迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

〆も台風!

2018-09-30 19:04:00 | 浮世見聞記
今年度も神奈川県立青少年センターへ、「かながわこども民俗芸能フェスティバル」を観に行く。


今回参加した四団体のうち、箱根町の「箱根延年の舞」と横浜市鶴見区の「鶴見の田祭り」は、一度絶へたものを近年に復活させたもの。


「箱根延年の舞」は指導者に猿楽師が関わってゐるためか、囃子も舞もかなり猿楽寄りで、途絶へる以前はもっとさうではない雰囲気だったはずだ。


「鶴見の田祭り」は二年前に現地の鶴見神社で見物しており、今回は七十分ほどかかる内容を三十分に凝縮して見せる。

それでも、のどかな農村地帯であった時代を彷彿とさせる──ベアトが撮影した生麦事件現場の古写真から、辛うじてその頃の景色が窺へる──、のんびりとした独得の味は失はれていない。

田起こしから刈り取り、そして直来──今回は省略──までを藝能的に再現してその年の豊作を祈願した“神事”は、現在のやうにその日その時の天候が即座にわかる時代とは事情が違ったことを考へると、当時の人々がこの藝能に籠めたであらう真摯な“祈り”を、鮮明に感じ取ることが出来る。


最後の「横須賀の虎踊り」も二年前の夏に現地の横須賀市中村で見物しており、浦賀の虎踊りとはまた違った味はひを、今回も楽しむ。

虎の脚やお囃子ともども、男子より女子が多いあたり、ああ現代だなと思ふ。






七月下旬、台風の接近するなか舞った「猩々」で本格的に始まった私の平成最後の夏は、

八月から九月にかけては観る側に徹して英気を養ひ、

下旬に「あぶない刑事」以来の憧れの街ヨコハマで「駿河天人」を舞ひ、

けふ九月最後の一日はまたしても台風の接近するなか、傳統藝能を観る側に回り、自分らしく夏を締め括る。

台風に始まり台風に終わるといふ、喜ばしゐ天候ではなかったが、手猿楽師としては得るものが多かった、楽しい夏となりにけり。
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