いただき物の高級チョコレートケーキを、一口分けてもらふ。
……おや、甘さを感じない。
味覚障害?
もしや……!
瞬時に、先日忘ディスカウントストアで見かけた、マスクはすれど派手なクシャミを連發してゐた貧乏臭い風体のオッサンと、脇でその様を笑ってゐた妻らしき所帯じみた“裸顔”のオバサンを思ひ出す。
あの野郎ぉ……!!
はい?
……ああ。
このケーキ、甘さ控えめなのか。
びっくりしたわえ。
なんであれ、
こちらがどんなに疫病予防を心掛けていやうと、
あの時に見たやうなのがつねに巷を徘徊してゐる以上、
浮世にはよくよく用心だ。