ぼくらのありのまま記

ぼくらは
こんな大人になりました。

矢田さんと。「ちまきはちまきやのちまき」東洛堂ちまきや

2014-05-04 11:22:33 | ぼくらのありのまま記
第4話ばぁばのちまき

さぁ、やりますか。
そんなばぁばの声が聞こえて
きそうです。じぃじが亡くなり
奥様がちまきを作りはじめました。


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矢田
それで父が亡くなり。
ばぁば一人になったんだけれども。


たら
はい。

矢田
4月頃になると「やっぱり作りたいわ」と
言い出して。出来る範囲の中で
ばぁばが作りはじめたの。




たら
ばぁばいつから始めたんですか?

矢田
亡くなった年。9月に亡くなって
翌年の5月には配っていました。


たら
すごいパワーですね。

矢田
材料が揃っていたっていうのも
ありますよね。葛は日保ちしますから。
今までは大きなせいろで蒸していたのを、
家の台所で出来る規模にして。
作ってはご愛好頂いた方にお送りして。
というのを母がずっとやっていましした。


たら
作りたい人にだけ作って。

矢田
そう、本当に喜んで頂ける
「毎年、この季節が来たんだな」と
思い出して頂ける方に
差し上げていたのね。頼まれて作っていた
訳ではないので、お金も頂かないし。


たら
趣味でもないし
稼ぐための仕事でもないし。

矢田
なんでしょうかね。
材料も底をついてきたら、
ゆきおさんがお砂糖屋さんでしょ。


たら
はい。

矢田
そういうので、材料も手に入る。



(毎年お礼の手紙が届きます。)

たら
葛と砂糖、笹、
いがら、あと小豆でしたっけ。

矢田
小豆はもともと出入りしていた
「大井製餡」に作ってもらってました。
ばぁばは羊羹ちまきと水仙ちまきと
両方やっていたんだけれども、
ばぁばが亡くなってからは葛だけの
水仙ちまきだけ作ってます。


たら
あ、ちまきって二種類あるんですね。

矢田
そう。元は三種類。


里美
そうなの?
里美は二種類しか知らなかった。


矢田
三つ目はういろうちまきと
いうのだけれど。上新粉を練って、
黒蜜で味付けしたもっちりしたもの。
それを型どって。ちっちゃい時は
それから練習していたんだわ。
形になってるのを包むのから練習して。
葛はどろっどろだから難しいけれど、
ういろうは形があるからやりやすい。


たら
それを丸めるのですか?


(お砂糖と)

矢田
そう丸めるの。
一本ずつ丸めて包んでいくのね。
ういろう、羊羹、水仙と3種類あったの。
ういろうちまきは母は作らなくて。実は
ういろうは決して難しくないんですよ。
シンプルなの、すごく。
火の入れ具合、感覚がわかれば作れる。


たら
へー。

矢田
葛の場合は写真じゃ伝わらないんだけれど
どろっどろなんだよね。スライムみたいに
柔らかいんだけど、それを笹の葉に
取っていくんですね。だいたい感覚で。


里美
でも全部同じグラムになるの。

たら
ばぁばは、お店手伝っていたから
すぐに作れたんですか。

矢田
実際は作っていななかったんですけどね、
お父さんいるときは。
「こんなやり方したら
お父さんに怒られるわ」なんて言いながら
亡くなってからは毎年、作ってましたよ。


ゆきとさん
見ているだけだったよ。力仕事だしね。

里美
あ、そう。


たら
ばぁばは職人さんでは
なかったんですね。


(吉野葛とお水。
材料は至ってシンプル)

矢田
ちがうちがう。
レシピは残っていたからね。
単位は匁で書かれています。


たら
今、吉野葛は手に入りにくいんですか?

矢田
まだ大丈夫ね。高いけれど、使っているる
ところはあるから。森野さんていう奈良の
お店。万葉の時代から、薬として葛を
扱っているお店なんですけど。昔はね、
木の箱に入って届いていたんだけど、
今は段ボールに変って。そうやって
変っていくんですね。

ゆきおさん
笹なんかもね、今は真空で届くでしょ。

矢田
妙に緑でね。籠はいわいの籠屋って
麻布十番にあったんですよ。今でも
ありますけど。ひとつひとつ笹はどこの、
葛はなに屋のって。笹の葉も新潟に
スキーに行く時、笹屋さんに顔を
だしたりね。刈り取って、乾かして、
束ねて送ってくださるんですけど、

たら
はい。

矢田
いい加減なものは大きさもばらばら
だったり、よくないものも混じっちゃって
いるんですけど。いい職人さんのは選んで
上質な笹だけを、大きさも分けて送って
くれる。そういうのがありましたね。


たら
それは他の仕事も一緒ですよね。

矢田
八百屋さんでも一緒ですよね。
いがらも芯を抜いてない太いもので
巻いてあるちまきもありあすけど、それは
嵩張っちゃってだめなのよ。芯は灯心と
呼ぶのですが、昔、明かりは
お皿に油をいれて、その灯心を入れて
火を灯していたんですね。




たら
ろうそくの芯みたいな。
昔は芯も使っていたから、
いがらも全部芯がなかったんですね。

矢田
そう。いがらも乾いた状態のものが
届くんですけど、使う前に水に浸して、
上下は切り落として長さをそろえて。
職人さんの時代でしたね。


たら
ばぁばは他のお菓子も
作っていたんですか?

矢田
できない。職人じゃないからね。
水羊羹くらいは作っていたけどね。


たら
ちまきはとりあえず
覚えておかないとなっていうのが
どこかにあったんですかね。

里美
そうかもしれないねー

矢田
やりやすいっていうもあります。
練り切りならあんこも数種類
用意しなきゃいけないし、
大きさも型取りも難しいですから。

旦那さん
前は筧の水は作ってたよ。

矢田
ちまきと材料同じですから、
あれはできるわよ。

たら
ばぁばは里美がいくつの時に
亡くなったんだっけ?

里美
24歳のときかな。
今年の8月で7年経つよ。

たら
俺がばぁばのちまき食べたのが
高校生の時だよね。

里美
そうそう。
麻布の家に遊びに来たときだよね。


たら
そう、その時ばぁばもいて。

矢田
たらちゃん遊びに来てたんだ。

里美
麻布のお家の時に。

矢田
ふーん。


たら
その時
ちまきっていう食べ物も知らなくて。

矢田
ちまきっていったら新潟の餅米とか、
草餅みたいなものを想像しますよね。




今日はここまで。
読んで頂きありがとうございます。
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