ、GK上田が弾いたものの勢いが勝り、ゴールへと吸い込まれます。
これで1点差に迫ったいわき、2点のシュートはいずれも泥臭い軌道という執念じみたものとなりました。
次のゴールが嫌でも待ち遠しい展開となり、決定機を得たのはいわきで19分。
山下のラフなロングパスを近藤がフリック、これでエリア内を突くといういかにもいわきらしい攻撃で、走り込んだ谷村が横パス。
そして嵯峨が中央からシュートを放つもGK上田のセーブに阻まれ、尚もこぼれたボールを再度嵯峨がシュート、しかしこれも上田が足でセーブ。
惜しくも同点ならずも、観衆の期待を一層高めるシーンとなります。
劣勢感が滲み出てきた藤枝は、上記の危機の直前(19分)に最初の交代。(大曽根→水野、杉田がシャドーへシフト)
21分にも動き、小笠原→山田へと交代。
その直後にエアバトルで杉田が江川と交錯し、頭部にチャージを受ける事態に。
脳震盪が危ぶまれつつも、ピッチ外に出たのち復帰します。
そして24分にいわきのような素早い攻撃で決定機、自陣でカットした新井からスルーパス、受けた渡邉が持ち運んでエリア内左からシュート。
しかし家泉のブロックを掠めたボールは左ポストを直撃と、こちらもモノに出来ず。
決定機の交錯に白熱の様相となって来ましたが、25分に藤枝は先程痛んだ杉田が再び倒れ込み、今度は脳へのダメージを隠せずという様相に。
たまらず交代策を採り、岩渕が投入されます。(脳震盪による交代)
いわきベンチは31分に動き、石田→宮崎へと交代。
これにより再び嵯峨が右SBへと移ります。
右SHに入った宮崎、藤枝の左サイドアタックをワイドで対峙する役割が印象的でした。
この辺りは流石J1・J2のクラブに所属していた選手といった感じで、散々引っ掻き回されてきたいわきの守備ブロックも安定感が齎されます。
しかし逆の左サイドでは、相変わらず江川が誰に付くのか曖昧な部分が目立ち。(39分には水野に釣り出されてワイドが空いて前進を許す)
宮崎投入以降、フィニッシュシーンは皆無となった藤枝。
その隙に同点にせんと攻め上がるいわき、江川のロングスローの機会も膨らんで着実にダメージを与えていき。
37分には浮き球を収めた近藤がドリブルで運んでスルーパス、最終ラインの背後で受けた谷村がエリア内中央からシュートとまたも決定機を迎えましたが、GK上田がまたも足でセーブ。
最小リードを守る展開を余儀なくされ迎えた終盤、41分に最後の交代を敢行した藤枝。
横山→金浦へ代えると共に、新井・水野・金浦の3ボランチといった布陣を採ります。
攻撃を切り続けるも、反撃は久保を上げての右サイドへのロングパスぐらいしかやる事が無くなり、防戦一方となったアディショナルタイム。
それでも時間が押し迫った事で、いわきも単調な放り込みの色が強くなり。
跳ね返し役を務めた山田がGK上田との交錯で痛む場面もありましたが、6分間のATを何とかやり過ごした藤枝。
試合終了の時を迎え、見事にJ2初戦を白星で飾りました。