2年連続で初っ端からJ3からの昇格組を相手にする事となった福岡、その心境はいかなる程だったか。
ただし今季の場合は福岡ダービーで、遠慮は要らない戦いだったのが最終的に功を奏したでしょうか。
2016年以来のJ2に返り咲きを果たした北九州。
Jリーグ参入直後の2010年こそ最下位(この時期は降格無し)でしたが、以降は5年間で一桁順位4度と安定。
特に2014年は、J1ライセンスが無いながらもプレーオフ圏内に入るという奮闘を見せ(当然ながらプレーオフには参加できず)、J1昇格が現実味を帯びる成績となった事で地元のムードも上昇。
かくして2016年、翌年ミクニワールドスタジアム北九州の完成を控え、J1ライセンスを取得。
しかし皮肉な事にクラブの成績は急転直下、最下位に沈んでJ3降格となってしまうと、以降浮上の兆しは見えず。
2018年にはJ3でも最下位で終えてしまうなど、万策尽きたといった感じで、正直これ程早く戻って来るとは思いもしませんでした。
前年のJ3優勝・J2復帰の一因となったのは、まごう事無き小林伸二監督。
「昇格請負人」の二つ名は伊達では無く、最下位のチームを1年で優勝するまでに引き上げ、居るべき場所へ戻す事に成功しました。
失点数が試合数より少ないというデータから、堅守のチームだと想像。
しかし自分はJ3での試合は観ていないので、どんなサッカーをするかどうかはこの日確かめる必要がある、そんな事を思いながらの視聴でした。
基本フォーメーションは4-4-2ですが、攻撃時は大きく可変。
両サイドバック(右・野口、左・新井)がかなり前に位置取り、2センターバックにボランチ1人が降りて来る3枚の最終ラインでビルドアップ。
SBが中央寄りのサイドハーフよりも前に行く事数多で、このサイドからの圧力を軸にしつつ、目立ったのがロングパス攻勢。
ボランチの1人・加藤がその供給源で、いきなりエリア内に送ると、SHをそこに走らせてあわやという場面を作るなど中々趣深い攻撃を見せていました。
一方で寺岡の長期離脱で守備陣が不安らしく、若年の生駒をCBに起用するなど苦しさが垣間見える布陣。
その生駒がフアンマとマッチアップをせざるを得ない、大型選手の不足も今後戦ううえで気になる要素でしょう。
2年連続で昇格組に膝を屈する訳にいかない福岡(前年開幕戦は琉球に1-3で敗戦)は、序盤から何度もゴール前に迫ります。
北九州と同じ4-4-2が基調ながら、シンプルに攻撃を展開。
フアンマというターゲットを活かしつつ、中盤を押し上げてからサイド攻撃を展開。
特にスローインから好機に結び付ける場面が多く、枚数を掛けての攻撃に、北九州の守備もタッチに逃げざるを得ないシーンが目立った分スローイン数も増大していたのでしょう。
前半13分、スローインを受けた遠野が左サイドを上がってクロス、これが跳ね返されるも中央やや右寄りでエミル・サロモンソンが拾います。
サロモンソンはすかさずエリア内へグラウンダーのボールを入れると、前の凝りしていたフアンマへ渡り、すかさずゴールに蹴り入れるフアンマ。
綺麗な形で先制、と思いきやオフサイドでノーゴール。
直後の15分に北九州も反撃。
自陣で加藤縦パス→町野ポストプレイ→加藤左へパスという流れで受けた新垣がドリブルで疾走。
エリア手前からファーサイドへクロスを上げると、高橋大悟が走り込んでシュートし、ネットを揺らしたもののサイドネット。
ダービーマッチらしい一進一退の攻防で、それを象徴していたのが26分のシーン。
北九州の攻撃、左サイドから新垣パス→町野スルー→佐藤亮→町野と流れると、町野はサイドチェンジを選択。
右で受けた高橋大はカットインを仕掛けたのち、豪快にミドルシュートを放ちますが、惜しくもポストを直撃。
逆にその後福岡がカウンターを仕掛け、クリアボールが遠野→フアンマ→遠野と渡り、遠野はドリブルで前進。
エリア手前でパスを出し、受けた福満がエリア内右からシュートするも、GK永井がセーブしたのちDFがクリア。
目まぐるしいチャンスの連続となりました。
福岡で目立っていたのが右SBのサロモンソンで、突破からのクロスはもちろんの事、エリア内ではヘッダーとしても顔を出し、セットプレーではキッカーを務める等八面六臂の活躍。
流石にJ1レベルの選手である事を証明していましたが、逆の左サイドでもSBに湯澤・SHに石津が控えており、バランス良く攻撃。
しかしこの日の攻撃面での主役となったのが遠野でした。
2トップの片割れで、フアンマとの相性を考慮されてのJリーグ初出場・初スタメン。
ポストプレイで体を張るフアンマが北九州・生駒に徹底チェックされる傍ら、必然的にシュートチャンスが増えていきました。
8分・33分・40分と積極果敢にシュートを放っていき、溌溂としたプレーでチームに刺激を与えていく遠野。
そして実に結び付いたのが前半終了間際(44分)。
篠原のロングパスが右サイド奥に入り、福満が拾ってアタッキングサードで攻撃開始。
ここから福満とサロモンソンがエリア近辺でパス交換ののち、フアンマが落として重廣がシュートの体制に。
このシュートは当たり損ねますが、そのボールが遠野の下へ転がり、迷わずシュートを放った遠野。
JFL・HondaFCのストライカーだった男の、Jリーグで名を挙げるゴールが生まれ、福岡が最高の時間帯で先制に成功しました。
リードを奪われた北九州、攻めなければならない立場となり後半へ。
前半と変わらぬ形で攻撃を模索するも、福岡の守備の固さで中々好機を作れず。
逆にカウンター気味に、下部リーグからの新加入選手のゴールに触発されたか、後半も福岡がシュートを重ねる展開となります。
後半7分、クリアボールをフアンマが収めた後、福満が左サイドへロングパス。
これを受けた石津がドリブル、エリア付近でのカットインからシュートするもGK永井がセーブ。
10分にも遠野のドリブルから、エリア内でシュートを放った石津。(DFがブロック)
前年故障で大半を棒に振った男の今季への意気込みを見せ付けます。(この日はフル出場と、後遺症は問題無さそう)
11分、今度は福満が、右サイドからカットインを仕掛けてのシュート。
これもGK永井がセーブし、危険なシーンが続きながらも何とか凌ぐ北九州。
その後もゲームを支配される状況は続き、結局後半の初シュートは34分という遅さ。(新垣のボレーシュート・DFのブロックでCKに)
しかしこれでようやくエンジンがかかったか、直後のCKで再び新垣がシュートするも、これもDFのブロックに阻まれます。
36分には、ストライカーの町野がようやくこの日初のシュート。
それでも野口のクロスに合わせたボレーシュートは浮いてしまい、ゴールの匂いはしないものでしたが。
この直後に福岡GKセランテスが足を攣るアクシデント、しかも既に福岡は交代枠を使い切っており交代できず、反撃の機運を高めにかかりたい北九州。
しかしこれで3分程中断したのが良くなかったか、直後は再び福岡の決定機。
石津の縦パスでカウンター、フアンマ→鈴木(重廣と交代で出場)スルーパス→城後(遠野と交代で出場)がエリア内でシュートチャンスに。
しかしここもGK永井が防ぎ、難を逃れます。
北九州も42分、交代で入った池元が國分の縦パスをワントラップしてシュートするも、惜しくもゴール右に外れるというシーンを演出。
最後まで抗戦の姿勢は崩れなかったものの、福岡の牙城は崩す事は出来ず、0-1のまま試合終了。
今季最初の福岡ダービーは、福岡が先輩(?)の貫禄を見せるという結果になりました。
その福岡、遠野は後半もシュートを重ね、その総数は8本となりました。
前年天皇杯で勇姿を観た者としてはこの日の活躍は感慨深いですが、現状は、Honda→J1・川崎へ移籍→即レンタルという複雑な身分。
このまま活躍のレールに乗れば、レンタルバックを経てのJ1デビューも夢ではありませんが、果たして順風満帆といくでしょうか。