ぼくらのありのまま記

ぼくらは
こんな大人になりました。

矢田さんと。「ちまきはちまきやのちまき」東洛堂ちまきや

2014-05-03 09:08:59 | ぼくらのありのまま記
第3話 ちまきやの和菓子

ちまき以外にはどんな和菓子が
あったのでしょうか。
黒飴美味しそうだなぁ。

目次はこちら

矢田
年末は梅のお菓子や、白いおまんじゅうの
真ん中にちょんと紅をのせたものとか。
干菓子で、松、鶴、亀、松ぼっくりの
お菓子、ニッキの粉で茶色くして。
皮は瓦みたいな。素焼きのお皿に
鶴、亀、松竹梅をを並べて。


たら
おせちみたいな和菓子があるんですね。

矢田
それに使っていた材料があるはず。
あ、あるある。


たら
日付けが書いてある!昭和56年。

里美
33年前だ。




矢田
松露のちらしって書いてあるんですけど。
それが今、売ってるのは、大きすぎて
野暮ったいんだけど、いい大きさなのよ。
これくらい。手で丸めて乾かすの。
それが茶色いでしょ。茶色いから、
その脇に散らして色を添える。


たら
これは松の枝かー。

矢田
そうそう。

里美
これじぃじがつくったんだ。




矢田
そう里美が生まれた歳になくなったの。
56年はその1年前。


里美
なにこれ。ばぁばが冷凍保存してたんだ。


たら
すごいな。これが
お正月の和菓子に使っていた材料なんだ。


矢田
そう、お年賀に見えた方に差し上げたり、
歌舞伎界の方がお年賀に使ってくれてたり。
三月になったら、桃のお菓子を作ったり。
あと、飴もあったんですよ。黒飴とか。
ぐつぐつぐつぐつ黒砂糖を鍋で煮て周りを
水で冷やしながら、固めていくでしょ。




たら
はい

矢田
まだ熱いうちにござの上に粉をまいて、
どんっと落として、伸ばしていくの。
伸びたら植木鋏みたいな鋏で切るの。
そうしたら他の職人が転がして、
固くならないうちにまた延ばしていく。
ころころやって。それでまた
いい長さになったら、小さい鉈で
トントントントンって切っていくのね。


ゆきおさん
ガラスの棒みたいな飴を
切っていくんだよ。


矢田
添加物も使ってないから、
他の飴屋さんの女将さんも
買いにきてくれてましたね。


たら
へー。

矢田
白いはっか飴もつくっていたんですけど。
お相撲さんのご贔屓さんには
はっか飴しか入れないの。
黒星ついてはいけないっていうので。


たら
へー。粋ですね。



矢田
いちど、帝国ホテルのフェアで
三越さんがどうしてもちまきを
作ってくれってお願いがあって
納めたことはあるんですけど、
そういうのはものすごく
抵抗してましたね。大嫌いでした。
そういうのは。


たら
へー。

矢田
売れるか売れないかわからないものは
出したくないし、自分の出来る範囲でやる
という考えがあったのよね。


ゆきおさん
質屋と間違えて入ってくる人もいたよ。


矢田
それはよくあった。
紺の暖簾を出していただけだから、
何屋さんかわからなくて
入ってくる人はよくいましたね。
「ここは何屋ですか」
「和菓子屋です」というのは
よくありました。テレビとかも嫌いで。


たら
それだけ、有名だったら
取材は沢山きそうですよね。

矢田
ご贔屓の方が一度
日経新聞に書いてくれたことがあって。
「できたてが美味しいけど、1日経ち葛が
しまったところがまた美味しい」と
書いてくれて「こういうことを
書いてくれるのはありがたい」って言って
いましたけれど。それくらいですかね。
侍従長だった方ね。前の天皇陛下の時の。


たら
すごい!

ゆきおさん
天皇陛下のところへ
お持ちしますって方も結構来られてたよ。



里美
すごいね、他にも和菓子屋さん
あるのにね、赤坂のまわりに。


たら
里美が産まれたときはお店はあったの?


里美
お店自体はずっとあったね。
工場もそのまま。ばぁばがそこに
住んでいたから引っ越すまではあったよ。
機能しているときは知らないけどね。


矢田
だけど、店っていっても何も置いてないの。


ゆきおさん
へへへ。何もないんだよね。

矢田
暖簾をくぐって扉を開くと
ブザーがあるの。坂の上と下なのよね。
ブザーがなると、どなたかが見えたって、
下から階段を上がって暖簾をあげて、
「いらっしゃいませ」とお迎えして。


ゆきおさん
みなさん、
予約の連絡してからいらしゃってたよ。

矢田
なんで店には並べないのか。というと、
ここはお受け渡しをする場所だから
菓子は並べないっていうのが父の考えで。


ゆきおさん
一応カウンターがあるんだけどね


矢田
なにも飾ってない。電話で
「今日はなにがおありになるのかしら」と
聞かれれば、「何と何とございます」と
お答えして。例えば先方が秋に
「柿(の和菓子)はないんですか?」
「まだ色付いておりません」とお断りして
見たらお隣の家の柿の木がまだ青いのよ。




たら
へー。季節のものを
陳列もしないで「奥へどうぞ」と。
かっこいいですね。

矢田
電話はしないで来て、あるお菓子を見て
「これとこれをください」って買って帰る
方もいましたし、お茶会があれば
受けたりもしていましたね。



今日はここまで。
読んで頂きありがとうございます。
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